「食べたい」を力に変える|言語聴覚士・渡慶次かおりさん

みなさんこんにちは、リハノワのかわむーです!

今回は、千葉県鴨川市にある亀田総合病院で、摂食・嚥下のリハビリテーションに取り組む言語聴覚士、渡慶次かおりさんにお話を伺いました。

この記事では、渡慶次さんの現場での取り組みややりがい、さらには今後の挑戦、リハビリに励む方への温かいメッセージをご紹介します。

※ 亀田メディカルセンターリハビリテーション部門の紹介記事はこちら

渡慶次かおりさん

◆ 渡慶次 かおり(とけし・かおり)さん
沖縄県出身。沖縄リハビリテーション福祉学院卒業後、2015年に亀田メディカルセンターに入職。亀田リハビリテーション病院にて1年間経験を積んだ後、2016年より亀田総合病院で勤務。摂食・嚥下サポートチーム(SST:Swallowing Support Team)にも所属し、患者さんの食支援に力を注ぐ。


かわむー
かわむー

現在、亀田総合病院で摂食・嚥下のリハビリテーションに取り組んでいらっしゃる渡慶次さんですが、言語聴覚士を目指すことになったきっかけを教えていただけますか?


渡慶次さん
渡慶次さん

高校生の時、進路説明会で言語聴覚士という職業を初めて知りました。「こんな仕事があるんだ!」と驚き、興味を持ったのがきっかけです。

実はそれ以前から、小学校や中学校でダウン症の友人と接する中で、小児の療育に関心を抱いていました。具体的なイメージはなかったものの、幼い頃から漠然と「発達支援に携わる仕事がしたい」と思っていたんです。

進路説明会で言語聴覚士について詳しく学ぶうちに、発達支援だけでなく、失語症のリハビリなど幅広い分野に関わることができる点にとても魅力を感じ、この道に進むことを決めました。


かわむー
かわむー

地元・沖縄の養成校を卒業された渡慶次さんですが、その後、亀田メディカルセンターで働くことを選ばれたきっかけは何だったのでしょうか。


渡慶次さん
渡慶次さん

亀田メディカルセンターとのご縁は、学生時代の実習がきっかけでした。

実習で訪れた亀田ファミリークリニック館山で、言語聴覚士の方が活躍している姿を目にしたのですが、その方はお子さんや親御さんと深く関わり、時には真剣に意見を交わし合う場面もありました。その熱意あふれる姿を見て、「私もこんな風に働いてみたい」と強く思ったのを覚えています。

就職先として亀田を選んだのは、実習で訪れて雰囲気を知っていたという安心感もありますが、何より「沖縄を出たい」という気持ちも大きかったです。

養成校進学の際は家庭の事情で地元を離れることができませんでしたが、就職ではどうしても新しい環境に挑戦したいという気持ちが強く、亀田を選びました。

就職後は亀田リハビリテーション病院に配属され、1年間経験を積みました。そして2年目からは亀田総合病院で働き始め、いまに至ります。


言語聴覚士としての第一歩

かわむー
かわむー

沖縄から千葉へと新しい環境に飛び込まれた渡慶次さんですが、言語聴覚士として実際に働き始めてからはいかがでしたか? 印象に残っているエピソードもあれば、ぜひお聞かせください。


渡慶次さん
渡慶次さん

最初に配属された亀田リハビリテーション病院では、高次脳機能障害の患者さんを多く担当しました。特に、失語症の方のリハビリテーションはとても難しく、頭を悩ませることが多かったです。

練習場面ではうまくいっても、ご家族が来られたときのコミュニケーションがまったく違っていて、「機能練習だけでは生活場面では十分ではない」と痛感しました。

印象に残っているのは、会社勤めをされていた患者さんとのエピソードです。リハビリ場面ではあまりお話しされなかったのですが、職場の方が面会に来られた瞬間、いきいきとお話しされる姿を目の当たりにしました。

その様子に驚くとともに、リハビリテーションの在り方や支援の方法について改めて考えさせられました。

1年目は戸惑いや失敗も多かったですが、それ以上にたくさんの学びがあり、貴重な経験を積むことができたと感じています。



かわむー
かわむー

1年目から、たくさんの試行錯誤と学びがあったのですね。2年目以降、亀田総合病院に異動されてからは、患者さんとの関わり方や働き方にも変化があったのではないでしょうか。その後の経験についてもぜひ教えてください。


渡慶次さん
渡慶次さん

亀田総合病院に異動してからは、摂食・嚥下のリハビリテーションに多く携わるようになりました。

脳卒中後に回復へ向かう方や、リハビリテーション病院ではあまり経験しなかった緩和ケアが必要な方など、さまざまな患者さんを担当させていただいています。

特に印象に残っているのは、緩和ケアを受けていたある患者さんとのエピソードです。その方は起き上がるのも辛い状況でしたが、「お茶が飲みたい」と希望されていました。ご家族も「誤嚥しても構わないから、本人の希望を叶えてあげたい」と強く願われていて、何とかその思いに応えたいと思いました。

最終的には、とろみをつけたお茶をほんの少し口に含んでいただき、味を感じてもらう形となりました。そのとき患者さんが「美味しい」とおっしゃったのが救いでした。ただ、本当にこれが患者さんの望んでいた「お茶」の形だったのか、自分の対応が最善だったのか、今でも心に問い続けています。

この経験は「患者さんの希望や幸せとは何か」を深く考えるきっかけとなり、自分のリハビリテーションに対する姿勢を見直す機会となりました。今でも忘れられない、大切な出来事です。


摂食・嚥下のリハビリテーション

かわむー
かわむー

現在、渡慶次さんが力を入れて取り組まれていることについて教えてください。


渡慶次さん
渡慶次さん

現在、摂食・嚥下サポートチーム(SST:Swallowing Support Team)の活動に力を入れています。

この活動では、週に1回カンファレンスを開き、嚥下障害が重度の患者さんへのリハビリ方法や申し送りの注意点などを話し合っています。

また、患者さんの食事介助をする際に、統一したケアを実施できるようにコミュニケーションツールの作成も行っています。

看護師や補助スタッフのみなさんが誰でも同じように対応できるように、姿勢やとろみの有無といった情報を一目でわかるように工夫しています。


SSTの活動が本格化したのは2023年からで、月に1度の病棟ラウンドも同時に始まりました。この活動が少しずつ病棟に根付き、患者さんにとってより良い支援につながることを願っています。


かわむー
かわむー

摂食・嚥下のリハビリテーションに取り組まれる中で、渡慶次さんがやりがいや喜びを感じるのはどんな瞬間ですか?

また、難しさや大変さを感じる場面もあれば、ぜひお聞かせください。


渡慶次さん
渡慶次さん

一番やりがいを感じるのは、患者さんが食べることができて、ご本人やご家族が満足される瞬間です。

経口摂取が難しい患者さんの場合、私たちの介入中だけが摂取の機会になることも少なくありません。そのため、その時間が患者さんやご家族の希望を叶えるものとなるよう、一つひとつ丁寧に向き合っています。

一方で、悩ましいと感じる場面もあります。

たとえば、小児の患者さんでは、お母さんがその子の食べさせ方を一番よく理解しているかと思うのですが、その方法がリスクを伴う場合もあります。長年続けてきた方法を急に変えるのは難しく、肺炎を防ぐための注意点をお伝えするのが精一杯になることもあります。

また、呼吸器が必要なお子さんや気管切開をされているお子さんの場合、病院では安全に対応できても、ご自宅でのケアや摂取をどう支えるかが大きな課題です。

それでも、退院後には資料を作成してお渡ししたり、外来でのサポートを通じて少しでも力になれるよう工夫を重ねています。

新たな挑戦に向けて

かわむー
かわむー

患者さんやご家族の希望を叶えるために、一つひとつ丁寧に向き合われている姿勢が素晴らしいと感じました。

渡慶次さんが、これからさらに挑戦してみたいことはありますか?


渡慶次さん
渡慶次さん

口腔ケアの重要性を伝える教育活動や、地域の皆さんと連携した支援活動に力を入れていきたいです。

以前参加した地域支援の取り組みで、パーキンソン病など神経難病を抱える患者さんが集まり、嚥下についてお話しする機会がありました。

これは役場の方が企画され、私が講師として参加したものです。地元の方々が身近に感じられるような場を作ることができて、とても意義深い時間でした。このような取り組みを復活させ、もっと広げていけたらいいなと考えています。

また、老健施設で嚥下の指導を行うことにも挑戦したいです。

地域や施設、病棟と連携しながら、嚥下に問題を抱える方の生活を支えるために、自分ができることを模索し続けたいです。



リハビリに励む方へメッセージ

かわむー
かわむー

最後に、リハビリテーションに取り組まれている当事者の方々へ、渡慶次さんからぜひメッセージをお願いできますでしょうか。


渡慶次さん
渡慶次さん

リハビリに励まれている皆さんへ、ぜひお伝えしたいことがあります。それは、「食べたい」という気持ちや願いを、どうか私たちに届けてほしいということです。

私は、摂食・嚥下機能障害に携わる専門職として、どのようにすれば食べたり飲んだりする喜びを取り戻していただけるのか、諦めずに考え続けたいと思っています。

たとえ難しい状況であっても、言語聴覚士が関わるひとときだけでも、その願いに少しでも寄り添えるよう最善を尽くしたいと考えています。


「食べたい」という気持ちは、患者さんにとって大切な希望であり、私たちにとっても向き合う大きな原動力です。

その願いをどうか遠慮せず、看護師さんやリハビリスタッフに伝えてください。私たちが一緒にできることを見つけ、少しでもその希望を叶えられるよう全力でサポートします。



かわむー
かわむー

食べることは、生きる力そのもの。そして、それを支えるのは「食べたい」という思い。渡慶次さんのお話から、その思いを実現するための情熱と温かさが強く伝わってきました。

言語やコミュニケーションの支援を通じた「人間らしさ」、そして摂食・嚥下の支援を通じた「命をつなぐ力」。渡慶次さんのお話を伺いながら、言語聴覚士さんは、人としての豊かさを支える素晴らしいお仕事だと改めて感じました。

これからも患者さんとご家族の希望に寄り添い続ける渡慶次さんの挑戦を、心から応援しています。

本日は貴重なお話をお聞かせいただき、ありがとうございました。



かわむー
かわむー

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以上、今回は千葉県鴨川市にある亀田総合病院で、摂食・嚥下のリハビリテーションに携わる言語聴覚士の渡慶次かおりさんを紹介しました。

ひとりでも多くの方に、渡慶次さんの素敵な想いと魅力がお届けできれば幸いです。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

今後ともリハノワをよろしくお願いいたします!


かわむーでした。

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