みなさんこんにちは、リハノワのかわむーです!
今回は、愛知県豊明市にある藤田医科大学病院さんにお邪魔し、「集中治療室(Intensive Care Unit:ICU)でのリハビリテーション」の実情を取材しました。
ICUは、重い病気やけがで生命の危機にある患者さんを最先端の医療技術を使って集中的に治療する特別な病棟です。この記事では、藤田医科大学病院ICUで行われている重症患者さんに対する超急性期のリハビリテーションの実際や、その特長を紹介します。
※藤田医科大学リハビリテーション科の紹介記事はこちら
藤田医科大学病院 ICU
2009年に開設された藤田医科大学病院の集中治療部は、全身管理のプロフェッショナルとして集中治療や救急領域など、幅広い臨床現場で活動しています。「教育こそすべて:Education is everything」をスローガンに掲げ、診療・教育・研究の3本柱で体制を整備しています。
18床のベッドがあるICUは、「クローズドICU(※)」という形で運営されており、子どもから大人まで、すべての診療科に対応しています。
ICUで特に大切にしているのは、いろいろな専門分野の医師やスタッフがチームを組んで治療を行うことです。毎朝、ICU専任医、主治医、看護師、感染対策チーム専従医師、薬剤師、栄養士、理学療法士、臨床工学技士、各臓器専門医が集まり、カンファレンスを開いています。
理学療法士も2009年の開設当初からコアメンバーとして参加し、日本のICUのリハビリテーション診療を牽引してきました。
※ 「クローズドICU」とは、ICU専従・専任の集中治療医が中心となって管理する運営スタイルのこと。一方、各科がICUの場所を借りて自科の患者の治療を独立して行う運営スタイルを「オープンICU」という。
実際のリハビリテーション
対象
ICUの18床のうち、常に11~12名の患者さんがリハビリの対象となっています。リハビリを受ける患者さんの約75%は、心臓血管外科、消化器外科、呼吸器外科などの予定手術を受けた方です。残りの約25%は、急性呼吸不全、急性心不全、重症外傷、重度の代謝異常、敗血症性ショックなどの緊急入室の患者さんです。リハビリは、48時間以上ICUに入室することが予測された時点で開始されます。
リハビリ内容
リハビリテーションは「早期離床」をテーマに、6段階(0〜5)のリハビリステップ表に沿って進めています。意識、呼吸状態、循環動態など、患者さんの状態に合わせてベッド上でのエクササイズ、座位、起立、歩行練習などを実施します。
セラピストは基本1名で診療を行いますが、 場合よっては担当の看護師さんに手を借りることもあります。
ICUには人工呼吸器などの機械を使用している方も多くいますが、基本的にはそのような機械がついた状態でも離床はすすめていきます。たとえば、人工呼吸器を装着したまま立って足踏みをしたり、歩いたりします。
評価項目・確認事項
ICUでリハビリテーションを開始する際は、以下のポイントを確認・評価します。
リハビリ開始前の確認事項・評価項目の一例
・現病歴と既往歴
・リハビリ時のリスク管理(中止基準)
・リハビリの目的と目標
・身体機能
・意識状態、呼吸状態、循環動態
・デバイス(人工呼吸器およびその設定など)
・MRC(筋力評価)
・握力
・HHD(股関節外転筋力)
・関節可動域
・基本動作能力
・FSS-ICU(動作能力評価)
項目:寝返り、起き上がり、端座位、立ち上がり、歩行
身体機能は毎週再評価を行い、退室時には最終評価を行います。このデータはICU退室後に担当するリハビリスタッフと共有されるため、退室後も途切れることなくリハビリテーションを続けられる体制が整っています。
藤田ICUリハの特長
取材の中で特に魅力を感じた、藤田医科大学病院ICUやリハビリチームの特長をご紹介します。
充実したチーム体制
ICUのリハビリチームは、専任の理学療法士が5名と研修中の若手理学療法士2名で構成され、365日体制でリハビリを提供しています。作業療法が必要な患者さんには、ICU担当の作業療法士3名が対応します。
専任の理学療法士のうち1名は一日中ICUに常駐し、残りの4名はローテーションを組んで午前と午後にそれぞれ1名ずつ診療を行います。研修中の理学療法士も午前と午後に1名ずつ診療のサポートを担当します。
患者さん一人ひとりに対して40分から1時間程度のリハビリを実施しています。
ICU専任の理学療法士が5名もいて、その中にはICUのリハビリのプロフェッショナルである集中治療理学療法士もいるのはとても大きな強みだと感じました。一人ひとりの患者さんにしっかりと時間をかけてリハビリを提供できるのがいいですね。
最新の治療方法の実践
ICUにはたくさんのリハビリ機器・装置が導入され、最新の治療方法が実践されていました。一部を写真付きで紹介します。
◆ 能動型展伸・屈伸回転運動装置(MOTOmed layson.la Pro)
◆ 総合治療用電気刺激装置「G-TES®」
◆ 低周波治療器「SOLIUS(ソリウス)」
◆ 歩行補助車
◆ さまざまなサイズの車椅子
ICUにこれほど多くの治療機器や補助具が完備されていることに大変感動しました。リハビリチームのみなさんの情熱と、集中治療部全体でリハビリテーションに力を入れていることがよく伝わってきます。
「集中治療のゴールは救命ではなく、日常生活や社会生活の復帰である」と集中治療学会が提唱しているように、近年ICUのリハビリテーションが大きな注目を集めています。
重症病態に伴う筋力低下(ICU acquired weakness:ICU-AW)や集中治療後症候群(post intensive care syndrome:PICS)に加えて、ICU退室後のリハビリ難民など、この領域にはまだまだ多くの課題が残っていますが、今後も精力的な研究が進められ、ICUのリハビリテーションが一層発展していくことを心から願っています。
リハノワはこれからも、藤田医科大学病院ICUリハビリチームのみなさんのご活躍を心から応援しています。
本日は貴重なお話をお聞かせいただき、ありがとうございました。
施設概要
■ 病院名
藤田医科大学病院
病院長 白木良一先生
集中治療部 部長 西田修先生
■ 設立
昭和48年5月29日
■ 診療科
内科、精神科、脳神経内科、循環器内科、小児科、外科、整形外科、形成外科、脳神経外科、呼吸器外科、心臓血管外科、血管外科、皮膚科、泌尿器科、産科、婦人科、眼科、耳鼻咽喉科、リハビリテーション科、放射線科、歯科、矯正歯科、小児歯科、麻酔科、病理診断科、救急科
■ 病床数:
1,376床(一般:1,325床 精神:51床)
※回復期リハビリテーション病棟 60床
■ 所在地
〒470-1192
愛知県豊明市沓掛町田楽ケ窪1番地98
■ 問い合わせ
TEL:0562-93-2111(代表)
■ 関連情報
・HP(藤田医科大学病院リハビリテーション科)
・集中治療理学療法士について
<関連記事>
・藤田医科大学病院リハビリテーション科
・ICUの専任理学療法士・篠原史都さん
ぜひ合わせてご覧ください。
撮影:ひろし
以上、本日は藤田医科大学病院ICUでのリハビリテーションの実情を紹介しました。
ひとりでも多くの方に藤田医科大学病院のICUに関わるみなさんの素敵な想いと魅力がお届けできれば幸いです。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
今後ともリハノワをよろしくお願いいたします!
かわむーでした。
この取材は、施設から同意を得て行なっています。本投稿に使用されている写真の転載は固くお断りいたしますので、何卒宜しくお願い申し上げます。
リハノワは、株式会社Canvas、他パートナー企業、個人サポーター、読者の皆さまの応援のもと活動しています。皆さまからのご支援・ご声援お待ちしております。
※取材先や取材内容はリハノワ独自の基準で選定しています。リンク先の企業と記事に直接の関わりはありません。
コメント