【当事者の声】脳出血からの再出発 “自分らしさ”を取り戻すリハビリテーション。直江徹さんの物語|世田谷記念病院

みなさんこんにちは、リハノワのかわむーです!

今回は、東京都世田谷区にある世田谷記念病院でリハビリに励まれる直江徹さんをご家族にサポートいただきながら取材しました。

直江さんは、長年インテリアデザイナーとして活躍され、商業施設や店舗の空間づくりに携わってこられました。そんな中、2025年1月に脳出血で倒れ、緊急手術を受けられました。一時は意識がもうろうとするほどの重い状況でしたが、現在は懸命にリハビリに取り組まれています。

取材では、お姉様にもご同席いただき、入院生活のことやリハビリを通して感じた変化、そしてこれからの目標について、率直な想いを伺いました。

この記事では、直江さんのこれまでの歩みと、デザイナーとして培った“空間をつくる力”を支えに前へ進む姿をご紹介します。

直江徹さんの歩み

直江 徹(なおえ・とおる)さん
東京都出身。インテリアデザイナーとして企業で経験を重ねたのち、2000年に独立。商業施設の店舗設計を中心に、多くの空間づくりに携わってきた。2025年1月27日、脳出血により緊急入院。翌日に脳室内出血に対するドレナージ術(体の中に溜まってしまった血液などの体液を、体の外へ排出するための医療処置)を受ける。現在は、復職を目指しながら、自立した生活を取り戻すことを目標に、リハビリに励んでいる。


かわむー
かわむー

日々、さまざまなリハビリに取り組まれている直江さんですが、入院されることになった当時の状況や、その後の入院生活について、覚えている範囲でお聞かせいただけますか。


直江さん
直江さん

倒れたのは、2025年1月27日の朝でした。

実は17年前にも一度、意識を失い倒れたことがあります。その際に「もやもや病」が見つかりましたが、幸いにも麻痺は残らず、すぐに回復して仕事へ戻ることができました。ちょうど忙しい時期でもあり、現場にもすぐ復帰しましたが、その後しばらくは気持ちが上がらず、どこか心も体も本調子ではなかったように思います。それでも3年ほど経つと、また以前のように仕事に打ち込めるようになりました。

そして、あれから17年。朝、家族に「頭が痛い」と訴えたあと、強い吐き気に襲われ、少しずつ意識が遠のいていきました。

搬送先の病院で受けた診断は、右視床出血。翌朝には瞳孔が開いてきたということで、すぐに脳室内出血に対する緊急手術を受けることになりました。

もやもや病の影響もあって手術は難航が予想され、先生方も慎重に判断してくださったそうです。最終的には「やらなければ命が危ない」という状況の中で、手術をお願いすることになりました。


かわむー
かわむー

もやもや病は、脳の主要な血管が徐々に狭くなり、脳の血流が不足する病気のことです。17年前の経験を経ての今回の発症、本当に驚かれたことと思います。

大きな手術を乗り越え、そこからはどのような日々を過ごしてこられたのでしょうか。


直江さん
直江さん

当時の記憶は、まったく残っていません。手術が終わったあと、私はおよそ2週間ほど集中治療室(ICU)で過ごしていたそうです。

その頃の私は、誕生日と名前を言うことはできていて、字も少しは書けていたと聞きました。見舞いに来てくれていた姉は、「それが言えるなら、きっと良くなるはず」と希望を感じて、毎日のように「頑張れ、頑張れ」と声をかけてくれていたそうです。

術後はしばらく高熱が続き、皮疹が出るなど体調が安定しない日が続きました。意識がもうろうとする状態も長く、2月のことはほとんど覚えていません。3月の上旬頃になってようやく意識がはっきりしはじめ、少しずつ周囲のことがわかるようになっていきました。



リハビリのはじまり

かわむー
かわむー

術後は長く続いた発熱や体調の不安定さもあり、本当にお辛い時期を過ごされたのではないかと思います。

すぐにはリハビリを始められない状況の中で、少しずつ動き出せるようになったのは、いつ頃からだったのでしょうか。


直江さん
直江さん

本格的にリハビリが始まったのは、手術が終わって1ヵ月以上経ってからでした。当時のリハビリの先生が「そろそろ少しずつ体を動かしていこう」と声をかけてくださって、熱が38度を超えない日は、できる範囲でリハビリを進めてもらうようになりました。

最初は起立台を使っての離床練習から。その後は、立ち上がる練習や、鏡の前に立って姿勢を保つ練習を重ね、できることを1つずつ増やしていきました。

そして、3月の下旬に、リハビリに専念するため世田谷記念病院に転院。その頃は、身体の麻痺している部分に強いしびれがあり、眠れない夜も多かったのですが、時間がたつにつれて少しずつ落ち着いていきました。


いまは、理学療法での歩行練習や、言語聴覚療法や作業療法にも取り組んでいます。

言語聴覚療法では、声を出す練習や、文字を見て「〇」「×」をつける課題などを行い、作業療法では指先の運動や、ペットボトルをつかんで移動させる練習をしています。特に左手の動きがまだ難しいので、焦らず、少しずつ感覚を取り戻していけるように頑張っています。


歩行練習に取り組む直江さん(お姉様より写真提供)
リハビリ機器「ウェルウォーク」を使い、画面からフィードバックを受けながら歩行練習に取り組んでいる(お姉様より写真提供)


“自分らしさ”を取り戻した瞬間

かわむー
かわむー

少しずつご自身の身体と向き合いながら、コツコツとリハビリを続けてこられたこと、本当に素晴らしいと感じました。

そうした日々の中で、気持ちがふっと明るくなったり、「自分らしさが戻ってきたな」と感じた瞬間はありましたか? 印象に残っている出来事があれば、ぜひ教えてください。


直江さん
直江さん

転機になったのは、世田谷記念病院に転院してから2週間ほど経った、4月中旬のことでした。

左半身に麻痺がある私は、入院していた部屋でどうしても右側ばかりに意識が偏ってしまい、左に目を向けにくい状態でした。そのとき、担当のリハビリの先生が「空間のレイアウトを変えてみましょうか」と提案してくださったんです。テレビの位置やベッドの向きを少し工夫して、左にも意識が向くように配置を変えてもらいました。

ところが、その空間にしばらくいるうちに「なんだか落ち着かない」と感じてしまって。気づけば、「レイアウトを変えたい!」と言葉にしていました。

その勢いのまま、電話を手にしてデザイン仲間に連絡をしていました。「この空間、気持ちが悪いから、早く来て!なんとかして!」と。それまで電話もできず、声もはっきり出なかったのに、突然私から電話がかかってきたと聞いて、みんな本当に驚いたそうです。

まもなくデザイン仲間や姉が病院に駆けつけてくれて、iPadでレイアウト図を描きながら、「ここにベッドを置いて」「この角度がいい」などと、スタッフさんとも相談しながら細かく指示を出していきました。久しぶりに「デザイナーの血が騒いだ」瞬間だったのかもしれません。

レイアウトを変え終えたあとは、不思議と心がすっと落ち着いて、ようやくその空間に自分が馴染めたような感覚がありました。その日から、少しずつ元気を取り戻せていったように思います。


かわむー
かわむー

世田谷記念病院のスタッフさんやデザイン仲間のみなさんと一緒に、「直江さんらしい空間」をつくり上げたその光景が目に浮かび、とても胸が熱くなりました。

「こうしたい!」という想いは、苦しさを乗り越える大きな力になるのだと、あらためて感じました。


デザイン仲間の方々と一緒に、部屋のレイアウト変更に取り組む様子(お姉様より写真提供)
納得のいくレイアウトに仕上がり、誇らしそうに笑顔を輝かせる直江さん(お姉様より写真提供)
直江さんを励まし続けた “リハビリ応援千社札”(お姉様より写真提供)


一歩ずつ、前へ

かわむー
かわむー

インテリアデザイナーとしての感覚が少しずつ戻り、リハビリにも前向きに取り組まれている様子がとてもよく伝わってきました。

日々のリハビリの中で、「うれしいな」「前に進めているな」と感じるのは、どんなときでしょうか。また、リハビリを続けるうえでの原動力になっていることがあれば、ぜひお聞かせください。


直江さん
直江さん

リハビリをしていてうれしいのは、麻痺した身体が少しずつ動いたり、変化を実感できたりするときです。一歩足が前に出た瞬間や、思うように体が動いたときは本当にうれしくて、もっとやりたいと思うほどです。1日3時間のリハビリも苦ではなく、むしろ毎日の楽しみになっています。

なかでも歩行練習はとくに好きです。「次はこうしてみよう」と自分なりに目標を立てて、その通りにできたときの達成感は格別です。

そして、いまの原動力になっているのは、やはり「家に帰りたい」という思いです。早く退院して、また自分の家での生活を取り戻したい。その日を楽しみに、日々リハビリに励んでいます。


かわむー
かわむー

一歩一歩の変化を楽しみながら、リハビリに取り組まれている姿がとても印象的です。

今後のリハビリで目指していることや、これから挑戦してみたいことはありますか?


直江さん
直江さん

いまの目標は、退院するときに自分の足でしっかり歩いて帰ることです。「まだまだ」と感じることもたくさんありますが、周りの方々が丁寧に支えてくださっているので、着実に一歩ずつ前へ進めていると感じています。

いずれは、仲間と一緒にまたインテリアデザインの仕事をしたいです。

でもまずは、家の中で自分の力で生活できるようになること。車いすの操作や歩行の練習をしっかりして、自立して生活できるようになることを第一の目標にしています。

リハビリに励む方へ

かわむー
かわむー

最後に、同じようにリハビリに向き合っている方々へ、なにかメッセージをお願いできますか。


直江さん
直江さん

同じようにリハビリに励んでいる方へ、一言お伝えするとしたら、「がんばってください!」です。

リハビリは決して楽なことばかりではありませんが、努力を惜しまなければ、必ず前に進めると感じています。

スタッフの皆さんやセラピストの方々が、いつも力を貸してくれます。だからこそ、どうか諦めずに、とにもかくにも「がんばってくださいね」とお伝えしたいです。


かわむー
かわむー

直江さんの力強い「がんばってください!」という言葉には、ご自身が歩んできた時間と、仲間やスタッフへの深い信頼がにじんでいるように感じました。一歩ずつ、丁寧に、前へ進もうとするその姿勢が、とてもまぶしいです。

これからも、ご自身のペースでリハビリを続けながら、直江さんらしいデザインで多くの方々に笑顔を届けていってくださるとうれしいです。リハノワは、これからも直江さんの挑戦を心から応援しています。

直江さん、貴重なお話を聞かせてくださり、本当にありがとうございました。

取材にあたりご協力くださったお姉様、そして世田谷記念病院の関係者のみなさまにも、心から感謝申し上げます。



以上、今回は、東京都世田谷区にある世田谷記念病院でリハビリに励まれている直江徹さんをご紹介しました。

ひとりでも多くの方に、直江さんの素敵な想いと魅力がお届けできれば幸いです。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

今後ともリハノワをよろしくお願いいたします!


かわむーでした。

この記事は、パートナー企業様個人サポーター様、読者の皆さまの応援のもと、お届けいたしました。なお、本投稿に使用されている写真の転載は固くお断りいたしますので、何卒よろしくお願い申し上げます。

取材に際し、ご本人さまのご状況を考慮し、エピソードの補足説明や解説は、ご家族にご協力いただきました。

※取材先や取材内容はリハノワ独自の基準で選定しています。リンク先の企業と記事に直接の関わりはありません。

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