みなさんこんにちは、リハノワのかわむーです!
本日は、ケアのデザインストアねんりんと代表で一級建築士の簾藤麻木さんをご紹介します。
ケアのデザインストアねんりんは、日本全国の工房・製造企業と連携し、既存の福祉用具店では取り扱いのない「ケアが必要な方も使いやすい日用品」をオンラインショップにて取り扱っています。
本記事では、ケアのデザインストアねんりんで取り扱われてる商品や代表・簾藤麻木さんのこれまでの歩み、実際に使用した方の声をご紹介したいと思います。
「ねんりん」について
コンセプト
一級建築士である簾藤麻木さんが代表を務められる「ケアのデザインストア ねんりん」は、既存の福祉用具店では取り扱いのない機能×デザインに特化した商品を中心に、普段使いからギフトにまで使える製品を全国各地から取り揃えています。
ケアに多様な選択肢をつくることをミッションとし、日本全国の工房・製造企業や良質な商品とユーザーを繋げる活動をされています。
作業療法士が監修した使いやすく美しい商品は、元気な方もサポートが必要な方も、どんな方でも使いやすい「ユニバーサルデザイン」です。使いやすさを主張せず、そっと暮らしに馴染むのも魅力の一つです。
「明日を使いやすく、楽しく、快適に」
ねんりんでは、人が主役のケアのものづくりを目指しています。
◆ 「ねんりん」の名前の由来
ある日、簾藤さんは折れてしまったトチの木の年輪の美しさに心を惹かれました。人もこのトチの木のように、年齢を重ねれば重ねるほど素敵になっていくもの。例え、辛いことや身体に不自由なことが増えたとしても、それら全てを含めて歳を重ねることに美しさを感じられる私や社会でありたい。そんな思いから、「ねんりん」と名付けられたそうです。
商品の紹介
実際に「ケアのデザインストアねんりん」で取り扱われている商品の一部を紹介します。
(オンラインショップはこちら)
◆ 希望の箸
桜の木を使って作られた、口当たりが優しいお箸です。サイズは大・小2つあります。本商品を制作されている福井県のMiyabowさんは、なんと10年もの時間をかけ、医学書を読み込みながら手の構造や指の動きを徹底的に研究され、現在の形に行き着いたそうです。指に接する面積が広いので、手の力を効率よく箸先に伝えることができます。手の力が弱い方や、手がふるえる方でもしっかりと持つことができます。
◆ 食事用スカーフ
ストールのように首にかける「お食事用エプロン」。薄くて上品な生地にプリーツをあしらい、軽やかなデザインでファッションアイテムのように使用することができます。汚れが染み込みにくい撥水加工が施されているため、お食事汚れが気になるお洒落着にも合わせやすいデザインです。
◆ てまる汁椀
漆を塗って拭き取る作業を繰り返して木目を活かす「拭き漆」で仕上げた汁椀です。サイズはSとMの2種類あります。底に窪みを作ることで指がかりとなり、片手でも持ち上げやすいデザインになっています。木地は軽くて温もりのあるトチ材を採用しています。
◆ てまるスプーン
綿密な木肌を持つトチ材で作られたスプーンです。拭き漆と呼ばれる工法で仕上げることで、木目が感じられる仕上がりになっています。すくい部の幅と深さと厚さのバランスが素晴らしく、とても優しい口当たりです。
◆ 磁器 カレー皿
磁器で出来たカレー皿で、サイズはSMLの3種類あります。少し重みがあることで安定感に優れ、縁に返しを作ることで掬いにくい汁気の多いお料理も食べやすくなっています。返しのデザインはとても自然で、スプーンを入れてみて初めて、その心配りに気づくほどです。
ユーザーの声
実際にねんりんの商品を使用した方々に、感想を聞いてみました!
◆ 宮地 紘樹さん
医療法人社団綾和会 掛川東病院院長 / 静岡大学客員教授 / 医師
実際にねんりんの商品を手に取り、見た目や質感の喜びはもちろん、普段は介助を受けている人も1人でご飯が食べれるようになるなど、ADL(日常生活動作)の向上が期待できると感じました。
介助の負担が軽減すると、介助者もその時間を他のことに使えることができますし、色んな価値が生まれていくかと思います。食べやすさや見た目の良さから食がすすみ、本人が「美味しい!」と食べてくれるのは、介助者にとっても励みとなることでしょう。
ぜひ、作り手さんの熱い想いがつまったプロダクトが、それを求める多くの人の元に届いてほしいです。
簾藤さんや思いのある作り手さんとの距離が近くなる努力は、医療現場側からもするべきだなと感じました。 そのような場を模索しつつ日々過ごしていきたいと思います。
◆ 服部ちさとさん
医療法人社団綾和会 掛川東病院 在宅診療部主任
現在、私の祖母は介護が必要になりそうな状態なのですが、こだわりが強く「杖なんか持ちたくない」と福祉用具の使用を拒んでいます。
しかし、自然と生活に溶け込んでいるねんりんさんの商品ならば、これから介護が必要になった時も使ってもらえるなと思いました。本当にオシャレで使っていて気分が明るくなるので、ぜひ色んな人に手に取って欲しいです。
見た目はそのままで様々な食事をやわらかくできる調理家電「デリソフター」は、味は変わらないのに、す〜っと口の中に入ってきてとろけるのがとても魅力的です。本当に噛まなくていいので驚きました。
人が主役でいつづけることのできる福祉用具や介護用品の存在は、本当にありがたいです。
◆ 新美杏介さん
デイサービスIKIGAI 管理者(愛知県西尾市)/ 理学療法士
リハビリ特化型デイサービスである当事業所では、「希望の箸」と「てまる汁椀」をお食事のみならずリハビリの時間にも多用させて頂いております。
希望の箸は、磁石で強度も変更できるので、手や指に障害を患われた方がスプーンやフォークから箸へ移行する際のとってもよい練習になっています。
てまる汁椀は、腕や手に麻痺のある方でも、麻痺側で滑らずにしっかりと握ることができます。プラスチック製の茶碗から陶器の茶碗への移行段階のリハビリで使わせて頂いております。
機能性に加え見た目も質の高いものを使うことで、利用者さんのモチベーションもアップしているように感じます。
代表・簾藤麻木さん
一級建築士である代表の簾藤さんに、現在の活動を始めることとなったきっかけ(原体験)を伺いました。
◆ 簾藤麻木(すとう・まき)さん
一級建築士事務所nenlin 代表
<資格>
一級建築士、福祉住環境コーディネーター、福祉用具専門相談員
神奈川県生まれ。早稲田大学大学院建築学専攻修了。2008年に株式会社梓設計に入社し、有料老人ホーム・保育園・学校・庁舎などを担当。2018年にnenlinを設立。医療福祉施設の内装デザインから福祉用具の企画・デザインを手がけ、2021年ケアのデザインストアをリリース。「ケアに多様な選択肢を」をミッションに全国の医療福祉現場に出向き、現場の声から本当に必要とされるケアのものづくりに挑む。
きっかけは、祖母の介護経験にあります。
私が7歳の時に、パーキンソン病を患った祖母の介護がはじまりました。当時、木造の2世帯住宅で一緒に住んでいたのですが、在宅介護が始まり祖母が使いやすいものを探そうにもあまりにも選択肢がなく、家中がプラスチックだらけになっていきました。
全般的にものすごく主張した道具が多く、あっちは緑、こっちはオレンジとなっていまい、なんだか落ち着かない状態。祖母の好みもライフスタイルも正直なところ二の次で、病院でも施設でもない、自分の全く知らない異様な空間に思えたのでした。
道具によりすごく便利になったはずなのに、便利になればなるほど家の中が快適じゃなくなっていく光景を目にした私は、幼いながらに「この変な感覚はなんだろう」と違和感を覚えるようになります。
お祖母様ご自身は、福祉用具や介護用品についてどう感じていらっしゃったのでしょうか。
祖母自身、福祉用具の導入や改修に対しては抵抗感をもっていたと思います。
なかでも、「食事用のエプロン」には特に抵抗があったようでした。もともとオシャレ好きで、みんなで食事をすることが好きだった彼女が、食事用エプロンを着用することが嫌で出かけることを拒み、部屋に引きこもるようになってしまったのです。
そんな祖母のために、私は祖母のお気に入りのハンカチを使ってエプロンを作りました。そのエプロンを渡すと、祖母はものすごく喜んで身につけてくれるようになったのです。
孫が作ってくれたというストーリーや好みのハンカチだったというのはあったかもしれませんが、同じ機能・便利さなのに、もの一つでこんなにも彼女に変化があるんだと、当時小学生だった私はとても驚きました。
プロダクトの作り一つで、ポジティブにもネガティブにもなることを実感した時、作り方を変えることで、介護はもっと良く出来るかもしれない!生きる力を取り戻せるかもしれない!と、考えたのでした。
ねんりん誕生秘話
幼い頃から良質なプロダクトを作ることで介護業界を変えていきたい、と熱い思いを持っていらっしゃったのですね。とっても素敵です!
介護業界の課題に取り組むため、まずはじめに建築の道を選ばれたのはなぜだったのでしょうか?
私の中で、プロダクトも空間作りも実はあまり境界線はないと考えています。ちょっとした気遣いで、人の生活や暮らしを大きく変えることができるんです。
介護にまつわるプロダクトから空間まで全てに関わっていきたいという構想自体は、高校生の進路を決める時には既にありました。
父親が木造住宅を手掛ける建築士だったということや、建築の影響で祖母が出来ないことが増えていく場面も幾度となく見てきたことから、まずは空間全体に関わることのできる建築から学ぼうとその道を選びました。
大学卒業後は設計事務所に入社し、約10年間、建築士として大きな建築の設計に従事しました。
将来的には手に触れられる小さなプロダクトもやっていきたいという思いをもちつつ、まずは大きなところ(空間)からアプローチしようと建築の道に進まれたのですね。
一級建築士の資格試験にも合格され、建築士として素晴らしいキャリアを歩まれていた簾藤さんですが、やはり10年たっても当初の思いは変わらなかったのですね。
設計事務所で建築士として働くなかで、私が本来しっかりと関わっていきたいエンドユーザーとの距離について考えるようになりました。
大きな建築の設計に関わる面白みはあるものの、私が建築士を目指したきっかけでもある「エンドユーザーの力になりたい」という本来の強い想いは、大きな組織ではどうしても叶えづらい状況がありました。そのため、思い切って4年前(2018年)に会社を退職。一級建築士事務所nenlinを立ち上げました。
退職後、早速ユーザーさんが直接手に触れることのできるプロダクトのリサーチを開始しました。すると、全国各地には熱い想いをもって介護のものづくりに励む職人さんがたくさんいることが分かってきたのです。
当初は自分でプロダクトを作ろうと思っていた私ですが、それらの製品の魅力に心を奪われたと同時に、こんなにも良い製品が多くのユーザーには届いていないことに課題に感じるようになりました。
全国の素晴らしいものづくりをされる方々のプロダクトや想いを知る場所をつくり、ユーザーと繋いでいくことこそが必要なのではないか、と考えました。繋がる場ができ市場が広がっていけば、ユーザーに選択肢を増やせるし、ユーザーの声も反映されやすくなる。ひいてはそれが、業界の発展に寄与できると思ったのです。
福祉用具に選択肢ができれば、日常での違和感が消せれば、介護がはじまっても、これまでと同じ暮らし・日常が繋がっていくのではないかと考えました。
2021年夏、オンラインショップ「ケアのデザインストアねんりん」を開設しました。
今後の挑戦
最後に、簾藤さんが今後チャレンジしていきたいことや、未来に思い描くことがあれば教えて下さい。
全国の作り手さんがケアの必要な方も使えるような商品を作るのに、これまでたくさんの時間を要してきました。
ものづくりと医療福祉の現場に距離があるため、作り手さんが身体や介護に関する知見を得ること、専門家や当事者からフィードバックを得ながら製品をブラッシュアップするのに長い時間がかかったのです。
そのため、私は「人とものづくりのプロが気軽に集える場」を作りたいと考えています。
現場の声がもっとものづくりと近くなる場所をつくり、現場に求められる良質な製品や空間を生み出すことで病気や障害を抱えても自分らしく生きることを諦めない社会をつくっていきたいです。
ねんりんでは、ケアのモノづくりに興味のある方や、同じ方向を向いて一緒に歩んでくださる方の応援をお待ちしております。一緒に、新しいケアのものづくりを探究していきましょう。
ねんりんさんの魅力的な商品や、ケアとものづくりに懸ける熱い思いが、日本そして世界中の人に届いてほしいと心から思いました。
簾藤さんは、「ここ数年ねんりんを広める活動を続けてきたなかで、お子さんや介護に備える方々への教育に繋がることも分かってきた」とお話されていました。ぜひ今後も、そのような世代の方々にアプローチできるような機会を増やしていきたいですね。
リハノワとしても、引き続き「ケアのデザインストアねんりん」さんの活動を応援させていただきます。
もし、ねんりんさんの活動を応援したいという方がいらっしゃいましたら、リハノワのサイトからコメントを送っていただくか、下記にねんりんさんのサイト・SNSを掲載しておりますのでそちらからお問い合わせ下さい。
簾藤さん、本日はありがとうございました。
事務所概要
■ 一級建築士事務所 nenlin
代表 甘粕麻木(旧姓:簾藤麻木)
■ 開設
2018年7月1日
■ 所在地
〒107-0062
東京都港区南青山7-3-6南青山HYビル 7F(荒井倶楽部内)
■ 業務内容
・福祉用具・関連備品のコーディネート
・建築設計(企画・設計・監理)
・福祉用具の広報
・商品企画・デザイン・アドバイザリー
・オンラインストアの運営
■ 加盟
一般社団法人 東京建築士会
一般社団法人 介護事業操練所 研究員
■ 関連サイト・SNS
・公式HP
・オンラインショップ
写真提供=ひろし
以上、本日はケアのデザインストア ねんりんと代表の簾藤麻木さんを紹介させていただきました。
一人でも多くの方に、ねんりんと簾藤さんの素敵な想いと魅力がお届けできれば幸いです。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
今後ともリハノワをよろしくお願いいたします!
かわむーでした。
この取材は、ご本人から同意を得て行なっています。本投稿に使用されている写真の転載は固くお断りいたしますので、何卒宜しくお願い申し上げます。
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