みなさんこんにちは、リハノワのかわむーです!
今回は、東京都杉並区にある「方南ローカルグッドブリュワーズ」さんを取材しました。
方南ローカルグッドブリュワーズは、障がいのある醸造士たちが活躍するクラフトビールの醸造所です。方南町の商店街と協働・連携し、障がいのある方の雇用促進や地域活性化を推進しています。
本記事では、今ホットなまち・方南町の商店街と共に歩む、方南ローカルグッドブリュワーズの醸造所や仕事内容、商品の魅力や代表/スタッフの声を紹介します。
方南ローカルグッドブリュワーズ
2022年3月に設立された方南ローカルグッドブリュワーズ(HONAN LOCAL GOOD BREWERS)は、障がいのある醸造士たちが方南町のために活躍するクラフトビールの醸造所です。
以前リハノワでも紹介した、障がいのあるバリスタや焙煎士が活躍する福祉施設「ソーシャルグッドロースターズ千代田」を運営する一般社団法人ビーンズが、方南銀座商店街の委託を受けて施設外就労として運営しています。
方南ローカルグッドブリュワーズは、障がいのある醸造士の挑戦と成長、ビールを楽しむまちの人々など、常に「人を中心に考える」ことを大切にしています。
月〜木曜日はビール製造、金〜日曜日は店舗にて販売が行われます。
名前の由来
ローカルグッドは「地域貢献」、ブリュワーズは「醸造士たち」意味します。場所としての説明「ブリュワリー(醸造所)」ではなく、ビールの作り手である「ブリュワーズ(醸造士)」を名前に掲げたのには、クラフトビール作りは人が中心であることを大切にしたいという想いが込められています。
2つの特長
◆ 就労支援で挑戦と成長を
クラフトビールの醸造という仕事は、障がいがあっても挑戦してみたい魅力的な仕事です。方南ローカルグッドブリュワーズでは、周囲のサポートを受けながら醸造に関する専門的な技術や知識が経験できます。
美味しいビールができたときの喜びや、「美味しいよね」「方南町にこんなところができて嬉しいよね」というお客さんの笑顔が、働くスタッフの成長の糧になります。
醸造するスタッフの育成は、障がいのあるバリスタや焙煎士が活躍する「ソーシャルグッドロースターズ」が担い、珈琲の味作りや技術を生かしてクラフトビールを作ります。
◆ 方南町への地域貢献
地域の関係者が集まり、地域の人々をつなぐ新しいツールは何が良いのかアイデアを出し合ったところ、最終的に選ばれたのがクラフトビールでした。
方南ローカルグッドブリュワーズは、誰からも愛される高品質なクラフトビールが街の新しいアイコンとなり、方南町が盛り上がり魅力的な街となることを目指しています。
クラフトビールの利益は、障害者の就労支援や子どもたちのために運用されます。
醸造所&作業紹介
実際にビールづくりが行われる醸造所や作業の様子を見学させていただきました。
施設紹介
◆ 醸造所
方南ローカルグッドブリュワーズの醸造所では、工程ごとにタンクが別れています。大手ビールメーカーの工場ではタンク1台で何工程もできるようになっていますが、ここでは、障がいのある方(利用者さん)が作業を学びやすいように、ビールづくりの工程ごとに全8台が設置されています。
◆ 店舗
毎週金曜日〜日曜日の11:00〜19:00で、店舗販売を行っています。商品を売るのも、利用者さんの仕事です。
◆ 休憩所/作業所
醸造所の2階は、休憩所兼作業場になっています。立ち仕事が多くなるため、体調に合わせて定期的に休息をとります。
仕事内容
利用者さんには、クラフトビールの醸造から充填、接客まで全ての工程に関わってもらいます。
方南ローカルグッドブリュワーズの作業内容は、大きく以下のように分けられます。
1)麦芽の小分け
2)麦芽を砕く
3)砕いた麦芽をお湯に混ぜ合わせて糖化液をつくる
4)濾過する
5)ホップを加えて煮沸する
6)冷却し、酵母を加えて発酵させる
7)貯酒(熟成)
8)濾過
9)容器詰め
10)ラベル貼り
11)接客
作り方の特徴として、方南ローカルグッドブリュワーズでは、珈琲×就労支援事業所「ソーシャルグッドロースターズ」のバリスタたちが、珈琲の淹れ方を活かしたビール作りをしていました。
限られた特別なコーヒーだけが持つ雑味のないクリアな味わいを「クリーンカップ」と呼びますが、これをクラフトビールでも再現しているイメージです。
麦芽を煮出す「糖化」の工程は、浸漬式というコーヒーの抽出方法と似ています。ハンドドリップと同じように雑味なく成分だけを抽出できるように、ビールづくりにおいてもお湯の温度や抽出時間、挽目、香りに関係するホップの量や組み合わせなどが細かく調整されていました。
バリスタとしての強みが発揮されていたことに驚きました。ビールづくりの秘話まで聞けて、ますます方南ローカルグッドブリュワーズのファンになりました…!
職業支援員の声
職業支援員の白水さんに、利用者さんとの関わり方で大切にしていることや印象に残っているエピソード、支援体制についてお話を伺いました。
方南ローカルグッドブリュワーズは、一般社団法人ビーンズが運営する就労継続支援B型事業所「ソーシャルグッドローズターズ」と「テントーン」の利用者さんが施設外就労といった形で仕事をしています。
醸造や充填、販売、どの工程も大切で、それぞれの工程に同じように難しさはありますが、私たちは利用者さんが自分の考えで行動し、主体的に活動ができるようサポートすることを大切にしています。
作業では、重たいものや熱いものを扱うので思いもよらぬ危険が伴います。そのため、安全管理はしっかりと行い、丁寧にすすめていくことを徹底しています。
私のやりがいは、利用者さんに変化がみられた時です。例えば、ここで仕事をするなかで自信がつき、「ビールづくりの戦力になります!」というコメントが聞かれたり、他のメンバーと作業をする中で自分の得意と不得意を理解し行動できるようになった姿を見たりした時は、とても嬉しかったです。
現在は、方南ローカルグッドブリュワーズにおける「キャリアプラン」を構築中です。ここを利用してくれるメンバーの成長のために、ひいては方南町商店街の発展のために、私たちはこれからも目の前の利用者さんとビール作り、方南町という地域に真摯に向き合い続けます。
商品について
方南ローカルグッドブリュワーズの5つの商品と購入方法を紹介します。
商品紹介
◆ LOCAL GOOD ALE
華やかな香りとコク、バランスの良い味わいが特徴のエールビール
◆ UNIVERSAL ALE
アルコール度数を1%まで落とした、通常のアルコール飲料が飲めない人に向けたエールビール
◆ PAN ALE
小麦を主原料とした、まるで高級食パンのような味わいのエールビール
◆ HONAN ALE
商店主の声を味わいに反映させたエールビール
◆ WINTER ORANGE(季節限定)
オレンジをふんだんに使用した季節限定ビール
クラフトビール好きとして、実際に5種類のビールを飲ませていただきました!
看板商品である黄色いパッケージの「LOCAL GOOD ALE」は、ホワイトビールのようなクリアでさっぱりとした感じがあり、雑味がなくごくごくと飲めました。
初回取材日はとても暑かったので、あっという間に飲みきってしまいました。クラフトビール特有のクセが苦手な方や、ビール自体が苦手な方も飲みやすいのではないかと思います。
「どんな方にも親しみやすく、思わずもう一杯のみたくなるクラフトビール」というキャッチコピー通りのユニバーサルなビール。どのビールもとても美味しかったです。
購入方法
現在、店舗とオンラインにて販売しています。
◆ 店舗販売
営業日:毎週金〜日曜日
営業時間:11:00〜19:00
住所:東京都杉並区方南2丁目11-7
(アクセス情報は以下に記載しています)
方南銀座商店街の飲食店(居酒屋やフレンチ、定食屋さんなど)では飲むこともできます。
◆ オンライン販売
こちらのECサイトからお買い求めいただけます。
代表インタビュー
◆ 坂野拓海(さかの・たくみ)さん
1980年徳島県出⾝。⼈事として障がい者採⽤に関わった事がきっかけで当事者の悩みや孤独を知り、ボランティアでの活動を経て2016 年に障がい者施設を運営する⼀般社団法⼈ビーンズを設⽴。現在は都内で保育や就労⽀援を⾏う6 施設7 サービスを運営している。2018 年に千代⽥区との協同で設⽴した障がいのあるコーヒーバリスタを育成する福祉施設ソーシャルグッドロースターズはユニークさから内閣府のモデル事業として取材され、2020 年にグッドデザイン賞、2022年にはIAUD国際デザイン賞・金賞を受賞するなど注⽬を集めている。
坂野さんが、方南町で就労支援事業を始めることになったきっかけや、これまでの歩みを教えて下さい。
東京都杉並区にある方南町は、もともと多様性を受け入れる土壌のあるとても元気なまちでした。
方南町ビールプロジェクト実行委員会を一緒に運営しているNPO法人ふるさとネッツさんは、障がいのある子どもたちと一緒に遊ぶユニークなイベント(お化け屋敷など)を定期的に開催していました。
ふるさとネッツさんの理事の方とは以前から友人で、いつか方南町で福祉を絡めた地域貢献事業をやりたいねと話していたんです。
そして、2021年夏、ついにプロジェクトが動き出しました。
プロジェクトが動き出してから開店まで1年だったとは、驚きです!
すごいスピードで動いていきました。
まずは、商店街の方も含めて「商店街からまちを盛り上げていきたい!」というところから話がスタート。商店街の課題って何だろうと皆で話し合いをすすめるなかで、ビールというツールに辿り着きました。
「ビール、作れるの?」という心配の声も聞かれましたが、僕は「作れます!」と即答。正直ビールづくりは全く分かりませんでしたが(笑)、クラフトビールの醸造所に手ほどきをうけながら、酒販をとる過程でもその仕組みを学んできました。
坂野さんは、今後ここが「どのような場所になって欲しい」と考えていらっしゃいますか?
私は、ここが多様性のあるまちづくりの出発点となってほしいと考えています。
ここで働くメンバーがいずれは醸造所から飛び出し、地域の別のお店で働いたり、まちのイベントや活動に積極的に関わっていって欲しいと考えています。
そうなった時、多様性のあるまちづくりは実現できていると思います。ビール作りや接客を通じた人や街との繋がりが徐々に方南町の地域に広がり、いずれはまち全体が就労支援施設になっていくような未来を描いています。
そうなった時には、もはや就労支援というものは必要なくなっているかもしれません。私は、方南町がそんな地域になってほしいと願っています。
そこに、作業療法士さんなどリハビリ専門職の力も加わっていけば、もっと良い世界がつくれると思います。
私は、いろんな方々と手と手を取り合い、社会と福祉の壁をなくしていきたいです。
ビール作りも福祉もゴールではなく手段であり、関わる人がどう発展していくかが全てなんだということを改めて実感しました。
取材を通して「障害とか福祉が混ざり合っている世界」がまさに体感できたように思います。なんて心地よく、楽しく、活気に溢れているんだろうかとワクワクしました。
坂野さんがおっしゃる通り、福祉業界で活躍するセラピストが、今後さらに増えていくといいですね。活躍の幅も広がるなと感じました。
方南ローカルグッドブリュワーズが出発点となり、地域がさらに素敵なまちへと発展していくことを心から応援しております。
坂野さん、方南ローカルグッドブリュワーズのスタッフの皆様、商店街の皆様、ありがとうございました。
アクセス
<店舗情報>
〒101-0054
東京都杉並区方南2丁目11-7
TEL : 080-4618-9690
<アクセス>
東京メトロ丸ノ内線 方南町駅 2番出口より徒歩2分
施設概要
■ 醸造所名
方南ローカルグッドブリュワーズ
■ 運営
一般社団法人ビーンズ(代表理事 坂野拓海)
■ 開設
2022年3月
■ 事業内容
クラフトビール醸造、施設外就労支援
■ 開所時間
月〜木 10:00-16:00 醸造作業
金〜日 11:00〜19:00 販売■ 利用対象
障害福祉サービスの支給決定を受けた方 (一般社団法人ビーンズが運営する作業所の利用者のみに限る)
■定員
10名
■関連情報
・代表・坂野拓海さんインタビュー記事
・ソーシャルグッドロースターズ紹介記事
・方南ローカルグッドブリュワーズ HP
・ソーシャルグッドロースターズHP
撮影:ひろし(カメラマン/理学療法士)、かわむー
以上、本日は東京都杉並区にある「方南ローカルグッドブリュワーズ」さんを紹介させていただきました。
一人でも多くの方に、方南ローカルグッドブリュワーズさんの素敵な想いと魅力がお届けできれば幸いです。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
今後ともリハノワをよろしくお願いいたします!
かわむーでした。
この取材は、施設から同意を得て行なっています。本投稿に使用されている写真の転載は固くお断りいたしますので、何卒宜しくお願い申し上げます。
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