地域に溶け込み「暮らし」を支える、シンクハピネス|東京都府中市

みなさんこんにちは、リハノワのかわむーです!

今回は、東京都府中市で訪問看護ステーションと居宅介護支援事業所を運営しながら、カフェの運営などコミュニティ事業を展開する、株式会社シンクハピネスさんを取材しました。

本記事では、地域でその人らしく暮らし続けるためのさまざまな取り組みや、実際のご利用者さんの声を紹介します。

シンクハピネスとは

2014年に創業した株式会社シンクハピネスは、東京都府中市を拠点に「医療・福祉」と「コミュニティ」事業を展開しています。訪問看護ステーションと居宅介護支援事業所を運営しながら、コミュニティカフェの運営やアパートの空き部屋を活用した居場所づくりに取り組んでいます。「“いま”のしあわせをつくる」というミッションを掲げ、医療福祉の「専門職」として、街で暮らす「住民」として、両方の視点を大切にしながら地域に溶け込み活動しています。

シンクハピネス(Sync Happiness)という名前の由来には、しあわせを人から人、人からまち、まちから人へシンクロ(同期)させたいという想いが込められています。

医療福祉の専門職として

訪問看護ステーション

医療・福祉事業では、「LIC(リック)訪問看護リハビリステーション」と「LIC居宅介護支援事業所」を運営しています。「心身がどんな状態でも、その人らしい生活を選択できる」ということをテーマに、医療の高い専門性だけではなく、その人の「暮らし」をどうみるかを大切にしながら活動しています。

LIC訪問看護リハビリステーションには、看護師10人、理学療法士4人、作業療法士1人、言語聴覚士1人が在籍し、「訪問看護」「訪問リハビリテーション」「精神訪問看護」を提供しています。 神経難病や終末期など医療依存度の高い方を在宅で積極的に看ることで、最後までその人らしく地域で暮らし続けることをサポートしています。

LIC訪問看護リハビリステーションの所長で看護師である黒沢さん(左)とシンクハピネス代表の糟谷さん(右)

リハビリテーション

LICの訪問リハビリテーションでは、リハビリ専門職である理学療法士、作業療法士、言語聴覚士が、利用者さんの自宅に伺い、本人や家族が望む暮らしを実現するためのリハビリテーションを実施しています。失われた機能の回復を目指すだけではなく、その人の生活スタイルに合わせた動作の獲得を目指しています。

また、管理栄養士と言語聴覚士が連携しながら「食べるリハビリテーション」にも力を入れています。本人やご家族としっかりと対話をしながら、より良い方法を一緒に導き出します。

いち地域住民として

コミュニティ事業では、医療福祉の専門職が、地域で暮らす人々にフラットにつながることのできる生態系づくりにチャレンジしています。駅前商店街でコミュニティカフェ「the town stand FLAT(フラットスタンド)」を運営したり、カフェの隣にあるアパートの空き部屋を活用して、さまざまな人やモノ、コトが集まる「たまれ」というコミュニティの場を運営したりしています。

フラットスタンド

多磨霊園駅前商店街にあるthe town stand FLAT(フラットスタンド)

コミュニティカフェ「the town stand FLAT(フラットスタンド)」は、2016年に「まちのセカンドリビング」を目指してオープンしました。毎週火曜日から土曜日の午後に営業(不定期で夜営業)しており、日替わりでお店に立っている人が変わります。カフェで飲み物や軽食が楽しめるほか、2階はレンタルスペースにもなっています。定期的にイベントを開催したり、ポップアップストアやレンタルスペースとして貸し出したり、地域の医療福祉に関わる専門職の勉強会が開催されるなど、まちとつながる「出入口」として運営されています。

カフェで販売されているお菓子やコーヒーは、就労支援事業所やたまれにあるお菓子工房で作られている。
水曜日のお店番は、LIC訪問看護ステーションに務める理学療法士のみづきさん。週4日は訪問看護ステーション、週1日はカフェで勤務している。
定期的にさまざまなイベントや勉強会が開催されるカフェの2階は、漏れ日が降り注ぐ居心地の良いスペースになっている。

たまれ

「たまれ(life design villege FLAT)」は、フラットスタンド裏にある築40年のアパートの空き部屋を、多様な方々が活用するコミュニティの場です。

たまれには、子どもたちが集うアトリエや、学生が運営するコミュニティスペース、お菓子工房、オフィス、お店など、さまざまな人やモノ、コトが集まっています。また、年に一度「たまれ万博」という地域の文化祭が開催されます。

たまれは、場であり、活動そのものです。まちのさまざまな人が集い、ゆるくつながることを楽しんでいます。多様な文化や価値観が集まるからこそ、「あそび」が生まれ続けています。

子どもたちのためのあそびのアトリエ「ズッコロッカ」。毎週水曜日にオープンしている。
運営するのは、学校の図工の先生と音楽家。ここに来てくれた方々と一緒に「〇〇しよっか!」と、子どもたちが遊びを通じた自由な表現ができる場所になっている。
ズッコロッカでの様子
ズッコロッカでの様子
大学生が運営する中高生のサードプレイス「posse」
お菓子工房「Laboratory Lantern」

利用者さんの声

かわむー
かわむー

実際に、LIC訪問看護ステーションの利用者さんのご家族であり、最近では、フラットスタンドでのイベントや地域活動のボランティアにもかかわられている「ひとみ」さんにお話を伺いました。

ひとみさん。2015年から約5年間、ご両親がLICの訪問看護・訪問リハビリテーションを利用。現在は、カフェでお茶をしたり、イベントをしたり、総合事業・通所型サービスC(※)をサポートしたりしている。

※総合事業・通所型サービスC:市町村の保健師等が公民館等で生活機能を改善するための運動器の機能向上や栄養改善等のプログラムを3~6か月の短期間で行うサービス


ひとみさん
ひとみさん

LIC訪問看護ステーションさんとの出会いは、知人からの紹介でした。2015年から母が、2017年からは父が訪問リハビリのお世話になりました。

母は脳出血により、身体に麻痺はないものの、半側空間無視(片方の空間にある物を見落としてしまう症状)という高次機能障害がありました。退院後から訪問リハビリを開始し、リハビリでは「コンビニに行くこと」を目標に、見落としてしまう部分をフォローしてもらいながら外出する練習をしたり、半側空間無視に対する練習を行ったりしていました。リハビリは本当に好きだったようで、毎回とても楽しみにしていました。

そんな母の様子を見て、父も「リハビリをやりたい!」といい、母の開始から約1年後に訪問リハビリを開始しました。父は肺の病気のため在宅酸素を使用しており、酸素を使うようになってからはあまり動いていなかったのですが、リハビリを始めてから徐々に体調が良くなり、自転車のカゴに酸素ボンベを入れてひとりで買い物に行ったり、犬の散歩に行ったりするようになりました。

酸素の必要な人にもできるリハビリがあること、そしてこんなにも効果が出ることにびっくりしました。リハビリのおかげで父の暮らしがみるみる変わり、リハビリの素晴らしさを実感しました。


ご両親のリハビリを担当していた理学療法士の糟谷さん(左)とひとみさん(右)


かわむー
かわむー

ご両親ともにLIC訪問看護リハビリステーションでリハビリを受けられていたのですね。楽しそうにリハビリに取り組まれていた様子や、実際に活動的になられたというエピソードも聞いて、改めて在宅でのリハビリテーションの重要性を感じました。


ひとみさん
ひとみさん

介護中は良いことばかりではなくて、ストレスがたまることもありました。「この状態がいつまで続くのだろうか」と辛くなった時期もありますが、そんなもやもやした気持ちは、担当理学療法士の糟谷さんが丁寧に引き受けてくれました。糟谷さんには、本当に感謝しています。

2018年に母が、2020年に父が他界してからは、訪問リハビリでの関わりはなくなりました。しかし、今でも時折カフェに遊びにいってお茶をしたり、カフェで唐揚げ弁当を作ってふるまったり、サービスCのお手伝いをさせてもらったりしています。もともと栄養士として働いていたことや、人とお話するのが好きなこともあり、楽しみながら関わらせてもらっています。

今後は、私の介護経験がもし誰かの役に立つのであれば、困っている人の手助けができるといいなと思っています。


かわむー
かわむー

訪問が終了してからもいろいろな形で関係性が続いているのがいいですね。医療・介護のサービスだけではなく、ゆるやかにつながり続けられる「余白」や「関わりしろ」の大切さを感じました。

経験者であるひとみさんの言葉だからこそ届くことはたくさんあると思います。ぜひ、いま介護中の方やこれから介護が始まる方にひとみさんの声が届いてほしいです。

ひとみさん、貴重なお話を聞かせてくださり、ありがとうございました。

ひとみさんの声をより詳しく紹介している記事はこちら

“いま”のしあわせをつくる

かわむー
かわむー

シンクハピネスさんでは、「“いま” のしあわせをつくる」というミッションを掲げています。

最後に、そこに込める思いや、そのために取り組んでいることについて代表の糟谷さんにお話を伺いました。


◆ 糟谷明範(かすや・あきのり)さん
株式会社シンクハピネス 代表取締役 / 一般社団法人 CancerX 共同代表理事 / 理学療法士
1982年生まれ、東京都府中市出身。2006年に理学療法士免許取得後、総合病院や訪問看護ステーションでの勤務を経て、2014年に株式会社シンクハピネスを創業。東京都府中市を拠点に「“いま”のしあわせをつくる」をミッションに、医療・福祉事業とコミュニティ事業を展開している。


糟谷さん
糟谷さん

私たちは、「自分自身、スタッフ、利用者・家族、まち・住民の “いま” のしあわせをつくる」ことをミッションに掲げています。働く中でワクワクした想いを抱けない職場に、魅力があるはずがないと私は思っています。

だからこそ、まずは「自分自身が笑顔でしあわせでいること」を大切にしています。自分がしあわせでいると、そのしあわせが家族や恋人、親しい人たちに広がり、それがさらに利用者や家族、そして関わる全ての人たちに届くと信じています。

専門職として人や街に対して何ができるか、そして、専門職という立場を捨てひとりの市民として人や街になにができるか、その両方の視点から考え、行動できるようになってほしいという思いがあります。



糟谷さん
糟谷さん

このミッションを実現するためには、スタッフ一人ひとりが「自分のしあわせな状態」を言えるようになることが必要です。そこで、人事制度の中に目標設定と振り返りができる仕組みを取り入れました。

会社の一員として、個人として、社会や地域に対して何をしたいか、それぞれの部門の中期計画と合わせて年に1回、書いてもらっています。それをもとに、各部門の管理者とともに年4回振り返りを行い、それぞれの「“いま” のしあわせ」について深堀りしていきます。

人はそれぞれに「違い」があります。同じコップがあったとしても、丸に見える人もいれば長方形に見える人も、赤やピンクに見える人もいれば、オレンジに見える人もいます。誰かは好きと思っても、別の誰かは嫌いかも知れない。

そういったお互いの違いを日頃のコミュニケーションの中から感じてもらいながら、自分や周りの人の「しあわせ」について思考し、地域におけるより良いケアやリハビリテーションにつなげていってほしいと願っています。


かわむー
かわむー

取材のときに感じたやさしい空気は、こうして一人ひとりが「しあわせ」に真摯に向き合い、丁寧に関係性を紡いでいるからなのだと感じました。

リハノワはこれからも、“いま”のしあわせをつくり続ける、シンクハピネスさんのご活躍を心から応援しています。

取材にご協力いただいた代表の糟谷さん、ヒトミさん、スタッフ・関係者のみなさま、本当にありがとうございました。


会社概要

■ 株式会社シンクハピネス
代表取締役 糟谷明範さん

■ 設立
2014年

■ 事業

・医療・福祉事業(訪問看護、訪問リハビリテーション、精神訪問看護、居宅介護支援)
・コミュニティ事業(カフェ運営、空きアパートを活用した居場所づくり)

従業員 (2024年8月現在)
・看護師:10人
・理学療法士:5人
・作業療法士:1人
・言語聴覚士:1人
・ケアマネジャー:1人
・事務:3人
・カフェ店員:1人

所在地
〒183-0015 
東京都府中市清水が丘3-29-5
TEL:042-302-2006
FAX:042-302-2007

■ アクセス

京王線「多磨霊園駅」から徒歩1分

■ 問い合わせ

こちらのフォームからお問い合わせくだい

■ 関連情報
会社HP
糟谷さんのX
LIC訪問看護リハビリステーションHP
フラットスタンド HP
たまれ Facebook


かわむー
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<関連記事・情報>

利用者さんの声
シンクハピネス代表・糟谷明範さん取材記事
糟谷さんの連載『境界線を曖昧にする(Blue Black MAGAZINE)

ぜひ合わせてご覧ください。


撮影:ひろし、山崎陽平


以上、今回は東京都府中市で訪問看護ステーションと居宅介護支援事業所を運営しながら、カフェの運営などコミュニティ事業を展開する、株式会社シンクハピネスさんをご紹介しました。

ひとりでも多くの方にシンクハピネスさんの素敵な想いと魅力がお届けできれば幸いです。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

今後ともリハノワをよろしくお願いいたします!


かわむーでした。

この取材は、施設から同意を得て行なっています。本投稿に使用されている写真の転載は固くお断りいたしますので、何卒宜しくお願い申し上げます。

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