みなさんこんにちは、リハノワのかわむーです!
今回は、熊本県熊本市にある医療法人田中会 武蔵ヶ丘病院でリハビリテーション科専門医として活躍する田中慎一郎さんを取材しました。
本記事では、田中さんがリハビリ科医を目指したきっかけや、リハビリテーションに対する想いについて紹介します。
医師・田中慎一郎さん
◆ 田中慎一郎(たなか・しんいちろう)さん
医療法人田中会 副理事長/一般社団法人ユニバ代表理事/藤田医科大学リハビリテーション医学講座客員教員
<略歴>
1982年熊本県熊本市出身。東京医科大学医学部卒業後、東京医科大学病院で初期研修を修了。熊本大学整形外科での研修を経て、2012年より藤田医科大学リハビリテーション科に入職し、リハビリテーションについて学びを深める。福岡みらい病院で1年間勤務した後、2018年に父親である田中英一氏が理事長を務める医療法人田中会 武蔵ヶ丘病院に参画。現在は「障害と向き合って生きる全ての人々の人生を豊かにする」をモットーに、副理事長として病院経営に従事する傍ら、リハビリ科医として人材育成や研究、社会活動に力を入れている。
<資格>
日本リハビリテーション医学会リハビリテーション科専門医、日本スポーツ協会スポーツドクター、障がい者スポーツドクター
リハビリ科医やスポーツドクターとして、臨床や病院経営、会社運営など多岐にわたりご活躍中の田中先生ですが、もともと医師やリハビリテーション科を目指したきっかけは何だったのでしょうか。
私の実家は、曽祖父の時代から続く耳鼻科で、2代目である祖父が医療法人田中会 武蔵ヶ丘病院を開業しました。
両親や従兄弟など、親族は医師ばかりのいわゆる医師家系で、ものごころついた頃には自然と医師を目指すようになっていたと思います。
私自身は小学校3年生からラグビーをしていたこともあり、整形外科医やスポーツドクターに興味をもっていました。
医学部入学時は整形外科への入局を考えていましたが、5年生の病院実習でいろんな現場を経験したことで少しずつ気持ちが揺れ動きます。
整形外科の手術は素晴らしいと思った一方で、失敗したくないという手術への恐怖が強くなり、自分には向いていないと思いました。その後にまわったリハビリテーション科は、患者さんの人生に伴走するとてもポジティブな科で、自分にはあっているのではないかと感じました。
ラグビーと同様に、リハビリテーションではチームプレイが大切となります。患者さんや多職種がチーム一丸となって、本人のありたい姿に向かって歩んでいくことに魅力を感じました。
初期研修が終わって2年間は整形外科を学び、その後、リハビリテーションに力を入れている藤田医科大学病院に入りました。
リハビリテーションの道へ
藤田医科大学病院リハビリテーション科で研修をするなかで、特に印象に残っていることなどがあれば教えてください。
藤田医科大学病院に勤務している時、私は20代の脊髄損傷の患者さんの主治医になりました。彼と私は年齢も近く、いろんな話をしました。
その中で、退院後のリハビリ問題に直面します。退院後もリハビリを継続するのが好ましいけれど、一体どこで、どんなリハビリができるのだろうか。医療保険や介護保険では救えない、いわゆる「リハビリ難民」の問題に対し、私はいろいろと調べました。
そして、脊髄損傷者専門トレーニングスタジオのJ-workoutや、脳梗塞リハビリセンターなどの保険外リハビリ施設の存在を知ります。
この頃から少しずつ視野が広がり、予防医療や疾患管理の重要性、セラピストの人材育成など、リハビリ業界のあらゆる課題を意識するようになりました。
熊本での新たな挑戦
リハビリ科医の研修を終え、2018年に武蔵ヶ丘病院に戻ってこられた田中先生ですが、現在、力を入れて取り組んでいることなどがあれば教えてください。
2018年に熊本に戻って以来、リハビリテーション科をさらに盛り上げられるようにさまざまな活動を行ってきました。
大学病院や保険外リハビリ施設などと提携して「留学制度」を導入したり、現場スタッフの困りごとや悩みごとに対してアドバイスをおこなう「臨床支援員」の配置をすすめたりして、セラピストの人材育成に力を入れてきました。また、最新の治療方法を取り入れるために、リハビリ機器などの設備投資もおこないました。
さらに、「武蔵ヶ丘臨床研究センター(Musashigaoka Clinical Research Center:MCRC)」も設立しました。今後は、リハビリテーション医療をはじめとしたさまざまな研究関連事業にも力を入れていきたいと考えています。
私自身は、ここ1年ほどは副理事長として、病院経営など法人の仕事をメインにしつつ、週1回の外来を担当しています。
短期間でこれだけ大きな変化をたくさん起こしており、本当に素晴らしいですね。リハビリ科医として働くうえで、田中先生がやりがいを感じる瞬間はどういった時でしょうか。また、リハビリテーションを提供するうえで大切にしていることもあれば教えてください。
不慮の事故や病気などで障害を抱えた患者さんが、社会復帰に向けて一歩一歩、前を向いて進みはじめることができた瞬間や、目標としていたことを達成したときの笑顔を見れた瞬間にやりがいを感じます。近くでサポートしていると、私の方が患者さんから元気をもらうこともたくさんあります。
患者さんと関わる際に大切にしていることは、予後予測と医療の限界についてしっかりとお話することです。そのうえで、今できる最大限のことはやるし、選択肢を広げられるように一緒に考えます。
社会へのアプローチ
田中先生が考える「リハビリテーションとは」何でしょうか。
病気や怪我により一度はどん底を経験すると思うのですが、そこから未来に向かってポジティブにもっていけるようにするのがリハビリテーションです。
「どんな困難があったとしても、その後の人生が少しでも明るくなるようにー。」私はそんな想いで、患者さん一人ひとりに向き合っています。
最近では、リハビリテーションの行き着くところは「町づくり」なのではないかとも思っています。
医師として普段関われるのは入院している方や外来で通ってこられる方なのですが、今後一番変えていく必要があるのは、町だと思うんです。
障害や病気の有無、さらには年齢や性別に関係なく、すべての人が生活するその地域を、住みやすく、居心地の良い場所にすることが大切だということですね。とても重要なことだと思います。
私のモットーは、「障害と向き合って生きる全ての人々の人生を豊かにする」ことです。
病院で医学的なリハビリテーションを提供することはもちろん大切ですが、社会でリハビリテーションを実践していくことも同じくらい大切だと考えます。
その思いをカタチにするために、私は2022年に一般社団法人ユニバを設立しました。 ユニバでは、 遊びを通じて障害者の社会参加を促進する活動をおこなっています。
私はこれからも、さまざまな視点をもってリハビリテーションを実践していきます。
未来に思い描くこと
最後に、田中先生が今後挑戦したいことなどあれば教えてください。
まず、病院に関しては「田中会といえばリハビリテーション」と認知してもらえるように、リハビリテーション科をさらに強化していきたいです。
リハビリテーションは、運動も失語も嚥下も「自主練習」がとても大事になるので、自主的なリハビリが推進できるような仕組みづくりや施設の構築も視野にいれています。
治療の選択肢を増やし、質をあげる。そのためにできることを常に考え、実行していきます。
業界に対しては、リハビリ難民の問題に向き合っていきたいと考えています。オンラインなどデジタルも取り入れながら、課題解決に資する施策を打っていきます。
田中先生、素敵なお話をお聞かせいただきありがとうございました。
すべては障害と向き合って生きる全ての人々の人生を豊かにするために、選択肢を増やし、質を上げ、そして安心して暮らせる社会を築く。その熱いメッセージに心を打たれました。
先生は本当にパワフルで、お話していると自然と元気をいただきます。こうやっていつも、リハビリ患者さんを笑顔にしているのだなと感じました。
田中先生の熊本から社会を変える挑戦、これからも応援しております!
本日は貴重なお時間をいただき、ありがとうございました。
<関連記事>
・武蔵ヶ丘病院リハビリテーション部
・理学療法士/主任研究員・藤井廉さん
・理学療法士・田宮史章さん
・頸髄損傷後のリハビリに通う高橋尚子さん
ぜひ合わせて御覧ください。
撮影:松原亮太
以上、今回は熊本県熊本市にある武蔵ヶ丘病院でリハビリテーション科専門医として活躍する田中慎一郎さんを紹介させていただきました。
一人でも多くの方に、田中さんの素敵な想いと魅力がお届けできれば幸いです。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
今後ともリハノワをよろしくお願いいたします!
かわむーでした。
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