脊髄損傷者専門トレーニングスタジオ「J-Workout」大阪スタジオ|大阪府大阪市

みなさんこんにちは、リハノワのかわむーです!

今回は、大阪府大阪市にある「J-Workout 大阪スタジオ」さんを取材しました。

J-Workout(ジェイ・ワークアウト)は、脊髄損傷者の再歩行を目指すトレーニングスタジオで、脊髄損傷の独自のトレーニング技術と知識を強みに、回復が難しいと言われた脊髄損傷者を再歩行に導いています。

本記事では、J-Workout大阪スタジオの実際のトレーニングの様子やヘッドトレーナー・谷野雅紀さんの声を紹介します。

※ 公的保険適応外(医療保険や介護保険が使えない)サービスです。

J-Workout 大阪スタジオ

日本初の “再歩行” を目指す脊髄損傷専門トレーニングスタジオ「J-Workout」は、米国サンディエゴにある世界初の脊髄損傷回復施設「Project Walk」でトップトレーナーを務めていた故・渡辺淳氏と、同施設にて技術を学んだ谷野雅紀氏が初めて海外へ手技を持ち出すことを認められ、2007年に創業しました。

2015年にオープンしたJ-Workout大阪スタジオでは、トレーナーやアシスタントが常駐し再歩行に特化したトレーニングプログラムを提供しています。

クライアントは、頸髄損傷から腰髄損傷、完全麻痺や不全麻痺など様々な方が在籍しています。また、回復期病院を退院して間もない方から受傷後10年以上経った方まで利用開始時期も様々です。

J-Workoutでは、目標に向けて質の高いトレーニングプログラムが受けられるのはもちろん、脊髄損傷当事者同士の繋がりを提供したり、就労も含めた生活場面の支援や予防の視点からのアプローチにも力を入れています。

また、近年では再生医療やロボティクスのような技術を提供する企業と協業することで、あらゆる側面から脊髄損傷者をサポートできるよう取り組んでいます。

脊髄損傷(C6B2不全麻痺)でトレーニング中の広島県在住・藤井佳奈さん(藤井さんは以前リハノワでも取材させていただきました。なんと、取材日にたまたまトレーニングをしていました…!)

実際のトレーニングについて

トレーニング内容

J-Workout大阪スタジオでは「KNOW NO LIMIT ~回復に限界はない~」をスローガンに、7名のトレーナーと5名のアシスタントがチームを組みトレーニングを実施しています。

「残された中枢神経を再教育し、歩くために必要な新たな神経回路を再構築する」という考え方のもと、ヒトの成長過程を繰り返し追って神経を鍛えるパターントレーニングを行っています。あわせて、統制がとれた自然で機能的な動きができるよう、様々なアプローチで歩行に必要な全身のトレーニングを実施します。

1回のトレーニング時間は2時間か3時間の選択性。基本プランのレギュラーコースでは、1人のクライアントに対してトレーナーとアシスタントが付きます。クライアントの状態によって安全が確保できれば、1on1で実施することも可能です。

また、トレーニング期間は1年単位で頻度や形式もクライアントが決めることができます。週3回来る方もいれば、週に1回、月に2回、月に1回など様々です。形式も、対面もあればオンライン、またはそれらを組み合わせて実施することもできます。

半年に一度トレーナーとクライアントが振り返り面談を実施し、立てた目標の達成度合いを映像や評価表を用いて確認し、その結果に基づいて残り半年の長期・中期・短期目標を設定し再歩行実現を目指すシステムとなっています。

トレーニングスタジオ
プラットホームでは、コンディショニングや神経不活化トレーニングなどを行います。
大きなミラーを用いた起立・立位練習
平行棒内での歩行練習
手放しにも挑戦・・・!
現在の身体の状態について、評価結果をもとにフィードバックを受けています。


かわむー
かわむー

アメリカでの研究結果をもとに導かれたトレーニングの推奨頻度は、週に3回だそうです。

J-Workoutでは、栄養と休養のバランスをとりながらトレーニングを行うことや、トレーニングに加えて自主練習を行うことを推奨しています。

リハビリのモチベーションを保ち続けるのも大変なので、オンラインで定期的にサポートしてもらえると自主練習の質も上がるのだろうなと感じました。


トレーニング器具

脊髄損傷者の歩行に特化したトレーニングジムであるため、「立つ・歩く」ために必要なトレーニング器具が中心に揃えられています。

上肢に問題ない方もいれば、頸髄損傷で上肢が効きづらい方もいるので、身体機能のレベルにあわせて微調整ができるように工夫されています。

J-Workoutには、米国の「Project Walk」から持ち帰った器具や既存の器具にアレンジを加えて使用しているものもありますが、脊髄損傷者が立つ・歩く為に独自に設計・制作した完全オリジナル器具も開発しています。

プラットホームは通常より15cm程度高い、57cmに設定。高さの微調整がしやすいように、J-Workoutのプラットホームは全て木製。
自主練習でも使用できる立位保持のマシン。トレーニングを待つクライアントの待合スペースの近くにあえて設置し、自主練をするモチベーションの高いクライアントとその他のクライアントの間に自然に会話を生み出し、クライアント同士がモチベーションを高めあえるスタジオ環境も意識して作っているそうです。
免荷しながら歩行練習できるマシン「ゲートトレーナー」
下肢の筋肉を鍛えるためのJ-Workokutオリジナルマシン「トータルジム」
歩行器は様々な方に対応できるように、何十種類も用意されているそうです。


かわむー
かわむー

J-Workoutの皆さんで様々な器具を開発してこられたのには、脊髄損傷は「治りません」や「一生、車椅子」ということが言われてきたため、そもそも立たせたり歩かせたりする器具が日本には無かったことが背景にあるのだと思います。

「KNOW NO LIMIT」をスローガンに、そういった常識を良い意味で打ち破っていくJ-Workoutの信念にはとても胸が熱くなりました。

トレーニングをサポートするトレーナーやアシスタントも筋力や体力が必要なため、業務開始前や就業後はみんなでコンディショニングの時間をとって身体を鍛えたり調整したりしているそうです。そのような姿勢にも、プロフェッショナルさを感じます。


利用開始までの流れ

利用開始までの流れは、以下の通りです。

①無料体験プログラム(120分)
 ・カウンセリング / 骨密度、体重測定
 ・トレーニング理論や内容説明
 ・身体チェック
 ・トレーニング
 *申し込みページ

②有料のプレプログラム(4時間×1日 or 3時間×2日間)
 *申し込みページ

③利用開始
(契約は1年間単位)

スタッフの体制・育成

大阪スタジオのスタッフ(社員)
・トレーナー 7名
・アシスタント 5名

資格:理学療法士、AT、ATC、管理栄養士
(2023年2月現在)


スタッフ教育制度
・公認アシスタント課程
 
修了予定期間3〜4ヶ月

・公認トレーナー課程
 期間:公認トレーナーレベル1を合格するのに、約1年2ヶ月〜6ヶ月程度

・スペシャリスト課程
 レベル1〜5まであり、スペシャリストと呼ばれるレベル5に合格するのに、約10年程度

かわむー
かわむー

J-Workoutでは、全スタッフがトレーナーを目指すのだそうです。公認トレーナー試験に合格することで、初めてクライアントにトレーニングが提供できます。

トレーナーのレベルは1〜5段階に分けられており、できる事とできない事が細かく設定されています。例えば、担当できる麻痺のレベル(対麻痺、四肢麻痺など)や実施してよい手技など、試験に合格することで出来ることが徐々に増えます。

各試験は、技術テストと筆記テストがあり、技術テストは当事者の方にも協力いただいて実施します。試験は実際の営業時間内に、他のクライアントもいるなかで行われます。

試験官は、谷野代表とクライアントさん。双方のOKが出てはじめて合格となるそうです。評価項目は、技術はもちろん言葉遣いや説明の分かりやすさ、リスク管理、アシスタントへの指示が的確だったかなど様々な項目が設けられています。

このように、J-Workoutでは厳しい課程をクリアした質の高いスタッフがトレーニングをしてくれるので、クライアントさんも安心して専念することができるのですね。

料金

ReWalk レギュラー会員トレーニング料金
・年会費:264,000円/年(税込)※中学生以下は無料
・トレーニング料金:
 2時間:33,000円(税込)
 3時間:39,500円(税込)
*レギュラー会員以外にも複数会員種別があります

プレ会員プログラム料金
・1日コース料金:55,000円(税込)4時間×1日=計4時間
・2日コース料金:107,800円(税込)3時間×2日間=計6時間

かわむー
かわむー

入会前に必ず上記プログラムのいずれかを受ける必要があるそうです。詳しくは、会社HPよりお問い合わせください。


代表・谷野雅紀さんの声

■ 谷野 雅紀(たにの・まさき)さん
取締役COO/ヘッドトレーナー。大阪府出身。米国カリフォルニア州サンディエゴにある「Project Walk」で渡辺淳氏と共に学び、脊髄損傷回復トレーニングの技術を身につける。日本における脊髄損傷者の未来を変える為に帰国し、「J-Workout 株式会社」設立に参加。現在はJ-Workoutのヘッドトレーナー/マネージャーとして活躍している。好きな言葉は”miracle in the method”

【取得免許
・脊髄損傷回復スペシャリスト(米国プロジェクトウォーク)
・J-Workout公認Lv.5トレーナー
・姿勢矯正スペシャリスト
・AED心肺蘇生法実技講習 修了済
・日本ACLS協会BLSヘルスケアプロバイダー(CPR・AED)

かわむー
かわむー

谷野さんのアメリカでのご経験や、J-Workout設立の背景を詳しくお聞かせください。


谷野さん
谷野さん

大学卒業後、僕はNPO法人で介護事業所を運営していました。そこで、ある青年と出会います。

彼は20歳くらいの脊髄損傷者(C5)で、受傷からちょうど1年が経過していました。「車椅子になったけど、もう1度歩きたいんだ」という強い希望をもっており、色々と調べたところ米国カリフォルニア州サンディエゴにある脊髄損傷専門ジム「Project Walk」にたどり着きました。

僕はリハビリの仕事に興味がありセラピストの学校に進学することも決まっていましたが、彼から「アメリカに一緒に来てほしい」とオファーを受け、どうせやるなら自分にしかできないことをしようと渡米を決意しました。彼と知り合ってまだ3ヶ月目のことでした。

渡米後は、J-Workoutのファウンダーで当時Project Walkでトップトレーナーを務めていた渡辺淳と、J-Workoutの現代表で車椅子ユーザーの伊佐、そして青年と私の4人で暮らしながらトレーニングを学びました。

青年は、排泄や食事、移動など生活全般に介助が必要で、僕はトレーニングの技術を学びながら彼の介護をしました。実際に一緒に生活しながらトレーニングも学ぶことで、様々な側面から脊髄損傷についての理解を深めることができました。

渡米から2年後、日本の脊髄損傷者の未来を変えるべく渡辺淳と共に帰国し、J-Workout株式会社を設立しました。

2007年に1号店となる東京スタジオをオープン。その後、2015年に大阪、2020年に福岡スタジオをオープンしました。



かわむー
かわむー

日本の脊髄損傷者のために熱い思いをもって、これまで活動を広げてこられたことが本当に素晴らしいと思います。

谷野さんが向上心をもち進み続けられる原動力や、スタジオを運営するなかで大切にしていることを教えてください。


谷野さん
谷野さん

僕は再歩行を目標にトレーニングプログラムを設計していますが、歩けたという結果だけではなく、その課程やクライアントが歩いて何がやりたいかということもとても大切にしています。

アメリカに一緒にいった青年は、渡米前は重度のひきこもりでした。しかし、トレーニングを通して機能改善はもちろん、精神的にも大きな改善がみられました。

職業訓練も一緒におこなうことで、Webのスキルを習得し、仕事を始めることもできたのです。

トレーニングで歩行を目指すこと、そして再歩行の実現が、単に機能の回復だけではなく、脊髄損傷者のウェルビーイングの実現に繋がる

様々なクライアントさんと真剣に向き合いながら、自分たちのやっている価値について学ばせてもらっています。

青年の存在は、僕にとっては「人生のターニングポイント」ですし、今でも彼はまだ歩けていないので、それがある意味、僕のモチベーションにもなっています。



かわむー
かわむー

「彼を歩かせる」ということを一つのモチベーションに、J-Workoutの事業はどんどんアップデートされているのですね。

最後に、谷野さんが今後チャレンジしたいことがあれば教えてください。


谷野さん
谷野さん

再生医療やロボティクス、就労支援など、僕らとはやってることは違うけど脊髄損傷者のために同じ方向を向いている人たちと協業していきたいと考えています。

今は、再生医療中に僕らのトレーニングを提供しようという取り組みが進んでいます。入院中に自由診療の再生医療を受けて、僕らのトレーニングをクリニックで提供するのです。これまでなかなか出来なかった形に、現在トライしています。

近年、高齢者のクライアントさんが増えてきました。転倒して脊髄を損傷するというケースが多くなってきています。その結果、年間の新規脊髄損傷の全体の総数は5000人から6000人に増えています。

クライアントが高齢化すると、老老介護をはじめとした様々な問題が出てきます。そのため、僕たちとしては予防の視点をもった啓蒙活動にも力をいれていかないといけません。そうしないと、脊髄損傷はなくならないからです。

自社だけに拘らず、同じ方向を目指している多くの人と手と手をとりあい、連携を強化していきます。そっちの方が、できることも増えて面白いですしね。

脊髄損傷者の明るい未来を目指して、僕たちは進化し続けます。



かわむー
かわむー

「全ての脊髄損傷者に一生かけて向き合い、一人でも多くの脊髄損傷者を歩かせる」

歩くという目標に向けて取り組むすべての過程が、その人のあらゆる成長や回復に寄与し、ウェルビーイングに繋がる。

「脊髄損傷がなくなること」=「事業がなくなること」であるにも関わらず、本質的な解決を目指してそこに向けて全力で歩まれる姿勢に、大変胸が熱くなりました。

私も急性期病院で勤務していましたが、リスク管理やあらゆる制限から病院でできることには限界がありました。慢性期そして在宅に復帰した後、「KNOW NO LIMIT ~回復に限界はない~」をスローガンに一緒に高みを目指せる人たちがいるというのは、本当に貴重なことだと思います。

一方で、そういった脊髄損傷者を支える業界自体の発展も必要だと感じました。これからも業界を牽引していって欲しいと思います。

谷野さんをはじめスタッフの皆さんやクライアントさん、J-Workoutに関わる全ての人の今後のご発展を心より応援しております。

取材に丁寧に応じてくださったヘッドトレーナーの谷野さん、マネージャーの市川さん、取材の調整を行ってくださった友田さん、スタッフのみなさん、藤井さん、本日はありがとうございました。


アクセス

■ 住所
〒530-0026
大阪府大阪市北区神山町1-7 アーバネックス神山町ビル(扇町メディックスモール)1階
TEL : 03-5809-9390

■ アクセス
・地下鉄堺筋線「扇町」駅(2A出口)扇町公園を斜め左に通り抜け徒歩 約5分
・地下鉄谷町線「東梅田」駅 泉の広場(M10出口)徒歩4分
・JR環状線「天満」駅徒歩 約8分
・バス「大融寺」バス停徒歩3分

※専用駐車場はなし

かわむー
かわむー

遠方のクライアントさんは何日か続けてトレーニングに通われる方もいるため、近くのホテルとも連携しているそうです。宿泊や滞在中のサポートに関しては、施設へご相談ください。

施設概要

■ 運営会社
ジェイ・ワークアウト株式会社
(代表取締役社長 伊佐拓哲)

■ 開設
東京スタジオ 2007年
大阪スタジオ 2015年
福岡スタジオ 2020年

■ 事業内容
・脊髄損傷者の再歩行を目指すトレーニング
・障害者向けのフィットネスジム(東京のみ)
・車椅子の販売・メンテナンス
■ 対象
脊髄損傷者

■ 営業時間
9時~21時

■ 企業理念
スローガン:
KNOW NO LIMIT ~回復に限界はない~

ミッション:
「KNOW NO LIMIT」を体現し、追い求める

ビジョン:
○for Client
全ての脊髄損傷者に一生かけて向き合い、一人でも多くの脊髄損傷者を歩かせる

○for Society
世の中の「脊髄損傷=障害」という概念を変える

○for Staff
クライアントの夢の実現を通じて、スタッフとスタッフの家族の幸せを実現する

■関連情報
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<関連記事>

トレーナーの声(大阪スタジオマネージャー・市川春菜さん)
クライアントの声(広島県在住・藤井佳奈さん:「再生医療後のリハビリ」)


ぜひ合わせて御覧ください。


写真提供:山本夏希


以上、本記事では大阪府大阪市にある「J-Workout 大阪スタジオ」さんを紹介させていただきました。


一人でも多くの方に、J-Workoutの素敵な想いと魅力がお届けできれば幸いです。


最後まで読んでいただきありがとうございました。


今後ともリハノワをよろしくお願いいたします!



かわむーでした。


この取材は、施設から同意を得て行なっています。本投稿に使用されている写真の転載は固くお断りいたしますので、何卒宜しくお願い申し上げます。

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※取材先や取材内容はリハノワ独自の基準で選定しています。リンク先の企業と記事に直接の関わりはありません。

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