みなさんこんにちは、リハノワのかわむーです!
今回は、熊本県熊本市にある武蔵ヶ丘病院で働く理学療法士の藤井廉さんを取材しました。藤井さんは、武蔵ヶ丘臨床研究センター(Musashigaoka clinical research center;MCRC)の主任研究員としても精力的に活動されています。
本記事では、藤井さんが理学療法士を目指したきっかけや臨床研究にかける想いについて紹介します。
理学療法士・藤井廉さん
◆ 藤井 廉(ふじい・れん)さん
武蔵ヶ丘病院リハビリテーション部課長 / 武蔵ヶ丘臨床研究センター主任研究員 / 畿央大学ニューロリハビリテーション研究センター客員研究員
<略歴>
1990年熊本県熊本市出身。2013年に理学療法士免許を取得後、群馬県館林市にある慶友整形外科病院に入職。2017年に武蔵ヶ丘病院転職とともに畿央大学大学院に進学し、臨床をしながら大学院での研究に力をいれた。2022年4月に武蔵ヶ丘臨床研究センター(Musashigaoka clinical research center;MCRC)を設立し、主任研究員に着任。現在は、九州大学の公衆衛生系大学院である医療経営・管理学講座に通いながら「臨床と研究の架け橋になる」ことをミッションに活動している。
両親の背中を追って
藤井さんが理学療法士を目指したきっかけは何ですか。
私は両親が理学療法士だったこともあり、幼少期から理学療法士という仕事に興味をもっていました。高校時代に進路選択するときもその気持ちは変わらず、理学療法の道に進むことを決意しました。
父親に理学療法士の養成校に進学したいことを伝えると、「お前に務まるもんじゃない」と理学療法士という仕事の厳しさなど、生半可な気持ちでできるものではないことを教えてもらいました。
話し合った結果、社会勉強を兼ねて、昼間は働きながら夜間部に通うことで了承をもらい、自らの意思で、当時父が教員を務めていた九州中央リハビリテーション学院を志望・進学しました。
日中はリハビリ助手として脳神経外科の病院で働き、夜は学校での勉強に励みました。
決して楽な道ではありませんでしたが、学生の頃から患者さんと触れ合うことができたのは非常に良い経験でしたし、学院では一生の仲間と出会うことができました。4年間の学生生活は、大きく私を成長させてくれたと感じています。
当時は厳しく感じたかと思いますが、お父さまの愛溢れるお言葉、とても素敵ですね。ご両親が理学療法士であるということ、そして養成校の教員であるということで、一般の学生とは違ったプレッシャーが藤井さんご自身にもあったかと思います。4年間その環境でやり抜かれたこと、本当に尊敬します。(私と同い年とは思えないほどしっかりされていて、本当にすごい…!)
免許取得後は、どのような道を歩まれてきたのでしょうか。
理学療法士免許を取得後は、養成校の先生の紹介で群馬県館林市にある慶友整形外科病院に就職しました。そこで3年間みっちりと修行することになります。
慶友整形は、整形外科の患者さんの入院、外来、そして医師と共同の臨床研究に力をいれている病院でした。入職して2〜3ヵ月後には研究計画を立案しデータをとり始めて、半年後には県の理学療法士学会で発表をしていました。職場全体が学びに対する熱量が高く、尊敬できる上司や同僚にたくさん刺激をもらいました。
3年ほど経ち、プライベートな理由から熊本に帰ることになりました。そのタイミングでちょうど大学院に行きたいと考えていたので、その想いを応援してくれる部長のいた、現在働いている武蔵ヶ丘病院へ入職することになります。
2017年から武蔵ヶ丘病院で働く傍ら、畿央大学大学院に入学。博士後期課程修了までの5年間、森岡周先生の研究室で痛みに関する研究に力を入れました。
2023年からは、九州大学の公衆衛生系大学院である医療経営・管理学講座に進学しました。
臨床と研究の架け橋
常に学ぶ姿勢をやめない藤井さんですが、現在の働き方についても教えてもらってよろしいでしょうか。
現在は、リハビリテーション部の課長と、MCRCの主任研究員を兼任しながら業務にあたっています。管理業務が5、研究業務が5といった割合で働いています。
2022年4月に設立したMCRCは、副理事長でリハビリ科医の田中先生のリハビリテーションに対する強い思いもあり、トントン拍子で話がすすみました。文部科学省へ提出する書類準備は大変でしたが、申請から部門の立ち上げまでは比較的スムーズでした。病院全体がやりたいことを後押ししてくれる環境なのは、とてもありがたいことです。
現在、MCRCではリハビリテーション研究のみならず、看護部や薬剤部、放射線部などの院内部門や、さらには外部の研究機関や企業と連携しながら、領域横断的にさまざまな研究プロジェクトを展開しています。
臨床と研究の架け橋になれるように、今後さらに力を入れていきたいと思っています。
臨床研究の輪を広げて
藤井さんが働く中でやりがいを感じる瞬間や、大切にしていることがあれば教えてください。
いま、仕事をする中でやりがいを感じるのは、研究サポートで関わったスタッフに、「研究って楽しい」「またやってみたい」など、研究の魅力が伝わった時です。自分の研究の成果が出たときよりも大きな喜びを感じます。
また、MCRCの目玉企画として、昨年から院内で研究発表会を開催しています。300人の職員のうち約半数が参加するなど、かなりの盛り上がりをみせています。
その時に、いろんなテーマを多職種で議論できたのがすごく嬉しかったです。これまであまり研究に触れてこなかった方が研究を好きになったり、興味をもってくれたりした時に、この上ないやりがいを感じました。
研究と臨床の架け橋として活動している今、大切にしているのは、そのバランス感です。研究は、「臨床現場でどのように活用する(される)のか?」という視点がとても重要だと考えています。
そのため、現場スタッフと研究スタッフそれぞれがお互いを理解し、バランスをとりながらベストな結果を出していくことに注力しています。
臨床と研究、その架け橋となるためには、お互いの共通言語や現場感、コミュニケーションや調整力が必要になるかと思います。そのバランスを上手にとりながら進められる人は決して多くありません。藤井さんのこれからのご活躍が、本当に楽しみです。
挑戦とメッセージ
最後に、藤井さんが今後チャレンジしたいことや、若手セラピストへ向けたメッセージなどあれば教えてください。
2022年にMCRCが立ち上がりましたが、正直、立ち上げるだけなら誰でもできます。そのため、決して現状に満足することなく、今後はその価値をどれだけ高めていけるか、挑戦していきたいと思います。
研究費をとって、仲間を集めて、価値を見いだせるような組織にしていきたいです。
また、現在、私は公衆衛生系大学院にも通っているので、そこで学んだビックデータ解析などのスキルをMCRCや病院の発展にも繋げていきたいと考えています。そのスキルを研究のみならず、病院運営や管理業務にもフィットさせることで、医療現場がより良くなるように行動していきたいとも考えています。
若手セラピストのみなさんには、「とにかく手を動かそう」ということを伝えたいですね。
これは、自身のこれまでの研究活動を通じて体感したことなのですが、やる気というのは行動の結果起きるもの。「やる気がでないから…」「うまくいくかわからないから…」など足踏みをしてしまう人には、とりあえず行動してみて、トライアンドエラーを繰り返してみることをおすすめします。
失敗できること、教えてもらえることは若手の特権。このようなマインドを持つことで、何事にも臆することなく、前向きな気持ちでさまざまなことにチャレンジができると思っています。
最初のうちは躊躇することもあるかもしれませんが、「まずは手を動かす」。これを意識してもらいたいなと思います。
自身の「興味」や「好き」を追究し続ける藤井さんの目が、本当にキラキラとしていたのが印象的でした。
圧倒的な熱量は、人を呼び、周囲を巻き込みながら物事を推進させていくのだということがよく分かりました。臨床と研究に力を入れていきたいセラピストや医療従事者の方には、ぜひ藤井さんの存在を知っていただきたいです。
リハノワはこれからも、藤井さんのさらなる挑戦を心から応援しております。
本日は貴重なお話をたくさんお聞かせいただき、ありがとうございました。
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撮影:松原亮太
以上、今回は武蔵ヶ丘病院で働く理学療法士の藤井廉さんを紹介させていただきました。
一人でも多くの方に、藤井さんの素敵な想いと魅力がお届けできれば幸いです。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
今後ともリハノワをよろしくお願いいたします!
かわむーでした。
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