みなさんこんにちは、リハノワのかわむーです!
今回は、千葉県鴨川市にある亀田総合病院リハビリテーション室にお邪魔しました。ここでは、運動器や脳血管疾患、がん、呼吸器、循環器疾患、摂食・嚥下機能障害など、子どもから大人まで幅広いリハビリテーションを提供しています。
本記事では、亀田総合病院リハビリテーション室がいま注力している3つのリハビリテーションについて紹介します。
※「亀田メディカルセンター リハビリ部門」の紹介記事はこちら
医療法人鉄蕉会 亀田総合病院
医療法人鉄蕉会 亀田総合病院は、1948年の創立以来、南房総の「最後の砦」として地域医療を支え続けています。35の診療科目と917の病床(特殊病床含む)が備えられ、クリニックやリハビリテーション病院等との密な連携により、急性期から在宅まで幅広く対応しています。
1984年に開設されたリハビリテーション室には、現在、医師7名、理学療法士84名、作業療法士10名、言語聴覚士7名、歯科衛生士2名が所属しています。全入院患者さんの約60%(年間リハオーダー延べ数9,000)にリハビリテーションを提供し、運動器疾患、脳血管疾患、がん、呼吸器疾患、循環器疾患、廃用症候群、摂食機能障害など、さまざまな疾患や障害に対して幅広くサポートしています。
理学療法士は、脳血管、運動器、スポーツ、内部障害(ICU・呼吸・循環)、総合内科、がんの6つのチーム、作業療法士は脳血管と運動器の2つのチーム、言語聴覚士と歯科衛生士は混合チームを組み、急性期のリハビリテーションを365日体制で行っています。
注目のリハビリテーション
今回は、亀田総合病院が注力する「摂食・嚥下」「産後」「集中治療室」の3つのリハビリテーションについてご紹介します。
各分野の担当セラピストに加え、摂食・嚥下のリハビリテーションではSSTメンバー(看護師、薬剤師、医師)に、産後のリハビリテーションでは実際の患者さんにもお話を伺いました。
摂食・嚥下のリハビリテーション
【活動紹介】
摂食・嚥下のリハビリテーションは、リハビリテーション室に所属する言語聴覚士(ST:Speech Therapist)と摂食・嚥下障害認定看護師が連携し、実施しています。患者さんの嚥下のリハビリテーションや食形態の調整、必要に応じてVE;Videoendoscopic examination of swallowing(嚥下内視鏡検査)やVF;Video Fluoroscopic examination of swallowing(嚥下造影検査)などの検査を行っています。
また、摂食・嚥下障害認定看護師、STチーム、リハビリテーション科医、薬剤師で結成された、摂食・嚥下サポートチーム(SST:Swallowing Support Team)による定期的なミーティングや病棟ラウンドも実施しています。週に1回開催されるSSTのミーティングでは、STが関わっている難渋症例や医療安全委員会から相談のあった症例などを多職種で話し合います。月に1回行われる病棟ラウンドでは、実際に患者さんの元を訪れ、食事に関する困りごとを解決できるよう多職種で議論します。
食支援には多職種連携が欠かせません。医師や看護師、STの他、メニューを考える栄養士や、食事を作る調理師、体力を支える理学療法士、自分で食べるための力を支える作業療法士、口の専門家である歯科医師・歯科衛生士、薬の選択や飲み方を調整する薬剤師など、多職種が連携して患者さんの「食べる」をサポートしています。
【チームメンバーの声】
SSTで活動される摂食・嚥下障害認定看護師の石川さん、薬剤師の宇田川さん、言語聴覚士の渡慶次さん、リハビリテーション科医の小澤さんにお話を伺いました。
◆ 摂食・嚥下障害認定看護師の石川千沙さん
私が「食支援」に関心を持ったのは、学生時代、実習で担当した絶食の患者さんが、久しぶりにご飯を口にして「美味しい」と笑顔を見せたことがきっかけです。その姿に食の力を感じ、「食のリハビリに関わりたい」と強く思いました。
摂食嚥下障害看護認定看護師資格を取得し、神経内科病棟勤務を得て、2015年から専従業務、2024年からリハビリテーション室に執務席を置き、食支援に専念しています。食べることはQOLに直結するため、患者さんの「食べたい」という想いを大切にしています。嚥下機能が低下していても、できるだけ好みに合うものを提供できるよう心がけています。
現在、SSTの取り組みとして病棟スタッフの育成に注力しています。摂食・嚥下に詳しい「リンクナース」を各病棟で育成し、手厚い食支援を目指しています。
食べることは、生きること。そしてそれは、その人の「生き方」につながります。これからも患者さんの食支援に情熱を持って、サポートを続けていきたいと思います。
◆ 薬剤師の宇田川雄也さん
私は亀田の薬学レジデント制度を修了後、クリニックでの外来勤務を経て、2021年から病棟薬剤師として働いています。現在は脳神経内科病棟を担当し、前任者から引き継ぐ形でSSTにも関わらせてもらっています。SSTは多職種が一堂に会し、患者さんをより深く理解できる貴重な機会だと感じています。
嚥下には5つの段階(先行期、準備期、口腔期、咽頭期、食道期)がありますが、すべての段階で薬剤が関与することがありますので、薬剤が原因で問題が生じていないかを確認します。また、薬剤の剤形も確認・調整しています。たとえば、薬を溶かして飲む場合、その薬が正しく溶けているか、砕いてはいけないものを砕いていないか、また、一緒に溶かすと効果がなくなるものもあるので、それらが別々で投与されているかなどを確認します。
「大きくて上手に飲めない」「いっぱいあるから飲みたくない」「服用のタイミングが合わなくて飲めない」「砕けなかったり溶かせなかったりする薬剤があるがどうすればよいか」など、薬に関する悩みごとがあれば、まずは身近な医療者に相談してほしいと思います。薬の影響で飲み込み機能が低下する場合もあれば、逆に薬で改善することもあります。ご本人やご家族で心配があれば、ぜひお気軽にご相談ください。
◆ 言語聴覚士の渡慶次かおりさん
私は2015年に亀田メディカルセンターに入職し、翌年から総合病院で摂食・嚥下リハビリテーションに関わっています。患者さんが「食べられる喜び」に笑顔を見せる瞬間や、厳しい状態の中でも「お水が飲みたい」と希望される姿を見るたび、摂食・嚥下リハビリテーションの重要性を強く実感しています。実際にリハビリテーションを行う中で、「食べたい」「食べさせたい」という患者さんやご家族の希望を本当に多く耳にします。
リハビリテーションを行う上では、患者さんの希望を大切にし、どうすれば食べられるかを常に考え、最後まで諦めずに取り組みたいと思っています。「難しい」というのは簡単ですが、その一言で患者さんにとって大切な「食」の機会を奪ってしまわないか、慎重に考え行動しています。
今後は、病棟との連携を深め、誤嚥や窒息のリスクを減らす活動に加え、口腔ケアや教育活動にも力を入れていきたいと考えています。
◆ リハビリテーション科医の小澤里恵さん
高齢化に伴い、摂食・嚥下障害をもつ患者さんが増え、低栄養や誤嚥といった合併症が大きな問題となっています。私たちは、患者さんがなるべく誤嚥性肺炎や窒息を起こさないように、安全に必要な栄養を摂取できるよう、チームで取り組んでいます。
週1回のミーティングや月1回の病棟ラウンドを通して、医師として患者さんの治療状況や原疾患の予後をお伝えしつつ、食事支援について多職種と議論を深めています。個人的には、SSTのリーダーとして、チームメンバーが活動しやすい環境づくりに努め、各所と調整を行いながら、働きやすい雰囲気づくりを心がけています。
食事をとれなかった患者さんが食べられるようになり、喜んでいる姿を見ると大きなやりがいを感じます。また、病院全体でこの活動の意義が認められ、取り組みが進められていることにも力をもらっています。
SSTの活動は、病院全体の仕組みづくりにつながっていきます。組織としての改善に挑戦し、より働きやすい職場を作っていきたいです。
産後のリハビリテーション
【活動紹介】
産後のリハビリテーションは、産科病棟に入院中の産後の方や、産後トラブルがある外来患者さんを対象としています。女性の理学療法士2名が中心となり、産後のリハビリテーション(骨盤ケア)を実施しています。
産科病棟では「産後骨盤底ケア教室」を開催し、当院で出産された方全員を対象に、1回30分のプログラムを提供しています。出産2~3日目から退院前日までの間に1回は参加できるよう、週3回開催しています。プログラム内容は、骨盤底への負担を軽減する動き方や姿勢の指導、排便時の腹圧調整、骨盤ベルトの使用方法、臥位や座位で行う簡単な運動、呼吸の指導が中心です。まだ骨盤底筋へのダメージが残る産褥期に合わせ、適切な運動をお伝えしています。
外来患者さんには、産後の尿もれや便漏れ、骨盤臓器脱、腫れといったトラブルへの対応を行っており、保険適用内および保険適応外でのリハビリテーションも提供しています。
【患者さんの声】
実際に産後リハビリテーション(骨盤ケア)を受けられた田村さんに、お話を伺いました。
2024年4月に第二子を出産しました。産後のリハビリテーションを受けたいと思ったのは、出産前から続いていた恥骨痛を少しでも軽くしたいと感じたからです。
出産前に骨盤ベルトを用意し、産後は骨盤底筋のトレーニングや骨盤ベルトの使い方の指導を受けました。そのおかげで、第一子の時よりも恥骨痛が軽減し、尿漏れも早期に改善しました。
産後のリハビリを受けたことで、その後の生活が楽になったので、同じように悩んでいる方にはぜひおすすめしたいです。また、タイミングなどは難しいかもしれませんが、産前から骨盤底筋のトレーニング指導を受けられたら良いなと思います。
【担当セラピストの声】
◆ 須貝朋さん(理学療法士)
自身の妊娠・出産をきっかけに、地域のママたちとの新しい繋がりが生まれました。日々子育てに奮闘する彼女たちは、子どもを優先するあまり、自身の不調や痛みを「産後だから仕方ない」と我慢しているのが現状でした。理学療法士である私に骨盤ベルトの使い方や不調を相談してくれる方もいましたが、当時の私は知識が足りず、サポートできないもどかしさを感じていました。そこで、骨盤底ケアの勉強を始め、「ガスケアプローチ周産期ペリネ教育ラベルアドバイザー」の資格を取得しました。
現在は、産科病棟での「産後骨盤底ケア教室」や地域での「産後骨盤ケア教室」を通じて、骨盤ケアの大切さをお伝えしています。産後の身体はダメージが大きいため、正しい姿勢や動作を身につけることが重要です。間違った姿勢は歪みにつながり、尿もれや腰痛の原因にもなります。リハビリでは、少しでもリラックスして学べる環境を整え、後からでも思い出して日常生活に活かせるようサポートしています。
これからも産後ケア・リハビリテーションについて学びを深めながら、「産後のママたちの力になりたい」「不調は改善できるし、痛みを我慢する必要はない」というメッセージを伝え続けていきたいです。
ICUのリハビリテーション
【活動紹介】
集中治療室(Intensive Care Unit:ICU)は、重い病気やけがで生命の危機にある患者さんを最先端の医療技術を使って集中的に治療する特別な病棟です。急性呼吸不全、急性心不全、重症外傷により生命の危険のある患者さんや、心臓血管外科や消化器外科の手術後の患者さんを対象にリハビリテーションを実施しています。
ICU専従理学療法士2名、専任理学療法士1名、研修中のローテーター(理学療法士)1名がチームを組み、集中治療医や担当医、看護師、薬剤師、臨床工学技士、管理栄養士などと連携してリハビリテーションを進めていきます。
ICUのリハビリのテーマは「早期離床」で、患者さんの意識、呼吸、循環動態などに合わせて、ベッド上のエクササイズ、座位、起立、歩行、車椅子乗車などを行っています。ICUには人工呼吸器などの機械を使用している方も多くいますが、そのような機械を装着した状態でも離床はすすめていきます。たとえば、人工呼吸器を装着したまま立って足踏みをしたり、歩いたりします。
【スタッフの声】
◆ 藤田雅子さん(理学療法士)
私はもともとスポーツ領域を中心に活動していましたが、患者さんが急変したのをきっかけに急性期のリハビリテーションへの関心が高まりました。しっかりと学べる環境で経験を重ねる中で、集中治療領域が自分のメインフィールドとなり、現在はICU専従理学療法士としてリハビリ業務に従事しながら、多職種との連携や後輩の育成にも力を入れています。
ICUでのリハビリテーションは、重症の患者さんが多いため、楽しさよりもやりがいや達成感を感じる場面の方が多いかもしれません。理学療法士として、身体機能の維持や向上、動作能力の獲得に加え、人工呼吸器の離脱や排痰など生命に関わるサポートも行っています。高齢や重症の患者さんが無事に人工呼吸器を離脱し、元気に歩き始めたり、ICU退室後に元気に過ごされている姿を見たりすると、大きな感動を覚えます。
今後は、ICUの早期離床・リハビリテーションの「質」について検討していきたいと考えています。私たちが提供するリハビリテーションが安全であり、患者の長期予後や社会復帰に寄与できているのかを検証し、発信していきたいです。
施設概要
■ 医療法人鉄蕉会 亀田総合病院
理事長 亀田隆明さん
院長 亀田俊明さん
■ 設立
1948年1月 有限会社亀田病院
1954年9月 医療法人鉄蕉会亀田病院に改組
1964年7月 医療法人鉄蕉会亀田総合病院に名称変更
■ 病床
一般 865床 (うち開放病床 30床)、精神 52床
■ 診療科
計35科(内科、心療内科、精神科、脳神経内科、呼吸器内科、消化器内科、循環器内科、アレルギー科、リウマチ科、小児科、外科、消化器外科、乳腺外科、呼吸器外科、小児外科、整形外科、形成外科、美容外科、脳神経外科、心臓血管外科、皮膚科、泌尿器科、産婦人科、眼科、耳鼻いんこう科、リハビリテーション科、放射線科、麻酔科、救急科、歯科、矯正歯科、小児歯科、歯科口腔外科、病理診断科、感染症内科)
■ 所在地
〒296-8602 千葉県鴨川市東町929番地
TEL:04-7092-2211
FAX:04-7099-1191
■ アクセス
◇ 公共交通機関
・JR安房鴨川駅から病院 タクシーで約5分、または路線バスで約7分(鴨川日東バス)
・東京駅から病院 バス・アクシー号で2時間半程度(日東交通)
◇ 自動車
・館山道の君津ICから約45分、圏央道の木更津東ICから約45分
・駐車場多数あり(詳しくはこちら)
■ 関連施設情報
・千葉県鴨川市:亀田総合病院、亀田クリニック、亀田リハビリテーション病院、亀田スポーツ医科学センター、亀田浜荻クリニック、介護老人保健施設たいよう・Sun Daycare
・千葉県館山市:安房地域医療センター、亀田ファミリークリニック館山
・千葉県千葉市:幕張クリニック、亀田MTGクリニック、亀田IVFクリニック
・東京都中央区:亀田京橋クリニック、亀田京橋スポーツ医科学センター
・神奈川県厚木市:亀田森の里病院
■ 問い合わせ
こちらのフォームからお問い合わせくだい
■ リハビリ部門関連情報
・HP(グループ全体)
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亀田総合病院が注力する「摂食・嚥下」「産後」「集中治療室」の3つのリハビリテーションについてご紹介しました。各分野で活躍するスタッフの専門性の高さと、患者さんを想う熱い心がとても印象的でした。
プロフェッショナルたちが情熱を注ぎ、進化を続ける亀田総合病院リハビリテーション室。その力強い歩みが、これからも多くの方の未来を支えることを心から願っています。
今回の取材にご協力いただいたスタッフの皆さま、そして2日間にわたる取材を支えてくださったリハ室長の彦田さん、経営企画部の阿部さんにも心より感謝申し上げます。本当にありがとうございました。
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・亀田メディカルセンターリハビリ部門 紹介記事
・鵜澤吉宏さん(理学療法士/米国呼吸療法士)取材記事
・小柴輝晃さん(腎臓リハに取り組む理学療法士)取材記事
・須貝朋さん(産後リハに取り組む理学療法士)取材記事
・宮本瑠美さん(スポーツ医科学センター/トレーナー)取材記事
・上村直美さん(リハビリ病院/作業療法士)取材記事
・長尾圭祐さん(リハビリ病院/言語聴覚士)取材記事
・渡慶次かおりさん(総合病院/言語聴覚士)取材記事
ぜひ合わせてご覧ください。
以上、本記事では亀田総合病院リハビリテーション室がいま注力している3つのリハビリテーションについてご紹介しました。
ひとりでも多くの方に亀田総合病院リハビリテーション室の素敵な活動や想いがお届けできれば幸いです。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
今後ともリハノワをよろしくお願いいたします!
かわむーでした。
この取材は、施設から同意を得て行なっています。本投稿に使用されている写真の転載は固くお断りいたしますので、何卒宜しくお願い申し上げます。
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※取材先や取材内容はリハノワ独自の基準で選定しています。リンク先の企業と記事に直接の関わりはありません。
撮影=上垣内 寛
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