世田谷記念病院リハビリテーション科|東京都世田谷区・二子玉川

みなさんこんにちは、リハノワのかわむーです!

今回は、東京都世田谷区・二子玉川にある「世田谷記念病院」さんに伺いました。

世田谷記念病院リハビリテーション科では、「じぶんを生きる を みんなのものに。」というミッションのもと、地域密着型の医療を実践されています。

この記事では、ミッションに根ざした多彩な取り組みや、熱い想いをもつスタッフの言葉を通して、世田谷記念病院が大切にしているリハビリテーションの姿と、これから描く未来をご紹介します。

世田谷記念病院

東京都世田谷区・二子玉川にある世田谷記念病院は、全国に100を超える医療・福祉施設を展開する「平成医療福祉グループ」の基幹病院です。

「じぶんを生きる を みんなのものに。」を合言葉に、患者さん一人ひとりのQOL(Quality of Life:生活の質)を大切に、さまざまな取り組みを実践しています。

大きな病院での治療を終えた方がそれぞれの住まいに戻るまで、そして退院後の生活までを総合的にサポートする地域密着型の多機能病院です。

リハビリテーション科の概要

リハビリテーション科には、理学療法士(PT)60名、作業療法士(OT)19名、言語聴覚士(ST)16名、あわせて95名(2025年取材時)が在籍しています。入院・外来・訪問のそれぞれで、患者さんやご家族に寄り添いながら支援を行っています。

入院中は、回復期リハビリテーション病棟と地域包括ケア病棟でリハビリを実施。立つ・歩く・身のまわりの動作などの練習に加え、必要に応じて、言葉・飲み込み・高次脳機能等のリハビリも行います。

退院後は、訪問部門で、医師・看護師・栄養士などと連携し、訪問診療・訪問リハビリ・訪問栄養指導を提供して患者さんをフォロー。外来では他院からの紹介で、自動車運転再開に向けた評価・装具調整の相談などにも対応しています。

対象となる疾患は、脳血管疾患や整形外科疾患、内部疾患、廃用症候群など幅広く、一人ひとりの生活と目標に合わせたリハビリを行っています。

第1リハビリ室(2階)
第2リハビリ室(1階)

PT・草間亘さんの声

かわむー
かわむー

部長代理である草間さんに、リハビリテーション科として大切にしていることについてお話を伺いました。


 草間さん
草間さん

私たちが大切にしているのは、患者さんやご家族がもつ「価値観」に寄り添うことです。症状を改善することはもちろんですが、リハビリを終えたあとも、その人らしく健やかに暮らしていけるよう願いながら、日々の支援に取り組んでいます。

そのためには、セラピスト一人ひとりの技量が欠かせません。平成医療福祉グループが掲げるビジョンやミッションを、現場の中でどう形にしていくか。私たちは毎年、リハビリ科としての活動指針を定め、そこに込めた想いを日々の実践につなげています。それぞれの専門性を活かしながら、対話とフィードバックを重ね、チーム全体でリハビリの質を高めています。

一方で、専門性を磨くだけでなく、地域に出て「暮らしの現場」を知ることも大切にしています。退院後の生活を実際に見ることで、入院中の関わりにも新しい視点や深みが生まれるからです。

専門性と地域性、その両方を行き来しながら、セラピストとしての幅を広げていけたらと思っています。


草間 亘(くさま・わたる)さん
リハビリテーション科 部長代理/認定理学療法士(運動器)/回復期セラピストマネージャー/医療安全管理者
2011年に理学療法士免許を取得後、医療法人智隆会に入職し、脳神経外科や整形外科を中心とした外来リハビリに従事。その後、急性期から回復期まで幅広い現場経験を積み、2017年より世田谷記念病院に入職。2024年には部長代理に昇進し、現在は訪問リハビリや地域リハビリテーションを含む幅広いサービスを提供。リハビリの質向上と地域医療への貢献を目指し、管理職としての実績を積み重ねている。


患者さんのQOLを追求して

世田谷記念病院では、リハビリの時間だけでなく、1日の生活全体をリハビリの場として捉えています。「24時間365日リハビリ」をテーマに、目的をもった離床がすすめられています。

病棟には「離床コーディネーター」が配置され、患者さん一人ひとりに合わせた離床プランを作成しています。食事・入浴といった日常動作、集団体操やドッグセラピーなどのレクリエーション活動、植物に触れ心を落ち着かせることのできる園芸療法や、表現活動を通して気持ちをほぐす芸術療法などのプログラムへ参加することで、ベッドから離れる機会を自然に増やし、廃用症候群や合併症の予防につなげています。

さらに病棟では、看護師・介護職と連携し、起床後の洗顔やトイレ動作をサポートするモーニングケア、就寝前の着替えや歯磨きなどのイブニングケアにもリハスタッフが関わります。その瞬間の生活に寄り添いながら、専門的な視点からのアプローチを通して、「できること」を少しずつ取り戻す支援が実践されています。

寝たままの時間が続くと筋力低下や認知機能低下、褥瘡(じょくそう)等の合併症が起こりやすくなるため、普段の生活の中でこまめに離床を進めています。
生活に即したサポートを行うため、病室の多くが個室となっており、スタッフもかなり手厚く配置されているそうです。
園芸療法や芸術療法が行われる第2リハ室前の中庭。四季の草花に囲まれた、心がほっとする癒やしの空間。
園芸療法の時間に制作された作品。草の“髪の毛”が少しずつ伸びていく様子を、みんなで楽しみながら見守っているそうです。


専門性を活かしたアプローチ

かわむー
かわむー

ここからは、「じぶんを生きる」を支えるために必要な「専門性」に注目していきたいと思います。

身体機能や活動能力の向上をめざしたリハビリを支えている機器や、仕組みの一部をご紹介します。


◆ 最先端のリハビリ機器

「LIFESCAPES 機能訓練用BMI(手指タイプ)」
脳科学とAIの技術を組み合わせた、重度麻痺がある方のための先進的なリハビリ機器。BMI=Brain Machine Interface(ブレイン・マシン・インターフェース)という名のとおり、「手を動かそう」とイメージしたときの脳波を頭皮上から検出し、電動装具が動き、手指伸展をアシストします。さらに神経筋電気刺激によるフィードバックを通じて、脳と筋肉のつながりを再び呼び覚まします。

「ウェルウォーク WW-2000」
脳卒中などで下肢に麻痺がある方の歩行練習をサポートするロボット。難易度の調整や歩行状態のフィードバックが可能で、一人ひとりに合わせたリハビリを提供することができます。

装具
週に数回、義肢装具士さんが来院し、患者さん一人ひとりに合わせた装具を調整しています。装具は、長下肢装具、短下肢装具(ゲイトソリューションデザイン(GSD)、シューホン、タマラックAFO、オルトップなど)、体幹装具(硬性:ジュエット装具、軟性:ダーメンコルセット)など、多様なタイプが取りそろえられています。また、デンマークの職人が生み出した、美しい杖のブランド「Vilhelm Hertz Japan」の製品も取り扱われているなど、暮らしに寄り添った提案もされています。

ドライビングシミュレーター「HONDA セーフティナビ」
運転時の反応や視野を確認できるシミュレーター。多様な交通場面で危険予測を体験でき、運転適性の評価やリハビリに活用されています。近隣の教習所とも連携しており、実際の実車評価はそちらで実施。高次脳機能障害の回復段階を見ながら、退院後の外来リハで評価を行うことが多く、OTさんが中心となってサポートしています。



◆ 専門チームの設置
脳血管疾患・運動器疾患・内部疾患を専門とするチームが設置され、それぞれの領域でより質の高いリハビリテーションを追求しています。セラピストは、自身の関心や得意分野に合わせてチームを選ぶことができ、定期的に勉強会や実技練習会等を開催。日々の診療で生まれた疑問を持ち寄り、互いに学び合いながら成長を重ねています。

写真左から、脳血管チームの齋藤旬基さん(PT)、内部障害チームの小松﨑良さん(PT)、運動器チームの塚本泰成さん(PT)。「学び続けるチーム」であることが、患者さんへのより良い支援につながってるようです。


◆ リハの質向上委員会
世田谷記念病院には、診療の質を高めるために、いくつもの委員会が設置されています。その1つである「リハの質向上委員会」では、一人ひとりに、より質の高いリハビリテーションを届けるために各病棟で設定したQI(Quality Indicator:医療の質を示す指標)を継続的に見直しています。

たとえば、リハビリパンツの使用率や膀胱カテーテルの抜去率、リハ実施単位数、自主トレーニング提供率など、具体的な指標を設定。週に1度、医師や看護師、管理栄養士、介護士、リハスタッフが集まり、データを共有しながら改善策を話し合います。


地域に飛び込み、暮らしを支える

かわむー
かわむー

ここまでの見学やお話を通じて、世田谷記念病院では、患者さんの価値観に寄り添い、日常に戻るための力を育むリハビリテーションが丁寧に実践されていることがよく分かりました。「できること」を取り戻すだけでなく、その先の暮らしまで見据える姿勢がとても印象的です。

つづいて、退院後の生活の舞台となる「地域」へ視点を移し、その人らしい暮らしを支える取り組みをいくつかご紹介したいと思います。


退院後、患者さんが過ごす場所は「地域」です。だからこそ、世田谷記念病院では、スタッフ自身が地域を知り、地域の特性や課題、人とのつながりまで理解することを大切にしています。

その取り組みの一つとして、地域ケア会議への参加があります。地域住民やケアの専門職と意見を交わしながら、「その人が住み慣れた場所で、その人らしく暮らし続けるには何が必要か」を一緒に考えていきます。

また、訪問リハビリを経験したスタッフが、数年後に病棟へ戻る仕組みも特徴です。地域で得た視点や気づきをチームにもち帰り、入院中から退院後の生活まで見据えた支援につなげています。

さらに、2024年に誕生した「2Co HOUSE(ニコハウス)」は、スタッフの福利厚生施設でありながら、地域との交流拠点としても開かれる機会が設けられています。特別講師や地域の方を招いた職員向けイベントや、医療・福祉職の多職種連携交流会など、職員を中心として人がつながり、語らい、少しづつ院内のチームの輪が広がっていく。そんな温かい場所として活用されているそうです。

名前には、二子玉川(通称:ニコタマ)の「2Co(ニコ)」に、Community(地域)・Communication(対話)・Connect(つながり)という思いが込められているそう。「集まるみんなが〝ニコっと〟笑顔になれる、訪れる多くの人にとってのHOUSE(家)になりたい」そんな場所を目指して運営されています。
2Co HOUSE(ニコハウス)で開催された、芸術療法の1コマ(世田谷記念病院さんより写真提供)


事務長・手老航一さんの声

かわむー
かわむー

最後に、事務長の手老さんに、世田谷記念病院の歩みと大切にしてきた想い、そして今後の展望について伺います。


手老さん
手老さん

世田谷記念病院を運営する平成医療福祉グループは、1984年、徳島県の博愛記念病院から歩みを始めました。以来、慢性期や回復期の病院や施設の運営を中心に全国へと拠点を広げ、人の「生きる力」を支える医療を築いてきました。

創設者の武久洋三先生は「絶対に見捨てない」という強い信念を掲げ、たとえ重い障害があっても、その人が「その人らしく生きる」ことを支える医療を大切にされてきました。「食べる」「排泄する」といった、人としての尊厳に関わる営みを医療の中心に据えてきたのも、その想いの表れです。

その後、グループのミッションは「じぶんを生きる を みんなのものに。」へと進化しました。リハビリテーションの本質は、失われた機能を取り戻すことにとどまらず、自分らしく生きる力を取り戻すことだ、という願いがここには込められています。

世田谷記念病院は、その想いを体現するためのグループの拠点病院として2012年に誕生しました。急性期治療を終えた方が再び日常へ戻るための「日本版LTAC(Long Term Acute Care)」として、「ポストアキュート(急性期からの受け入れ)」と「サブアキュート(在宅・介護施設等からの受け入れ)」の2つの役割を担いながら、治療とリハビリテーションの両輪で「生きる」を支え続けています。



手老さん
手老さん

世田谷記念病院で大切にしているのは、「病院の都合ではなく、患者さんを中心に考える医療」です。「できない理由」よりも「どうすればできるか」。私たちはいつもチームで話し合い、最善の方法を探し続けています。

医療とは、痛みをとることや体を動かせるようにすることだけではありません。治療を経て、再び人と出会い、笑い、役割をもち、生きていく場所を取り戻すこと。その営みを支えることこそ、私たちのリハビリテーションの目指す姿だと考えています。

そして回復の先には、患者さんが暮らす「地域」があります。だからこそ、私たちは院内だけで完結せず、医師・看護師・リハ職・介護職、そして地域の方々と協力しながら、悩みや困りごとに向き合っています。

2024年には、人と人とのつながりを深める拠点「2Co HOUSE(ニコハウス)」が誕生しました。ここではスタッフが集まり、ともに学び合いながらチーム力を高めています。また、地域の方との交流の場でもあり、ゆくゆくは病院のスタッフやリソースだけでなく、地域の方々も含めた形でチームが出来上がっていく、そんな場所として少しずつ育っています。

2026年からは、総合診療専門研修プログラム「HMW総診」もスタートします。病気だけでなく暮らしや背景までまるごと支える医師を育てるこの研修プログラムの発足は、世田谷記念病院が大切にする「じぶんを生きる」を実現していくための大きな一歩となりました。

私たちはこれからも、チームで力を合わせながら前へ進みます。病院と地域のあいだに境目がなくなり、誰もが自分らしく暮らせる社会に近づけるように。ひとつずつ、ていねいに。みんなで未来をつくっていきたいと思います。


かわむー
かわむー

世田谷記念病院さんが大切にされているリハビリテーションの在り方に、心から共感しました。

「地域とともに歩む」という言葉は簡単に聞こえますが、実際に行動に移すには、確かな覚悟と情熱が必要です。それを病院という大きな組織として実践されていることに、感動しました。また、グループとして明確なビジョンを掲げ、その想いを丁寧に現場へと浸透させていく仕組みづくりにも、あらためて学ぶことが多くありました。

手老さん、あたたかく、そして力強いメッセージを本当にありがとうございました。


手老 航一(てろう・こういち)さん
世田谷記念病院 事務長
静岡県伊豆市出身。製薬会社や人材紹介会社、m3グループでのHR事業などを経て、2020年に平成医療福祉グループへ入職。現在は事務長として、組織運営や地域連携の推進に力を注いでいる。慶應義塾大学大学院 健康マネジメント研究科 病院経営イノベーションコース修了(Certificate 2020)。

施設概要・アクセス

■ 医療法人平成博愛会 世田谷記念病院
理事長 武久敬洋さん
院長 清水英治さん

■ Vision
医療福祉のトップランナーになり、誰もが、どんな時も、自分らしく生きられる社会の実現を目指します。

■ Mission
じぶんを生きる を みんなのものに。

■ 設立
2012年(平成24年) 4月2日

■ 病床
146床(回復期リハビリテーション病棟 107床、地域包括ケア病棟 39床)

 診療科
内科・整形外科・リハビリテーション科・脳神経外科

■ 所在地
〒158-0092 東京都世田谷区野毛2丁目30-10
TEL:03-3703-5100
FAX:03-3703-7730

■ アクセス
◇ 自動車
玉川ICより約3分 無料駐車場あり(40台収容可)

◇ 公共交通機関
①電車:二子玉川駅(東急田園都市線/大井町線)より徒歩約15分
②バス
・二子玉川駅より東急バス「玉11」多摩川駅行き「野毛桜堤」停留所下車 徒歩1分
・多摩川駅より東急バス「玉11」二子玉川駅行き 「野毛桜堤」停留所下車 徒歩1分

◇ 無料送迎バス
・運行区間:世田谷記念病院~二子玉川駅間(詳しくはこちら

■ お問い合わせ
こちらからお問い合わせください

■ 関連情報
世田谷記念病院HP
平成医療福祉グループHP
Instagram
公式LINE


かわむー
かわむー

今回の取材を通して感じたのは、世田谷記念病院のみなさんが、広義の「リハビリテーション」という言葉の本質を、まっすぐに体現されているということでした。

それは、機能を取り戻すだけの支援ではなく、「人が再び、自分らしく生きていく力」を取り戻すためのアプローチ。専門職が知恵と技術を重ね、チームみんなで患者さんと向き合い、そして地域とつながりながら歩む姿に、希望を感じました。

理学療法士の草間さんが「当たり前のことを、当たり前にやる」と語られた言葉も印象的で、日々の積み重ねを何より大切にしている姿勢や、現場に根ざした真っすぐな想いが、とても心に響きました。

病院という枠を超えて、地域の中で「生きる」を支える挑戦を続ける世田谷記念病院のみなさんを、リハノワはこれからも心から応援しています。

今回の取材にあたり、ご協力くださった事務長の手老さん、リハビリテーション科の草間さん、広報の梅田さん、患者さまをはじめ、関係者のみなさまに心より感謝申し上げます。

本当にありがとうございました。




以上、今回は東京都世田谷区・二子玉川にある「世田谷記念病院」さんをご紹介しました。

ひとりでも多くの方にその魅力と素敵な想いがお届けできれば幸いです。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

今後ともリハノワをよろしくお願いいたします!

かわむーでした。

この取材は、施設から同意を得て行なっています。本投稿に使用されている写真の転載は固くお断りいたしますので、何卒宜しくお願い申し上げます。

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※取材先や取材内容はリハノワ独自の基準で選定しています。リンク先の企業と記事に直接の関わりはありません。

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