本音を引き出し、想いをつなぐ伴走者|作業療法士・上村尚美さん

みなさんこんにちは、リハノワのかわむーです!

今回は、千葉県鴨川市にある亀田リハビリテーション病院でご活躍中の作業療法士、上村尚美さんにお話を伺いました。

この記事では、上村さんが作業療法を実践する中で大切にしていることや、リハビリテーションに励んでいる方への温かいメッセージをお届けします。

※ 亀田メディカルセンターリハビリテーション部門の紹介記事はこちら

作業療法士・上村尚美さん

◆ 上村尚美(うえむら・なおみ)さん
亀田リハビリテーション病院リハビリテーション室 副主任 / 作業療法士 / 介護支援専門員 / AMPS認定評価者 / 両立支援コーディネーター
神奈川県川崎市出身。2006年に昭和大学保健医療学部作業療法学科を卒業後、亀田メディカルセンターに入職。亀田総合病院や亀田リハビリテーション病院で作業療法業務に従事する。


かわむー
かわむー

現在、亀田リハビリテーション病院のリハビリテーション室で副主任としてご活躍中の上村さんですが、作業療法士という道を選ばれたきっかけについて、ぜひお聞かせください。


上村さん
上村さん

私が通っていた小学校はとても大きく、知的障害や身体障害をもつ同級生と過ごす機会が多くありました。

一緒に字を書いたり、体育の時間にフォローをしたり、時には落ち着かせたり。自然と手を差し伸べることが日常の一部になっていたように思います。そんな経験から、将来はこうしたサポートに関わる仕事がしたいと漠然と考えるようになりました。

最初はカウンセラーに興味を持っていましたが、介護福祉士やケアマネジャーとして働く親戚から「リハビリの仕事って楽しいよ」と教えてもらい、介護施設を見学させてもらう機会がありました。

それから自分なりに調べ、考えを深めていく中で出会ったのが作業療法士という職業です。理学療法士は身体を治すイメージが強いのに対し、作業療法士は「集団の中で自分らしく過ごせるよう支える」というイメージがあり、そこにとても魅力を感じました。

心と身体の両面にアプローチし、人を支える仕事ができるという点に強く惹かれ、この道を選ぶことを決めました。



かわむー
かわむー

小学校時代から自然と人を支えることが日常の一部だったとは、素晴らしいですね。ご自身で作業療法士という仕事を選ばれたプロセスにも、上村さんの熱心さや丁寧さが表れているなと感じました。

免許取得後、亀田メディカルセンターに入職されたのには、どんなきっかけがあったのでしょうか。


上村さん
上村さん

大学で学んだだけでは、自分がどの分野に向いているのか、どの分野に興味をもてるのかが分からず、悩んでいました。

そんな中で、ローテーション教育がある亀田メディカルセンターなら、急性期から在宅まで幅広い経験を積みながら、自分に合った分野を見つけられるかもしれないと考えました。

また、亀田は大学の先生から紹介していただいたことや、実習先として選ばれていたこともあって、同級生から「実習でお世話になったけど、すごく良かったよ」という話を聞いたことも決め手の一つでした。

初めて病院見学に訪れた日のことは、今でも鮮明に覚えています。

神奈川から電車で向かう途中、景色が次第に田舎らしくなり、「ここで本当に大丈夫かな?」と少し不安を感じました。ところが、トンネルを抜けた瞬間、目の前に広がったのは、果てしなく続く広大な海と澄み渡る青空。

その光景に心を奪われ、「こんな素敵な場所で働けたらいいな」と自然と心が動かされたのを覚えています。


施設より写真提供

リハビリが生む笑顔と希望

かわむー
かわむー

入職されてからこれまで、どのような歩みを重ねてこられましたか? これまでの経験の中で印象に残っているエピソードもあれば、ぜひお聞かせください。


上村さん
上村さん

最初は総合病院の作業療法士チームに配属され、その後、リハビリテーション病院や総合病院を行き来しながら、さまざまな現場で経験を積んできました。

その中でも特に心に残っているのは、家に帰ることが難しい状況の方々を支援し、自宅での生活を実現できたケースです。

たとえば、ご夫婦を同時に支援させていただいたエピソードが印象的でした。お二人はほぼ同じタイミングで病気を発症され、どちらも介助が必要な状況でしたが、地域の支援を調整し、ご自宅の環境を整えることで、なんとかお二人揃って、ご自宅での生活を再スタートすることができました。

また、総合病院で緩和ケアに携わっていた際には、患者さんのお看取りまで寄り添わせていただいた経験もあります。

特に心に残っているのは、意識が朦朧としていた患者さんがリハビリの最中に目を開けてくださった瞬間です。ご家族がその姿を見て、「リハビリのおかげだね」と涙を浮かべながら喜んでくださったことは、今でも忘れることができません。

患者さんだけでなく、ご家族の心にも寄り添えたと感じられる、大切な瞬間でした。


「その人らしさ」を未来へつなぐ

かわむー
かわむー

どちらのエピソードも、上村さんが患者さんやご家族に寄り添いながら丁寧にサポートされている姿が目に浮かび、温かい気持ちになりました。

リハビリテーションを実践する中で、上村さんが大切にしているのはどんなことでしょうか? 患者さんとの関わり方や、日々の心がけについて、ぜひお聞かせいただけると嬉しいです。


上村さん
上村さん

私は、対象者の方が「自分らしい、満足のいく生活」に少しでも近付けるような関わりや、1年後、5年後の未来を見据えた支援を大切にしています。

対象者の方の「自分らしさ」を引き出すための関わり方のコツとしては、とにかくたくさん質問をすることです。朝起きてから夜寝るまでの生活や、日中どこに出かけるのか、誰と一緒に行くのか、どんな気持ちでその場所に向かうのかなど、生活のあらゆる場面について丁寧に伺います。

作業療法の面接でも重視される「5W1H」を意識してお話を伺うと、その方が本当に大切にしていることが少しずつ見えてきます。ただし、質問が負担にならないよう、楽しさや興味を引き出す工夫も大事です。

たとえば、話が弾んできたら「それでそれで?」とさらに話を広げたり、「すごいですね」と相づちを打ったりしながら、一緒に喜びや驚きを共有します。

こうすることで、対象者の方も自然と心を開き、本音が引き出せる瞬間が増えていくんです。


かわむー
かわむー

実際にお話を伺いながら、対象者の方が安心して本音を話せるのは、上村さんご自身の温かく話しやすいお人柄と、聞き上手な姿勢があるからだと感じました。相手のペースに寄り添いながら、自然と楽しさや興味を引き出すコミュニケーション力、とても素敵です。

「1年後、5年後の未来を見据えた支援」という点についても、ぜひ詳しくお聞かせいただけますか?


上村さん
上村さん

私は、リハビリ病院の退院がゴールではなく、その後の生活こそが本当のスタートだと常に意識しています。たとえば、この夏に退院された方が冬になったとき、寒さで動きづらくなっていないか、どんな支援が必要になるのかを考えます。

また、5年後には対象者の年齢だけでなく、その方を支えるご家族や周囲の環境がどのように変化しているかを想像しながら支援を計画します。

現在は娘さんやお孫さんが支えている場合でも、5年後には状況が変わっているかもしれません。自分のこれまでの経験から得た家族像をもとに、「今できること」や「今のうちに誰につないでおくべきか」を考え、未来に備えた支援を心がけています。

こうした未来を見据えた支援こそが、対象者の方々が長く安定した生活を送るための基盤になると考えています。


一人ひとりが輝く世界

かわむー
かわむー

上村さんが現在力を入れて取り組んでいること、またはこれから挑戦してみたいと思っていることがあれば、ぜひお聞かせください。


上村さん
上村さん

私がいま力を入れているのは、後輩たちが作業療法士として、そして社会人としてどのように成長していくのかを見守りながら、その手助けをすることです。

どんな素敵な作業療法士に成長していくのか、私自身も手探りで試行錯誤しながら関わっています。

後輩たちには、広い視野を持ち、多くの人や資源とつながりを築ける作業療法士になってほしいと考えています。介護保険など制度の枠にとどまらず、地域の特徴や資源を知り、ケアマネジャーや地域の方々と積極的に会話を重ねることで、より柔軟で実践的な視点を養ってほしいと願っています。

また、一人ひとりのキャリアやライフイベントにも寄り添いたいと考えています。作業療法士という枠にとらわれず、人生全体を見据えたキャリア支援を意識しながら、彼ら、彼女たちが自分らしく働き、輝き続けられるようサポートしていきたいと思っています。

リハビリに励む方へメッセージ

かわむー
かわむー

最後に、リハビリテーションに取り組まれている当事者の方々へ、上村さんからぜひメッセージをお願いできますでしょうか。


上村さん
上村さん

リハビリに取り組む中で、ぜひ「自分の思いを伝える」ことを大切にしてほしいと思います。自分がどうなりたいのか、どんな生活を送りたいのかをセラピストにしっかり伝えることで、リハビリの目標がより自分らしいものになるはずです。

私自身、リハビリで関わる際には、「もし自分がこの病気だったら」「この立場だったら」と考えながら、対象者の方に寄り添うように心がけています。ただ、目標を設定する際にセラピスト側の視点が強く反映されすぎてしまうこともあります。

もし目標がしっくりこないと感じたら、「自分はこうしたい」「こういう生活を送りたい」という思いを、ぜひ担当のセラピストに伝えてみてください。その思いをしっかり受け止め、理解してくれるセラピストは必ずいます。

そうしたセラピストと一緒に考えながら進んでいけば、きっとあなたが思い描く人生に近づけるはずです。ひとりで抱え込まず、周りのサポートを受けながら、自分らしい道を歩んでいってほしいと心から願っています。


かわむー
かわむー

上村さん、心に響く素晴らしいメッセージをありがとうございました。相手の思いをしっかりと尊重しながら、一緒に未来を描いていく姿勢が本当に素敵です。

作業療法を通じて広がる「自分らしさ」の可能性。上村さんの支援が、多くの方の笑顔と希望を紡ぐ力になっていることを改めて感じました。

これからも、作業療法士として患者さんやご家族に寄り添いながら、未来に向けた新たな挑戦を続けられる上村さんを心から応援しています。

本日は貴重なお話をお聞かせいただき、ありがとうございました。



かわむー
かわむー

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以上、今回は千葉県鴨川市にある亀田リハビリテーション病院で働く、作業療法士の上村尚美さんを紹介しました。

ひとりでも多くの方に、上村さんの素敵な想いと魅力がお届けできれば幸いです。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

今後ともリハノワをよろしくお願いいたします!


かわむーでした。

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