医療刑務所で働く作業療法士・昭島OTさん【あなたの知らないリハビリの世界】

みなさんこんにちは、リハノワのかわむーです!

今回は、東京都昭島市にある東日本成人矯正医療センター(医療刑務所)で働く作業療法士の昭島OTさんを取材しました。

本記事では、昭島OTさんが医療刑務所で働くことになったきかっけや現在の仕事内容、リハビリの現状について紹介します。

※東日本成人矯正医療センターに関する情報はこちらの記事で紹介しています

作業療法士・昭島OTさん

◆ 昭島OTさん(ペンネーム)
2005年作業療法士免許を取得後、病院で身体障害、精神障害の方々の作業療法に従事。訪問看護ステーションに勤務後、2018年より東日本成人矯正医療センターに入職。現在は法務技官として収容者の作業療法業務に従事している。

<資格>
・AMPS認定評価者
・NEAR認定評価者
・WRAPファシリテーター
・D-MCT(うつ病のメタ認知)トレーナー
・MBCTマインドフルネス認知療法 8週間プログラム修了
・アロマセラピー検定1級


かわむー
かわむー

昭島OTさんが、作業療法士の道を目指したきっかけを教えてください。



昭島OTさん
昭島OTさん

私は一般企業で働いた後に、作業療法士の資格を取得しました。

母が助産師だったので、幼い頃から医療業界への憧れはありましたが、人命に直結する仕事は私には難しいだろうと思い、大学卒業後は一般企業に就職しました。

しかし、社会人になって改めて、人の役に立つ仕事や手に職をもって働くことの素晴らしさを実感しました。母に相談したところ、精神科の患者さんを対象にリハビリをする「作業療法士」という資格があることを教えてくれました。

創作活動などあらゆる作業を手段に、身体面や精神面にアプローチする作業療法士の仕事に魅力を感じ、働きながら学費を貯め、作業療法士養成校に進学しました。


かわむー
かわむー

社会人を経験した後に、作業療法の世界へ進まれたのですね。就職後は、どのような現場でお仕事をされたのですか?



昭島OTさん
昭島OTさん

養成校卒業後は国立病院機構に就職し、最初の2年間は身体障害の方をメインに担当しました。その後、精神科単科の病院に異動し、スーパー救急病棟、認知症病棟、結核病棟、社会復帰病棟、治療困難者病棟などさまざまな現場で計7年間、経験を積みます。

充実した時間を過ごしていた反面、次第に「もっとゆっくり患者さんと関わりたい」「専門的に学びたい」と考えるようになりました。

ちょうどその頃、関連病院の医療観察法病棟への異動が決まりました。医療観察法病棟とは、心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った人に対して、医療および観察等に関する法律に基づき入院医療の提供を行う専門病棟です。

患者さんの社会復帰を目指して、ストレス対処法が習得できるように作業療法を実施しました。医師、看護師、ソーシャルワーカー、心理士、作業療法士など多職種と連携しながらチーム医療を実践することができたので、とてもやりがいを感じました。


医療観察法病棟での経験から

かわむー
かわむー

病院で働いていた昭島OTさんが、医療刑務所に就職しようと思ったきっかけは何だったのでしょうか。



昭島OTさん
昭島OTさん

医療観察法病棟で働く中で、「更生に向けたリハビリテーション」をじっくりと極めてみたいという思いが強くなりました。

転職を考えているタイミングで、数年後、昭島市に東日本成人矯正医療センターがオープンするため、作業療法士の求人ができるのではないかという情報を耳にしました。

完成したタイミングで募集が出たら働きたいと思いながら、一旦は病院を離れ、訪問看護ステーションへ転職。その後、2018年の施設オープンとともに求人募集があり、働くことになりました。


医療刑務所の作業療法

かわむー
かわむー

刑務所では作業療法が積極的に取り入れられているという印象があるのですが、実際にはいかがでしょうか? 医療刑務所でのリハビリ内容や働き方について教えてください。



昭島OTさん
昭島OTさん

東日本成人矯正医療センターには2名の作業療法士が在籍し、精神疾患や身体障害の方のリハビリを担当しています。

精神科は、主に摂食障害、気分障害、統合失調症、神経発達症などの方に対して集団や個別でアプローチを行います。作業療法室や病棟のデイルームに集合し、折り紙を中心とした創作活動や、ストレス対処法、アサーション、リラクゼーションの習得を目的とした活動を行います。

集団療法の参加人数は、保安上の観点から10名〜12名としており、リハビリ中は刑務官さん1〜2名に付き添ってもらいます。集団プログラムの前には、病棟で医師や看護師、刑務官の方と情報交換を行います。

脳卒中などの身体障害に対する作業療法は、個別に実施するケースが多くあります。トイレ動作や爪切り動作などの日常生活動作練習、生活支援に関するリハビリを実施します。

その他、別棟の少年センターにも出張し、精神疾患の方にリハビリを行います。

午前中は身体障害の方、午後は精神科の方の集団プログラムを中心に実施しています。


かわむー
かわむー

1日にかなりの数の方にリハビリを実施しているのですね。これまで、診療をする中で大変だったことや困ったことなどはありましたか? また、こだわりなどもあれば教えてください。



昭島OTさん
昭島OTさん

創作活動では、裁縫、革細工、陶芸制作などいろいろな作業を行いますが、保安上の問題で使えない道具も多く、作業が限られることがあります。

基本的に、紐や棒など、長さのあるものの使用には注意が必要です。事前に刑務官さんに許可を取るか、別のものに代替します。制限された中で何ができるのかを考えるのが、難しいけれどやりがいでもあります。

最近よく取り入れているのは、アロマセラピーです。患者さんが少しでもリフレッシュできる環境づくりに力をいれています。リハビリ終了時に、お部屋にシュッと一振りすることで、穏やかな気持ちになれるようにしています。


一人ひとりと丁寧に向き合う

かわむー
かわむー

リハビリをする上で、昭島OTさんが大切にしていることは何ですか?



昭島OTさん
昭島OTさん

私は「人としての関わり」を大切にしています。

刑務所や医療刑務所に、自ら望んで入ってくる人は少ないと思います。入所前、つらい境遇に出くわして対処しきれずもがいた結果、犯罪に至ったというケースも数多く見てきました。

一人ひとりに合わせてちょっと工夫を凝らすことで、より大きな一歩が出せると考えています。

更生する過程で自信を取り戻し、再スタートを切って欲しいと願っています。


メッセージ

かわむー
かわむー

最後に、読者の方にメッセージがあればお願いします。


昭島OTさん
昭島OTさん

私はこれまで、患者さんのために役立つ可能性のあることは積極的に勉強してきました。作業療法士として、目の前の方のために学び続けることはとても重要だと思っています。

さまざまな資格も取得してきましたが、医療刑務所では、AMPS(アンプス)という作業遂行の質と作業遂行能力を同時に評価する、国際的に標準化された観察型のADL/IADL評価法がとても役に立っています。得られた評価は、就労に繋げる際などの参考にしています。

ファーストキャリアとしては少しハードルが高いかもしれませんが、セカンドキャリアとして来るのにはとてもおすすめの職場です。


かわむー
かわむー

昭島OTさんは本当に多くの資格を取得されていますが、常に学び続ける姿勢にプロフェッショナルさを感じました。

人としての関わりを大切にし、患者さん一人ひとりの将来を見据えながらとても丁寧に関わられてるのが素晴らしいです。

医療刑務所という特殊な現場での更生を目指したリハビリテーションの実践において、作業療法士はものすごく必要とされていることが分かりました。

現在、矯正施設へのセラピスト配置が進められているので、セラピストの活躍の場の一つとして、もっと知ってもらいたいと思いました。

東日本成人矯正医療センターでは、年に1回、一般社会の方々に広く矯正行政に対する理解と協力を求めることを目的とした「矯正展」というイベントを開催しています。刑務所の中や模擬居室の見学、受刑者の食事も体験することができるそうなので、興味のある方はぜひ足を運んでみてください。

取材にあたりご協力いただいた昭島OTさん、刑務官の皆さま、医療スタッフの皆さま、本当にありがとうございました。



かわむー
かわむー



以上、今回は東京都昭島市にある「東日本成人矯正医療センター」で働く作業療法士の昭島OTさんを紹介させていただきました。

医療刑務所でのリハビリテーションの実際と、そこで真摯に向き合い続けるセラピストがいることを一人でも多くの方に知っていただけると幸いです。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

今後ともリハノワをよろしくお願いいたします!


かわむーでした。


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