みなさんこんにちは、リハノワのかわむーです!
本日は、合同会社アグリハート代表で理学療法士の「木村佳晶さん」をご紹介します。
木村さんは、現在「ICT農業と民間型相互扶助システムを融合させた新しいリハビリテーションの形」を構築するべく、多岐にわたる活動をされています。
木村さんが想い描く新しいリハビリテーションの形とそこにかける熱い想い、また、今後の目標や原動力など、その魅力にとことん迫っていきたいと思います。
理学療法士・木村佳晶さん
◆ 木村 佳晶(きむら・よしあき)さん
1976年 埼玉県上尾市出身
合同会社アグリハート 代表社員
<資格>
・理学療法士
・福祉住環境コーディネーター2級
<所属団体>
・特定非営利活動法人 ロボットビジネス支援機構 アドバイザー
・テレリハ株式会社 取締役COO
・一般社団法人ICTリハビリテーション研究会 理事
・東京都のスタートアップハブ東京 コンシェルジュ
・Keeogo Japan株式会社アドバイザー アドバイザー
・株式会社ケア・ポストマンⅡ アドバイザー
・一般社団法人 腸内細菌検査協会 腸内フローラ検査アドバイザー
<経歴>
2003年
理学療法士免許取得
病院勤務の後、老人保健施設にて勤務
2011年
東日本大震災発生、FTFにて復興支援活動を開始
岩手県陸前高田市の日本初の単独型訪問リハビリステーションの管理者として活動
2013年
ポシブル医科学株式会社 入社
2016年
合同会社アグリハート設立
公益財団法人埼玉県産業振興公社ロボットアドバイザー 就任
某大手電機メーカーRT開発メンバー
経済産業省のヘルスケアビジネスアクセラレータープログラム修了
2017年
RobiZyプロジェクトアドバイザー 就任
厚生労働省介護ロボット導入効果検証委員会委員
経済産業省平成29年度ロボット介護機器開発・導入促進事業(効果検証補助事業)有識者委員会委員
震災から生まれた“アグリハート”の心
理学療法士の域を越え多岐にわたる活動をされている木村さんですが、現在どのようなお仕事をされているのか教えて下さい。
私は現在、ヘルスケア企業のアイデアから事業の芽を創るといった0→1案件や、病院や介護福祉施設の現場アドバイザー、アクセラレータープログラムのアドバイザーなどを行っています。介護施設や就労支援施設にも週1回〜月1回ペースで足を運び、実際の現場を見ながら改善提案やニーズ調査を行っています。
社名である「アグリハート」は、アグリカルチャー(農業)とリハビリテーション、そしてアートを掛け合わせた造語です。学生時代、先生から「リハビリはアート」だということを学びました。リハビリは人の感性で成り立つところもあるため、芸術や人に触れて感性を養うように言われて育てられたのです。
私がやりたいのは、農業やモノづくりとリハビリテーションをかけ合わせた事業の構築です。
現在のリハビリは保険制度によって支えられていますが、私自身20〜30年後に障害をおった時、決められたリハビリを保険内でただ受け続けるだけでは嫌だなあと感じています。
私は、自分自身がやりたいことをやって、それがいつの間にかリハビリになっていたという世界観を創りたいです。
木村さんは、ヘルスケア現場と企業とのブリッチャーを担うことで業界全体の発展に寄与されているのですね。臨床以外での活躍の場をつくられた、まさに先駆者だと感じました。
木村さんの描く世界観を実現するために、「アグリカルチャー / 農業」に着目したのは何か理由があるのですか?
農業に着目したきっかけは、東日本大震災でボランティアをしたことにあります。そこで出会ったある医師の活動に大きな影響を受けたのです。
震災直後、私は有志のリハビリ職が中心となり立ち上げた「face to face 東日本大震災リハネットワーク(FTF)」という団体メンバーとして被災地支援活動を開始しました。その中で、被災地の方がだんだんと弱っていく姿を目の当たりにします。
避難所や仮設住宅で生活する方々は、次第に布団から起き上がれなくなったり、足が弱り歩きづらくなったり、元気がなくなっていったりしていました。また、仮設住宅が変わることでせっかくできたコミュニティを失い、また1から関係づくりをしなければならない状況もありました。
隣が誰だか分からず助け合いもしづらい、動かくなることで食欲も低下する、孤独から閉じこもりとなりやがて孤立してしまう、という完全に負のスパイラルに陥っていました。
そんな状況の中、札幌から応援に来ていた医師の高橋先生が、地主さんに交渉して陸前高田の仮設住宅の近くに畑を借り、耕し始めたのです。そこは「はまらっせん農園」と名付けられ、被災地の方々も農業に参加されるようになりました。
はまらっせん農園の「はまらっせん」というのは、現地の方言で「加わっていく」という意味です。
震災直後でリハビリテーション資源もない中での農業活動!被災地の方々にどのような効果があったのか、非常に気になります…!
やはり畑で何かをするということは、コミュニティを作ることができるし、土を触ることでストレス解消にも繋がるし、農作業を通して活動量も上げられるしで、まさに良いことづくしでした。
みんなで作った畑やものづくり農業が被災地の方々の健康にどのような影響を与えるのか研究するため、血液データからストレスなどをチェックして論文にもまとめられました。
このような活動を通して、「これが私が目指していた本当のリハビリテーションだ!」と強く感じるようになります。病院でやっているリハビリを否定する訳ではありませんが、以前から、退院後のリハビリ当事者の方が保険内のリハビリだけではなく、もっと能動的に生産性のある活動をできないものかと考えていました。
「今後私は、リハビリテーションに農業をかけ合わせた活動をしていきたい。これこそが、私が生涯をかけてやっていくことだ!」と胸が高鳴りました。
その後、理学療法士協会会長や当時の国会議員の山口先生に現場の状況を伝えるレポートを作成し提出。2011年12月に被災地トップ法案が通り、民間で訪問看護ステーションを立ち上げても良いことになります。保健所の方ともやり取りしながら、訪問リハビリステーションの管理者として1年ほど活動を継続しました。
ICTやロボットの可能性
現在、ICTやロボットの開発・普及にも力を入れられている木村さんですが、その理由やきっかけは何なのでしょうか。
私は、障害者や高齢者になっても十分に経済をまわせる仕組みを農業を通して作りたいと思っています。その世界観を実現するために、ロボットやICTに力を入れています。
既存の農業は何世代もかけて培ってきた経験や勘が必要となるため、そう簡単には真似できません。しかし、ICTやロボットを導入すると、積算温度が計算できハウス管理が容易になったり、収穫時期が予測可能となったり、人の手でなくてもロボットが収穫やパッケージ管理もできるようになったりします。
ICTを使った農業を確立させると、美味しいものが安定的に作れるようになるのです。そうなると、障害をもった方や高齢者にも可能性が広がってきます。介護保険を使い始めるとどうしても税金を使う側の立場となりますが、ICTやロボットを駆使した農業で収益が得られたら、それがお小遣いになるし税金も払えるようになります。
私は、ロボットやICTは、農業や地域ヘルスケア、社会経済のためにも必要不可欠だと考えます。
ICT×農業の可能性に、とてもワクワクしてきました。
ここに「リハビリテーション」はどのように加わってくるのでしょうか? 具体的に考えられていることがあれば、是非教えて下さい。
現在、お米からプラスチックを作る企業様とコラボし、リハビリテーションの文脈を取り入れた面白い取り組みをしていこうと考えています。
プラスチックの原料に使われるお米は食用でなくていいので、味にこだわる必要がありません。米はICTで管理し作られたものを使用していけば、障害のある人や高齢者でも作り手として活躍できるのではないかと考えています。この春からさっそくトライアルとして田んぼを育てていく予定です。
また、ICTを使って農作業をする人のデータをとることで、農業×リハビリテーションのエビデンスも作っていきたいと考えています。いずれは、畑で農業リハビリをすることに保険点数がつくことを目指したいので、研究にも力を入れてすすめていく必要があります。
様々な資源を有効活用しながら、環境課題やヘルスケア課題を解決できるので、我ながらメリットの多い良いモデルだなと思っています。ここを開拓していけるように、頑張ります。
必要な人に、必要なだけ
ICTやロボットを用いた農業×リハビリの今後の展開がとても楽しみです。
このような素敵な活動をすすめていく中で、木村さんが大切にされていることは何なのでしょうか。
私のモットーは、「リハビリの必要な人に必要なだけ届ける」ということです。これは、私の尊敬する方がとても大切にされていた想いです。
私は、役割や作業があれば、保険内のリハビリはそこまでたくさん必要ではないのではないかと考えます。「楽しい作業をしていたらいつの間にか元気になったけど、あれ?これってリハビリになってたね!」と、夢中になってやっていたことがいつの間にかリハビリになっていたという世界観が、これからは必要になってくると考えます。
2016年に起業した後、私は埼玉県産業振興公社ロボットアドバイザーに就任したことがきっかけで、ロボットの世界にどっぷりハマりました。厚生労働省介護ロボット導入効果検証委員会委員や、経済産業省平成29年度ロボット介護機器開発・導入促進事業に参画し、リハビリの必要な人に必要なだけ届けるためのロボットやICTの活用に、どんどんと可能性を感じるようになりました。
多くの起業家や新しいものを生み出し続ける人々と関わる中で、私も、自分の理想とするリハビリテーションを実現したいと思うようになりました。
木村さんの現在の目標や、今後に思い描くことを教えて下さい。
私は、先程お話したICT農業×リハビリテーションの新規プロジェクトに保険点数がつくことを目標としています。
今の固定的なリハビリテーションの概念をぶっ壊し、なにか違う新しい言葉にしていきたいと考えています。もちろん、既存のものを全て否定するつもりはありません。そこからさらにもう一歩進んだものを作っていくために、既存のリハビリテーションを再定義する必要があると考えます。
何単位分もベッドで寝かしているこれまでのリハビリテーションはあまり推奨できません。いろんな現場を見ていると、患者さんもセラピストもあまり面白くなさそうな情景も目に飛び込んできます。
既存の制度を変えていくためには、まずは実績やデータが必要です。継続性を担保するための仕組みも作りながら、社会に対して必要性を訴えていきたいと思います。
次世代へ繋ぐ
木村さんの言葉の節々から、今後の社会を変えていく強いエネルギーを感じました。木村さんの原動力となっているものは何なのでしょうか。
私が起こす行動は全て、次世代の子どもたちや孫に誇れる日本にするためにあります。
私には子どもが3人いますが、子どもたちは生まれた瞬間から国の借金をたくさん抱えているのです。現在も借金は膨らむ一方なので、どこかでその流れを断ち切らなければなりません。今の私たち世代が頑張らないと、子どもたちが辛くなってしまいます。
これまでの日本の良い伝統や資源を活かしつつ、これからの社会に本当に必要なこと、自分がやりたいことを信じて、前へ進み続けます。
木村さん自身が楽しみながら進まれていることも、とても素敵だと感じました。
リハビリテーションを担う次世代へ向けて、何かメッセージがあればお願いします。
最近では、若手セラピストや学生も起業したい子が増えてきている印象です。そんな方には、ぜひ「失敗してもいいんだから何でもトライするといいよ!」という言葉を送りたいです。
私もこれまで本当にたくさん動いてきましたが、その9割は失敗でした。たまたま上手くいった1割でよく見えているだけなので、まずは動くことが大切です。
私たちの周りにはたくさんの可能性が眠っています。私は一次産業にリハビリのエッセンスを加えていく挑戦をしていますが、そこには日本を変えられるパワーがあると信じています。
自分のやりたいことを突き詰め、そしてそこに全力で情熱を注ぐ。多くの若い力で、これからのリハビリテーションをされに面白いものに変えていけたらいいなと思っています。一緒にがんばりましょう!
木村さんの言葉を聞きながらとても胸が熱くなりました!パワーのある素敵なコメント、本当にありがとうござます。
木村さんが進められている新たなリハビリテーションが、エビデンスをもって既存のリハビリテーションを再定義していくことが楽しみでなりません。これからも木村さんのご活躍を心より応援しております!
本日は、ありがとうございました。
アグリハート概要
■ 設立
2016年10月1日
■ 事業内容
・医療法人運営アドバイザー(リハビリ部門)
・通所事業所運営アドバイザー(リハビリ部門他)
・リハビリ関連ICT機器開発パートナー
・リハビリ介護支援ロボット開発パートナー
・ヘルスケアビジネスアクセラレーター
・健康関連商品販売
・講演・執筆活動
■ したいこと:
モノづくりを通じて「生甲斐者(しょうがいしゃ)」を応援します
■ コンセプト:
リハビリテーションが必要な方に必要なだけ必要な時に必要な場所で
■ SNS・関連情報
・HP
写真提供:ひろし(フォトグラファー/理学療法士)
以上、本日は合同会社アグリハートの代表で理学療法士の「木村佳晶さん」をご紹介させていただきました。
一人でも多くの方に、木村さんの魅力と素敵な想いがお届けできれば幸いです。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
今後ともリハノワをよろしくお願いいたします!
かわむーでした。
この取材は、本人の同意を得て行なっています。本投稿に使用されている写真の転載は固くお断りいたしますので、何卒宜しくお願い申し上げます。
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