運動の楽しさを届けたい。研究と現場をつなぐアスレティックトレーナー|宮本瑠美さん

みなさんこんにちは、リハノワのかわむーです!

今回は、千葉県鴨川市にある亀田スポーツ医科学センターで活躍されているアスレティックトレーナー、宮本瑠美さんにお話を伺いました。

この記事では、宮本さんが現在力を入れて取り組まれていることや、コミュニティを育む場づくりへの想い、そして運動に励む方へのメッセージをご紹介します。

※ 亀田メディカルセンターリハビリテーション部門の紹介記事はこちら

トレーナー・宮本瑠美さん

◆ 宮本瑠美 (みやもと・るみ)さん
亀田スポーツ医科学センター副主任 / アスレティックトレーナー、健康運動指導士
青森県弘前市出身。2008年に国際武道大学を卒業後、同大学大学院修士課程に進学し、バイオメカニクスを中心に研究活動に取り組む。2010年5月、亀田スポーツ医科学センターに入職。現場での経験を積む傍ら、2013年に早稲田大学大学院博士課程へ進学し、疫学やエビデンスに基づいた運動療法の研究を深める。研究と現場をつなぐ「ハブ」として、幅広い世代の利用者に寄り添った運動指導に力を入れている。


かわむー
かわむー

現在、亀田スポーツ医科学センターで副主任としてご活躍されている宮本さんですが、アスレティックトレーナー(AT:Athletic Trainer)として健康増進の領域に関わられるようになったきっかけは何だったのでしょうか? また、亀田でのお仕事を選ばれた理由についても、ぜひお聞かせください。


宮本さん
宮本さん

私は中学生の頃から陸上競技に打ち込んでおり、運動そのものに強い関心をもっていました。

高校時代は怪我に悩まされ、県やブロックレベルでは一定の成果を残せたものの、より高いレベルでは思うような結果を出せず、悔しさが残りました。その思いから、高校卒業後も陸上競技を続けることを決意し、千葉県鴨川市に隣接する勝浦市にある国際武道大学に進学しました。

健康増進という分野に興味を持つようになったのは、修士課程2年の時です。地域の中高年の方々を対象にした「はつらつ教室」という体操教室に携わる機会があり、参加者が笑顔で運動を楽しむ姿を目にして、「運動は苦しむものではなく、笑顔で楽しめるものなんだ」と気づかされました。

それまでは、健康増進や生涯スポーツという考え方には馴染みがなく、運動といえば「苦しみながら頑張る競技スポーツ」というイメージが強かったんです。



宮本さん
宮本さん

修士課程を修了した後、博士課程に進むか、それとも現場に出るか迷っていた時、亀田で「メディカルフィットネス」という新しい取り組みが進められていることを知りました。

大学の先生から施設を紹介していただき、見学に訪れた際、ちょうどトレーナーを募集していました。

施設の雰囲気や取り組みに強く惹かれ、この環境で自分の成長を実現したいと思い、入職を決意。健康運動指導士の資格は入職条件だったため、修士課程2年の時に急いで取得に向けて動きました。

そして、2010年5月に亀田メディカルメンターへ入職し、現在に至ります。


メディカルフィットネスの魅力

かわむー
かわむー

宮本さんが勤務されている「亀田スポーツ医科学センター」について、どのような施設なのか、特徴も含めてぜひ教えていただけますでしょうか?


宮本さん
宮本さん

亀田スポーツ医科学センターは、亀田クリニックに併設されたメディカルフィットネス施設で、医療法42条で認められた場所です。

ここでは、医師や看護師、管理栄養士、リハビリスタッフ、そして私たちアスレティックトレーナーや健康運動指導士が連携し、生活習慣病の運動療法、整形外科疾患のケア、競技力向上を目指した運動指導など、多岐にわたるサポートを行っています。

センターには、トレーニング器具が揃ったメインフロアやエアロバイクエリア、タータントラック、投球練習場、スタジオなど充実した設備が整っています。

利用者は小学生から高齢者、趣味で運動を楽しむ方からトップアスリートまでと非常に幅広く、病気の治療中や術後間もない患者さんにも利用されています。地域柄、サーフィンをされる方も多いのが特徴です。

一日あたり50~60人ほどが訪れる、賑やかな施設です。


スタジオ(月〜土営業で、毎日2〜4レッスンを開催。メニューは筋トレやストレッチ、ヨガ、エアロビクスなど多彩で、入門から上級まで幅広いレベルが設定されている)
トレーニングを行うメインフロア(施設より写真提供)
オーシャンビューのエアロバイクエリア(施設より写真提供)


宮本さん
宮本さん

センターの大きな特徴は、その「多様性」です。

一般的な42条施設は、糖尿病や循環器疾患など特定の疾患に特化したところが多いですが、ここでは小学生から90代の高齢者まで、幅広い世代の方々が利用しています。それぞれ異なる背景をもちながらも、同じ空間で運動を楽しめるのが、このセンターならではの魅力です。

たとえば、整形外科術後の方同士が励まし合ったり、高齢者の方が自然に助け合ったりする姿が見られます。利用者さん同士の交流から生まれるポジティブで前向きな雰囲気が、このセンター全体を明るくしていると感じています。

また、センターを利用する際には、医師の「運動可否判定依頼書」が必要です。このステップを通じて、医療の安全性がしっかり確保されているので、利用者のみなさんには安心して運動に取り組んでいただけます。

亀田スポーツ医科学センター概要:
・対象者:
子どもから高齢者まで全世代
・体制:アスレティックトレーナーや健康運動指導士などの資格を有した4人のスタッフが、スポーツ医科学的根拠に基づき安全で効果的な運動指導を実施
・利用目的:競技復帰・職業復帰に向けたサポート、パフォーマンス向上、健康増進、転倒予防、生活習慣病の予防
・料金:詳しくはHP内こちらをご覧ください

研究と現場をつなぐ

かわむー
かわむー

宮本さんが現在、亀田スポーツ医科学センターで特に力を入れて取り組んでいらっしゃることについてお聞かせいただけますか?

また、今後さらに挑戦してみたいことや目指していることもあれば、ぜひ合わせて教えてください。


宮本さん
宮本さん

亀田スポーツ医科学センターでの15年の勤務を通じて、私が特に力を入れているのは、研究と現場をつなぐ「ハブ」としての役割を果たすことです。

2013年から亀田に在籍しながら、早稲田大学大学院の博士課程に進学し、疫学やエビデンスに基づいた運動療法について研究しました。リハビリや運動においてエビデンスを活用することは重要ですが、それを現場でどう活かすかは「アート」の部分だと感じています。

研究者として深く研究を進めることも魅力的ですが、現場にいるからこそ見える課題や気づきを大切にし、研究の成果を運動指導やケアにうまく橋渡ししていきたいと思っています。

亀田のように、リハビリ、フィットネス、医療が交わる環境は、まさにその役割を果たすのに適した場所だと感じています。

今後は、サービスの再構築や若手トレーナーの育成にも力を入れていきたいです。現在、センターには4人のトレーナーが在籍していますが、チーム全体がさらに成長し、進化していく必要があると考えています。

海外や他分野からの学びも取り入れ、新しい視点で取り組みを進めていきたいです。

理想とするコミュニティ

かわむー
かわむー

宮本さんが運動指導をされる中で、日頃から心がけていらっしゃることや、大切にされていることがあれば、ぜひ教えてください。


宮本さん
宮本さん

私が大切にしているのは、「コミュニティは自然に生まれるもの」という考えです。

最初の頃は、この施設で「コミュニティ」が果たす役割は大きいと思い、積極的にコミュニティを作ろうと試みていました。たとえば、興味を引きそうなセッションやイベントを開催したり、年代の異なる方々をあえて混ぜてみたりと、いろいろ工夫しました。

しかし、そうした取り組みは長続きしないことに気づいたんです。コミュニティというのは、こちらが作ろうとして作れるものではなく、自然に生まれ、育まれるものだと感じています。

いろんな人が気軽に利用できる空間を整えれば、そこに自然と人が集まり、互いに支え合う場ができる。それが、本当に心地よいコミュニティなんだと思います。

また、新型コロナウイルス感染症や災害の影響で、施設に通ってもらうのが難しくなった時期もありました。その経験を通じて、ただ「ここに来てください」とお願いするだけではなく、運動を「どうやって続けてもらえるか」という視点がとても大切だと改めて感じました。


かわむー
かわむー

コミュニティは「自然に生まれ、育まれるもの」だという考え、とても素敵ですね。また、運動を継続してもらうための仕掛けづくりの重要性についてのお話にも、深く共感しました。

宮本さんがご活動される中で、特に喜びややりがいを感じるのは、どのような瞬間でしょうか。ぜひお聞かせいただけると嬉しいです。


宮本さん
宮本さん

私たちが提供してるコンディショニングは、利用者さん一人ひとりの既往歴や状況に合わせて調整が必要ですが、その本質はアスリートでも高齢者でも変わりません。

利用者の方が受け身ではなく、自らの力で一歩を踏み出す姿を見るたびに、この仕事に携わっていて本当に良かったと感じます。

また、利用者同士が「ここはこうしたほうがいいよ」とアドバイスをし合ったり、「こんな情報があるよ」と共有し合ったりする様子を見ると、これこそ理想的なコミュニティだと実感します。

幅広い世代の方々が一緒に楽しく運動し、自然に会話を交わしている姿を目にすると、心が温かくなります。

運動に取り組む方へメッセージ

かわむー
かわむー

最後に、宮本さんから、運動に取り組んでいる方々へ向けて、メッセージをいただけますでしょうか。


宮本さん
宮本さん

まずは、「運動を楽しんでほしい」ということをお伝えしたいです。

特に、予防のための運動は「楽しい」と感じられないとなかなか続けられないと思います。治療は、痛みや不調から抜け出したいという動機がありますが、予防にはその直接的な動機がない分、「楽しさ」が何よりも大切だと感じています。

その「楽しさ」を引き出すのは、私たちの大切な役割です。運動を楽しめる環境を整えながら、リスク管理もしっかり行っていますので、ぜひ前向きな気持ちで取り組んでいただきたいと思います。

みなさんが運動を通じて、心も身体も軽くなり、「楽しい」と思える瞬間をたくさん見つけていただけると嬉しいです。健康的で充実した日々を送れるよう、一緒に歩んでいきましょう。


かわむー
かわむー

宮本さん、心温まるメッセージをありがとうございました。

幅広い世代の方々が支え合いながら、楽しく運動に取り組む姿は、まさに理想的なコミュニティそのものですね。「楽しむこと」の大切さを伝える宮本さんのメッセージには、リハビリテーションの可能性を大きく広げる力を感じました。

研究と現場をつなぐ架け橋となりながら、亀田スポーツ医科学センターの持つ独自の魅力を支えている宮本さんの挑戦を、リハノワはこれからも全力で応援しています。

本日は貴重なお話をお聞かせいただき、ありがとうございました。


かわむー
かわむー

<関連情報>
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亀田総合病院報(2025年1月号) ※p12-15、p22-23に特集あり


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以上、今回は千葉県鴨川市にある亀田スポーツ医科学センターで活躍されている、アスレティックトレーナーの宮本瑠美さんを紹介しました。

ひとりでも多くの方に、宮本さんの素敵な想いと魅力がお届けできれば幸いです。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

今後ともリハノワをよろしくお願いいたします!


かわむーでした。

この取材は、本人から同意を得て行なっています。本投稿に使用されている写真の転載は固くお断りいたしますので、何卒宜しくお願い申し上げます。

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