島の空き家を再生 !『境界なき宿屋カモメ』に込められた想い #1|一級建築士 内野康平

みなさんこんにちは、リハノワ.comのかわむーです!

今回リハノワ.comは、種子島の旧饅頭屋をバリアフリーリノベーションし宿屋を作るという『カモメプロジェクト』に関わらせていただくことになりました。

2020年4月に公開した、医療サポートが必要な娘さんのお母さん・イツカさんと、イツカさんのバリアフリー住宅を手掛けた一級建築士・内野康平さんとの出会いがきっかけとなり、現在、種子島を拠点にプロジェクトが進められています。

リハノワ.comでは、カモメプロジェクトに関わる様々な人をピックアップし、プロジェクトにかける熱い想いや進める中で感じること、また宿屋カモメや島の魅力について等とことん迫っていきたいと思います!

今回から全5回程度のシリーズ連載でお届けしてきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします!


かわむー
かわむー

リハノワ.comシリーズ連載境界なき宿屋 カモメ』は、こちらから。

・カモメプロジェクトのクラウドファンディングページはこちらから。

・カモメ公式HP(準備中)・Instagramはこちら。

ぜひ合わせてチェック・ご覧ください。




『境界なき宿屋 カモメ』

境界なき宿屋 カモメ』は、体が不自由な人もそうでない人も皆んなが安心して泊まれるバリアフリーの宿屋です。
種子島北部・西之表市の中心部にある “島でかつて愛された饅頭屋” をバリアフリーリノベーションし、2020年9月21日「敬老の日」にオープン予定です。

カモメではバリアフリーを取り入れた建築やデザインに加え、今まで使われていなかった種子島産の自然素材を新たな利用法で建築に応用したり、地元の伝統工芸とコラボして食器や家具を制作するなど、建築士や職人、医療・介護・福祉界に携わる人みんなの思いがたくさん詰まった宿屋です。

種子島・西之表市住吉にある展望台より眺めた風景
カモメ建物全景
鹿児島の陶磁器作家さんとコラボしたカモメオリジナル照明(デザイン・内野さん)



また、カモメでは「カモメおばん食堂」にて島の “おばん” が作った、島の食材をふんだんに使った朝食を食べることができます。ここでは、宿泊いただいた方がみんなで同じ食材を楽しめるように、可能な範囲で軟菜食や刻み食など、食形態の変更にも対応します。

さらに、旧饅頭屋だった店舗部分はポップアップストア(期間限定店舗)として再生し、島外の飲食店などに期間限定で貸し出します。お店の方は、種子島を楽しんでもらいながら出店することができます。

カモメで提供予定の朝食(試作)




そして、カモメは現在島外で暮らす家主さんが島に帰って来られるまでの “10年間限定の宿屋” です。

10年後には家主さんに住宅を返還し、そこからは高齢者シェアハウス『やすらぎの郷』に生まれ変わります。


高齢者の孤立を防ぎ、社会と交流のある人間らしい生活を高齢期においても維持していくためには、地域社会における支え合いが必要不可欠であるといわれています。

“その人らしい生き方” を支援するため、真のニーズを探究しそれを実現する一つの手段として、カモメでは『高齢者のシェアハウス』という新しいカタチにチャレンジします。

種子島在住のデザイナー「案図舎」の小野寺いずみさんが手掛けた「カモメ」と「やすらぎの郷」のロゴ





<プロジェクト発足までの秘話>
広島・種子島・福岡を拠点として活動している一級建築士・内野康平さんは、2017年に「一級建築士事務所 studio KANRO」を設立しました。内野さんの最初のお客様さんであった広島県在住のイツカさんには、医療サポートが必要な愛娘・ニコさんがいらっしゃいました。

内野さんは、イツカさん一家の住宅を手がける中で、建築はただの手段であって、創るのは “そこに住む人のこれから先ずっと続くであろう暮らし” であることに改めて気ずかされたと話します。 以降、「数年後を見越した設計」と「切実な想いに応える建築」が自身のテーマとなり、今では手掛けるほとんどの建築にバリアフリーを取り入れるよう心掛けているそうです。

そして、2020年3月にリハノワ.comで内野さんを取材した際に、イツカさんが  “一度は娘を連れて旅行にいってみたい” と希望されていることや、リハノワで取材する当事者の方々も、イツカさんと同じように “家族や自身の体調に不安はあるけれど旅行にいきたい” と願う人は非常に多いということをお伝えしました。そして、一番大きな課題となるのは “宿泊先の設備の安心度” であるということも。

イツカさんの切実な願いや現場の課題感を聞いた瞬間、内野さんは「現在相談のきている種子島の饅頭屋だった空き家を、体が不自由な人もそうでない人も皆んなが安心して泊まれるバリアフリーの宿屋にしたらどうなるだろう?」と、ふと思いついたそうです。



2020年3月28日。

——高齢者も障がい者も誰もが泊まれる宿屋『境界なき宿屋 カモメ』を作りたい!


カモメプロジェクトが発足しました。

カモメプロジェクト 広島メンバー
(左から内野さん、かわむー、イツカさん、大工の中村ご夫妻)
種子島の職人チームと協力し、プロジェクトを進めていきます!
studio KANRO(広島市)での打ち合わせ風景




余白のある建築と種子島産へのこだわり

かわむー
かわむー

ここからは、一級建築士・内野康平さんに『境界なき宿屋 カモメ』に対する思いなどを色々と聞いていきたいと思います!

まずは、『境界なき宿屋 カモメ』の建築としての “こだわり” 部分を教えて下さい。


内野さん
内野さん

カモメでは “作り込みすぎず、余白を残す” というのを大切にしながらも、バリアフリーとそうでない部分をナチュラルに分け、“いかに自然に見せストレスをなくせるか” ということにこだわりをもって設計しています。

例えば、車椅子ユーザーの方が使いやすいように部屋の壁は取り払いましたが、普段は本棚として使用できる可動式の壁を作ることで、部屋を使う人のニーズによっては仕切ることもできるようにデザインしました。

そのほか、スロープも子どもが遊べるような暮らしに自然と溶けこむデザインにしたり、安心安全といった面では大工さんとも相談し、床の下地は電動車椅子や電動ベッドのような重量にも耐えられるように通常の2倍に強度を上げたりしました。

また、“福祉への劣等感を無くしたい” というメンバー・イツカさんの想いから、福祉用品を一からデザインするということにもチャレンジします。具体的な例を挙げると、種子島にある窯元とコラボし福祉用食器などを制作する予定です。

トイレや浴室・スロープなどについても、実際に医療・福祉現場の方からヒアリングを行いながら設計しました。


かわむー
かわむー

極力シンプルにすることが建築の自由度をあげ、それがストレスフリー、そして、バリアフリーに繋がるのですね。バリアフリーを求めている人が無意識に使えるくらい、暮らしに溶け込だ設計になっているのが魅力的です。

そのほか、バリアフリー以外の面でのこだわりはありますか?


内野さん
内野さん

たくさんあります!

僕には色々と挑戦したいことがあるんです。種子島のこの素材を使ったらこうなるかな、とか、この技術や伝統文化と組み合わせたらどうなるかな、とか。

とにかく、見えるもの全てを種子島産にしようと考えています。
そうすることで島の人に愛されるものになるし、島外からきてくれた人にも、建築を通して種子島の素材や伝統文化を感じてもらえると思うので。

それらは、島の職人さん一人一人の思いを大切に表現したいので、一緒に作っていきます。試行錯誤しながらやっていくというスタイルなのでやりながらじゃないと分かりませんが、この挑戦は僕自身とってもワクワクしながら進めています。


かわむー
かわむー

見えるもの全てが “種子島産” というのはかなり魅力的ですね!
繊細な工程や作業も、一つ一つ丁寧に考えられている内野さんの情熱に共感する人は多いのではないでしょうか。

このほかにも、
・10年後に帰ってきた人たちが普通に使える家具を一から設計
・鹿児島の陶磁器作家さんとコラボしたオリジナル照明を制作
・工事中に出てきた旧饅頭屋の道具をリメイクして照明を制作
・手に馴染みやすいように革を巻いた手すりを制作

など、様々な工夫をされているそうです。
建築士 内野さんのこだわりが詰まった宿屋カモメ、完成が楽しみです!


通常の2倍の強度で仕上げた床下地
古民家の雰囲気を残しながらバリアフリー空間を目指す
スロープを上りきった先には車椅子の高さに合わせて作った庭を望める小窓を設計
旧饅頭屋から出てきた道具をリメイクした照明(左)と陶磁器作家さんとコラボして制作した照明(右)
オリジナルの手すり(デザイン・内野さん / 制作・fine factory中村さん)



カモメに込める新たな可能性

かわむー
かわむー

内野さんのこだわりがたくさん詰まった『境界なき宿屋 カモメ』ですが、今後どんな場所になって欲しいですか?


内野さん
内野さん

地域の方もポップアップストアをやるのでかなり注目はしてくれていますが、普段は軽く素通りできるような街に溶け込んだ場所になってほしいです。

この島でも “バリアフリーの必要な人が安心して来れるんだ” ということを感じていただき、そして、“例え体が不自由になってもこの島なら住めるんだ” と思ってもらえるような可能性ある場所になって欲しいです。

あとは、10年後に帰ってくる女性3人が、おばあちゃんになってもキャピキャピしながらお酒飲んでてほしいですね(笑)介護しながら一緒に飲みたいですね〜(笑)


かわむー
かわむー

カモメは島外から泊りに来る人のためだけのものではなく、島の人にも “体が不自由になっても安心して暮らせるんだ” ということを見てもらえる一つのツールになるという点で、かなり大きな役割を果たしそうですね。

10年後高齢者シェアハウスになったカモメで、住人みんながワイワイとお酒を飲んでいる姿を想像したら、私もものすごくホッコリしました…!(笑)





未来のお客さまへ

かわむー
かわむー

2020年9月21日(敬老の日)オープン予定の『境界なき宿屋 カモメ』

未来のお客様” に向けて、建築士 内野さんより一言・メッセージをお願いします!


内野さん
内野さん

境界なき宿屋 カモメでは、とにかく“何もしないでゆっくりとする時間” を楽しんでいただけたらと思います。

港から聞こえてくる船の汽笛に耳を澄ませ、建築の細部に宿る作り手のさんの想いを、島の伝統文化や素材を、空間を通して全身で感じてもらえたら嬉しいです。 

僕の愛する故郷 種子島が、一人でも多くの方の心を癒し、喜びを与えてくれますように。


かわむー
かわむー

内野さんは、今回カモメを建築するにあたり、島の方々や職人さんとの関係性を一から築き上げるところから、丁寧に丁寧に時間をかけながら進めてこられました。そして、その過程では、彼の想いに共感した素敵な仲間が全国からたくさん集まり、現在カモメの完成に向けて日々一歩ずつみんなで前に進んでいます。

彼にしか作り上げることのできなかったであろうカモメの空間からは、多くの方々の素敵な想いが感じられ、とてつもないパワーをもらえることと思います。

ぜひ、彼が愛する種子島や信頼する人とのストーリーを感じながら、素敵なひとときを過ごしていただけると幸いです。



カモメにかける熱い想い!

かわむー
かわむー

最後に、一級建築士・内野さんの『境界なきカモメ』にかける “想い” や “意気込み” を聞かせて下さい。


内野さん
内野さん

今回このカモメプロジェクトは、僕にとってかなりの “挑戦” です!

誰もが安心して泊まれる宿” とうたう責任はおもく、これ以上ないプレッシャーに押しつぶされそうになりながらも日々闘っています。せっかく希望を持って島まで来て泊まってくれる人に、悲しい思いはさせられません。

ソフトとハードがここまで難しい建築ってあまりないんです。だからこそ、そこの設計をちゃんとしてあげないといけないし、これはできてこれはできないという線引きも、ある意味 大事なことだと思っています。


かわむー
かわむー

ソフトを含めた建築を、宿屋として設計しないといけないので相当大変ですよね。

こんな大変な思いをしてまで “挑戦しよう! ” と思った理由はなんですか?


内野さん
内野さん

確かに責任は重くリスクもあるけど、自分自身こういった宿があったらいいなと思うから。

これだけですね。

誰もが安心して泊まれる宿” をあえてうたうことで自分にプレッシャーがかかるので、すごくいいなと思っています。

自分自身の様々な経験から、介護・福祉界に多い無機質な内装には以前から疑問がありました。おそらくそれらは、必ずしも必要だからそうしてるってことではなくて、福祉にデザインが入ってないのだと思います。

そういったデザインを、もっともっと業界に増やしたいですね。
今後のステップアップとして、僕は全力でこのカモメプロジェクトに挑んでいます。





かわむー
かわむー

最後は、内野さんから建築士としてカモメにかける熱いメッセージをいただきました!

聞けば聞くほど、カモメのことがどんどん楽しみになってきましたね。

これから夏も本番となり、現場は猛暑となることが予想されまずが、どうか体に気をつけて作業を進めてくださいね。内野さん、本日はありがとうございました!



次回のシリーズ連載境界なき宿屋 カモメ』は、大工の中村悟さんと妻のめぐみさん猛政工務店/fine factory)を特集し、その熱い想いに迫ります!

また、8月上旬よりカモメプロジェクトのクラウドファンディングがついにスタートしました!
ぜひそちらも合わせてチェックください。(返礼品にも力を入れています…!)




車椅子YouTuberのちんさんとコラボしYouTubeチャンネル『suisui – Projectにてカモメが完成するまでの過程をお届けします!
クラウドファンディング返礼品として制作予定のステッカー






以上、本日はカモメプロジェクトの一級建築士・内野康平さんを紹介させていただきました。


一人でも多くの方に、内野さんの素敵な想いがお届けできれば幸いです。


最後まで読んでいただきありがとうございました。


今後ともリハノワ.comをよろしくお願いいたします!




かわむーでした。







※この取材は、本人の同意を得て行なっています。また、本投稿に使用されている写真の一部は内野さんからお借りして許可を得て掲載しております。問題がある場合はご連絡いただければと思います。


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