人生に彩りを加える「トラベルリハビリテーション」の可能性|理学療法士・鈴木洋平さん

みなさんこんにちは、リハノワのかわむーです!

今回は、シニアや身体に障害を抱える方のための旅行サービス「トラベルwithじぇぷと」を運営する理学療法士の鈴木洋平さんを取材しました。

本記事では、鈴木さんが旅行サービスを始めたきっかけや実際の旅行支援の様子について紹介します。

(※じぇぷとの事業概要や実際の利用者さんの声は、記事下部にリンクを掲載しています)

理学療法士・鈴木洋平さん

◆ 鈴木 洋平(すずき・ようへい)さん
1985年愛知県西尾市出身。2009年に新潟医療福祉大学卒業後、西尾市の医療法人に就職。病院で働く傍ら、週末は野球部でトレーナー活動を行う。2015年に合同会社P-BEANSに参画し、リハビリデイサービスP-BASE清水店の管理者に就任。店舗の運営を行いながら旅行支援事業を構築し、2017年より「トラベルwithじぇぷと」のサービスを開始した。現在は、国内旅行業務取扱管理者、国内旅行旅程管理者としてシニアや障害を抱えた方へ向けた旅行サービスを提案している。旅行の同行実績は300件を超える。


かわむー
かわむー

鈴木さんが理学療法士の道を目指したきっかけを教えてください。


鈴木さん
鈴木さん

私はもともと野球一筋だったこともあり、スポーツトレーナーの仕事に興味を持っていました。理学療法士は、たまたま立ち寄った本屋さんで知りました。

スポーツにも関われる国家資格というところに魅力を感じ、理学療法士の大学に進学することを決意します。大学時代は、勉強に励む傍ら野球部のキャプテン兼監督として部活動に力を注ぎ、全国大会出場を果たしました。

学業では、Jリーグで理学療法士として活躍している先生のゼミに入り、ご本人・ご家族や医療チームメンバーが共同して治療を考えて展開していく「クリニカルリーズニング」について学びを深めました。その頃から、心理学やQOL(生活の質)についても興味を持つようになります。

大学卒業後は、地元の愛知県西尾市にある医療法人会に就職し、通所リハビリ、訪問リハビリ、離島(佐久島)でのリハビリなど、主に生活期の現場で働きました。また、週末には高校の野球部のトレーナーとして活動しながら、コンディショニングトレーナーの資格も取得します。


旅行の持つチカラ

かわむー
かわむー

現在は、合同会社P-BEANSが運営する旅行サービス「トラベルwithじぇぷと」で精力的に活動されている鈴木さんですが、シニアや障害者の旅行支援に興味を持たれたきっかけは何だったのでしょうか。


鈴木さん
鈴木さん

病院を退院したあとの生活期リハビリテーションの現場では、「目標がないとがんばれない」という現状があります。そのため、私はいつも「利用者さんに目標となることを提供して、その過程をサポートしたい」と考えていました。

通所リハビリで働いていた2010年、ある利用者さんの「こんな身体だけど旅行できんかね?」という言葉から、現在、合同会社P-BEANSの代表を務める坂元さん(当時は別の医療法人でその方のリハビリを担当)と一緒に、休日を使って愛知県内の日帰り温泉に出かけました。

脳卒中による左片麻痺のため、歩くことなど身辺動作にサポートが必要な状態でしたが、2人で試行錯誤しながらサポートしたことで大成功に終わりました。

当日まで、ご本人が旅行に向けたリハビリに意欲的に取り組まれたこともあり、温泉施設ではとてもスムーズに歩くことができました。また、旅行できたことが本人の自信にも繋がったようで、旅行後はさらに前向きになりました。

そのような準備・プランニングから同行までの一連の旅行を経験したことで、さまざまな課題が見え、サポートが必要な方に対する専門の旅行会社の必要性を強く感じました。

その方がいなかったら、今の自分やじぇぷとのサービスはなかったので、本当に感謝しています。



かわむー
かわむー

おふたりの「なんとか願いを叶えたい!」という熱意と行動力、そして成功させる実現力に脱帽です。

旅行支援を事業として開始するまでには、どのような思いや過程があったのでしょうか。


鈴木さん
鈴木さん

旅行支援は、医療介護従事者のほぼボランティアで実行されることがほとんどです。そのため、継続性のある仕組みを作る必要がありました。

そこで、坂元さんが立ち上げた会社のいち事業として展開することを見据えて、2015年にP-BASEに入職。リハビリデイサービスP-BASE清水店の管理者として働く傍ら、旅行事業の構築に力を入れました。

そして、2017年に「トラベルwithじぇぷと」の事業がスタート。まずは月に1件の頻度から旅行支援を開始しました。事業は順調に拡大し、2019年には年間47件にまでなります。

COVID-19の影響で自粛した時期もありますが、「旅行したい」という希望がなくなることはなく、しっかりと感染対策を行ったうえでこれまで多くの旅行をサポートしてきました。


旅行サービスを利用してこれまで40回以上旅行してきたデイサービスP-BASE寿店の利用者・谷口さん(実際の声はこちら
じぇぷとで「旅行する」ことを目標に日々のリハビリに励まれているデイサービスP-BASE高橋店の利用者・金田さん(実際の声はこちら

じぇぷとの取り組み

かわむー
かわむー

お話を伺いながら、旅行とリハビリの相性の良さを改めて実感しました。

トラベルwithじぇぷとのサービス内容について、詳しく教えてもらっても良いでしょうか。


鈴木さん
鈴木さん

じぇぷとでは、P-BEANSが運営するリハビリデイサービスや訪問看護ステーションの利用者さんはもちろん、他のデイサービスの利用者さんなどを対象にサービスを提供しています。

プライベート旅行から5〜6名のグループ旅行、40名程度の団体旅行まで、幅広く対応しています。

「旅行したい」という声があったら、まずはその方の身体機能などアセスメントを実施し、旅行の企画をすすめていきます。

移動手段や宿の手配、当日は食事や入浴など手が必要なポイントでの介護全般、ガイドなどをさせてもらっています。


実際の旅行支援の様子(写真=ご本人より提供)


かわむー
かわむー

かなり手厚いサポートなので、ご利用される方は安心して旅行ができますね。サービスを提供するなかで、特に力を入れていることがあれば教えてください。


鈴木さん
鈴木さん

利用者さんが安心して旅行できることを大切にしているため、付き添いスタッフは介護福祉士、理学療法士、作業療法士、看護師、医師などの医療介護専門職で構成しています。

また、旅行の前には無料の出張相談を行い、旅先での不安や挑戦したいことなどを聴取し、希望に沿ったプランを作成しています。

スタッフの育成にも力を入れており、独自の資格制度を設け、オンラインや実際の旅行に同行し、研修を行っています。

これまで、愛知、岐阜、静岡、長野、福井、山梨、和歌山、北海道、熊本、島根など、さまざまな地域への旅行を支援してきました。日帰りが約7割で、宿泊込みの旅行が約3割です。じぇぷとの旅行支援の実績としては、500件を超えています。

全国旅行業協会に加盟してからは、さらに提携先が増えました。旅館や旅先の人に協力いただきながら、チーム一丸となって旅行を支援しています。

上高地への旅行(写真=ご本人より提供)
京都伏見稲荷への旅行(写真=ご本人より提供)

サービス利用者の声

かわむー
かわむー

実際にじぇぷとの旅行サービスを利用した方からは、どのような声が聞かれているのでしょうか。


鈴木さん
鈴木さん

最近だと、「あーあ、寿命がのびちゃった〜」「夫と行った思い出の新婚旅行の場所にもう一度行けて幸せです」「無理だと思っていたけど、リハビリを頑張ってよかったわ〜」などといった声が聞かれました。

また、「これができたから今度はここに行きたいな」「もうちょっとリハビリ頑張って、次はここに行ってみたい」といった前向きな声も聞かれています。

私としては、こういった利用者さんの喜びの声や笑顔がやりがいになっています。とても嬉しいですよね。


かわむー
かわむー

宿泊施設など旅先の環境(バリアフリー状況など)を把握するのはかなり大変かと思いますが、旅行に向けて新たな目標を設定し、そこ向けたリハビリを実施しているのが本当に素晴らしいなと思いました。


鈴木さん
鈴木さん

一度旅行すると、「また行きたい!」「次はここに行きたい!」となる方が多く、リピーター率は90%を超えています。

また、「私も行けるであんたも行ってみんかい?」「不安に思わんで一緒にいってみよまい」と、利用者さん同士が声をかけあっている様子も多くみられます。

スタッフがお声がけするより説得力があり、仲間の声がきっかけで申し込んでくださる方がほとんどです。

旅先では、最高の思い出として残せるようにたくさんの写真も撮らせてもらっています。後日、フォトブックにしてお渡しすると、みなさんとても喜んでくださいます。


上高地への旅行(写真=ご本人より提供)
三重県津市への旅行(写真=ご本人より提供)

新たな可能性への挑戦

かわむー
かわむー

最後に、鈴木さんが今後挑戦したいことがあれば教えてください。


鈴木さん
鈴木さん

今後は、旅行を手段としたリハビリテーションの可能性を広げるために、旅行サービスの質の向上と人材育成に力を入れていきたいです。

実は、今年(2023年)の4月に西尾市で旅行専門福祉タクシー事業を立ち上げました。これまで旅行の際の移動は介護タクシーを外注することが多かったのですが、自営にしたんです。

旅行する利用者さんはもちろん、育成するスタッフもたくさん連れていけるように10人乗りの車両にしました。また、車両は理学療法士の視点から考える、疲れにくく乗りやすい、ポジショニングなどを考慮したものとなっています。


鈴木さんが開業した旅行専門福祉タクシー「トラベル on TAXI」
こだわりの車内


鈴木さん
鈴木さん

旅行をすると、「思ったより〇〇することが難しかった」など、本人にとって新たな課題が見つかることもあります。そうした課題が日々のリハビリの新たな目標となり、次の旅行を目指してモチベーションを維持しながらリハビリに取り組むことができます。

旅行をきっかけに、その人がより良い人生を送れるようなサポートをこれからも続けていきます。

さらに、ユニバーサルツーリズムの発展を通じて地域も元気にしていきたいと考えています。特に、地元・西尾市への思いは強くあります。

病気や障害を抱えている人も旅行しやすい環境になることで、経済も潤い、街がもっと元気になると考えています。


かわむー
かわむー

お話を伺いながら、旅行はまさに自立支援の第一歩になるのだと実感しました。

全国各地には、ユニバーサルツーリズムに興味を持つ旅行関係者も多数いると思います。ネットワークや地域との繋がりがどんどん広がることで、サポートを必要とした方の旅行の選択肢がさらに増えていくと良いですね。

「トラベルwithじぇぷと」に興味を持たれた方は、是非こちらの記事を御覧ください。

鈴木さんやじぇぷとの今後のさらなる発展を心から応援しております。


本日はお話をお聞かせいただき、ありがとうございました。



かわむー
かわむー

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ぜひ合わせて御覧ください。



撮影:ひろし


以上、今回はトラベルwithじぇぷとを運営する理学療法士の鈴木洋平さんを紹介させていただきました。

一人でも多くの方に、鈴木さんの素敵な想いと魅力がお届けできれば幸いです。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

今後ともリハノワをよろしくお願いいたします!


かわむーでした。

この取材は、御本人から同意を得て行なっています。本投稿に使用されている写真の転載は固くお断りいたしますので、何卒宜しくお願い申し上げます。

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