【当事者の声】はるくんのオンラインST体験記!「できた」の笑顔が成長の種に

みなさんこんにちは、リハノワのかわむーです!

今回は、オンラインでのST(言語聴覚療法)に取り組む一般社団法人Coco-onさんにご協力をいただき、実際にオンラインで言葉のリハビリに取り組まれた、はるくんのお母さまにお話を伺いました。

この記事では、当時6歳だったはるくんのレッスンの様子や、オンラインならではの工夫、そして、同じようにことばの発達に向き合うご家族の方へ向けたメッセージをご紹介します。

オンラインSTのはじまり

かわむー
かわむー

現在10歳のはるくんですが、小学校入学を控えた6歳の春(3月〜5月)に、オンラインでST(Speech Language Hearing Therapy:言語聴覚療法)のレッスンを受けられたそうですね。STをはじめたきっかけについて、教えてもらってもよろしいでしょうか。



はるくんのお母さま
はるくんのお母さま

きっかけは私の母の「『か行』がうまく言えていないみたい」というひと言でした。

日常生活に支障がなかったので、私自身はそこまで気にしてなかったのですが、息子の言葉をあらためて聞いてみると、「か」が「た」になってしまうことがありました。喉の奥で発音する「K」の音が出しづらいようで、一生懸命話してくれるのに、うまく伝わらない場面があったのです。

母が職場の同僚だった言語聴覚士の知念洋美さんに相談してくれました。知念さんは、病院退職後、2022年に法人を立ち上げ、オンラインでSTのレッスンを行ったり教育に力を入れたりしている方です。

知念さんからは、「小学校に入る前に取り組めるといいね」とアドバイスをいただきました。オンラインでできるという気軽さもあり、レッスンをお願いしてみることにしました。

オンラインSTに取り組む、知念洋美さん(一般社団法人Coco-on 代表)

プログラムのすすめ方

かわむー
かわむー

オンラインでのSTはどのように進められていったのでしょうか。実際の内容や目標について、ぜひお聞かせください。


はるくんのお母さま
はるくんのお母さま

いきなりオンラインから始めるのは難しいということで、まずは一度、対面で面談を行うことになりました。そこでは、息子の舌の動きや発音のようすを丁寧に見ていただき、私からも気になっていた点をお伝えしました。

初回の面談から約2週間後、オンラインでのレッスンがスタートしました。

目標として、まずは「か行」の音をしっかり言えるようになること。そして、それに関連して「うがい」ができるようになることを目指していました。

レッスンはすべてオンライン形式で、1〜2週間に1回、1回あたり30〜45分ほどのペースですすんでいきました。小学校入学前の3月は、朝8時頃からレッスンを受け、そのまま息子は保育園へ。私は在宅勤務へと切り替える、という流れですすめていました。小学校が始まった4月以降は、主に土日の空いている時間にあわせてお願いしました。

コロナ禍の影響で、夫婦ともに在宅勤務が続いていたこともあり、マイクやノートパソコンの準備など、受講環境は問題なく整えられました。


STのオンラインレッスンの様子


はるくんのお母さま
はるくんのお母さま

レッスンの内容は、まず息子との30分のセッション。そのあとに、私と15分ほどの面談タイムがありました。

セッションでは、絵カードなどを使いながら発音の練習をしたり、舌の動かし方を確認したりと、楽しく取り組める工夫がたくさんありました。面談では、毎回の宿題の確認や、どんなふうに取り組めたかのふり返りなどを行いました。

宿題として出されていたのは、「舌を動かす体操」や「発語の練習」、「うがいの練習」などです。「か行」がうまく言えないと、うがいも難しいと教えていただき、「なるほど」と納得したのを覚えています。

また、小学校で音読の宿題がでるのですが、「きゃ」などの拗音(小さい「ゃ」が入る音)も難しいことに気が付きました。

音読とSTのレッスンに重なる部分もあったので、音読も含めて、毎日、息子と一緒に練習に励みました。


発音の練習をするはるくん(お母さまより写真提供)

練習の成果と現在のようす

かわむー
かわむー

STのレッスンを続けるなかで、うれしかった瞬間や印象に残っている出来事があれば教えてください。また、現在のはるくんの様子についても、お聞かせいただけますか?


はるくんのお母さま
はるくんのお母さま

印象的だったのは、うがいができるようになった瞬間です。それまでは難しかったのですが、ある日、「できた!」と声をあげて、とびきりの笑顔を見せてくれました。その表情を見たとき、親として本当にうれしくて、思わず私も笑顔になりました。

現在の発音については、特に大きな問題は感じていません。ただ、リハビリとは関係ないのですが、ちょっと音痴なところがあって(笑)。そんな話を雑談ベースで知念さんにしたら、「実は私も昔は音痴だったんですよ」と、笑いながら話してくださいました。

「指摘をするとコンプレックスにもなっちゃうから、それもOK、OK」と、やさしく声をかけてくださったのが印象に残っています。

また、いまは歯の矯正をしているのですが、そこで取り組んでいる舌の動きのトレーニングがSTの練習と少し似ている部分もあります。あのときの積み重ねが、いまもちゃんと活きているんだなと感じています。

うがいが初めてできた日の一枚(お母さまより写真提供)
「できるようになった〜!」と喜ぶはるくん(お母さまより写真提供)

本人・家族に寄り添って

かわむー
かわむー

レッスンに取り組むなかで、大変だったことや工夫されたことがあれば教えてください。


はるくんのお母さま
はるくんのお母さま

大変だったことを挙げるとすれば、日程調整でしょうか。

小学生になると、どうしても平日朝の時間が取りづらくなるので、入学前に取り組みを終えられたら、もっとスムーズだったのかなとも思います。でも、ちょうど音読の練習が始まる時期と重なったことで、STの内容ともリンクして、いい流れで取り組めたのはラッキーだったと思っています。

毎日10分ほどの家庭での練習も、続けていくとなると簡単なことではありませんでしたが、息子はコツコツ頑張れるタイプで、本当によく取り組んでくれました。

レッスン中も、30分という時間の中で集中力が切れてしまうことはありましたが、知念さんがいつも息子のようすを見ながら、無理のないペースで進めてくださいました。うまくいかないときは、「今日はここまでにしようか」と、無理に続けず、気持ちに寄り添ってくださっていたのが印象的です。

私自身は、どうしても親として「もっとこうしてみたら?」「集中するよ」と言いたくなってしまう場面もあったのですが、知念さんからは、「このくらいで十分ですよ」「あまり追い込みすぎなくて大丈夫です」と、やさしくアドバイスをいただきました。そのようなコミュニケーションをとっていただけたのは、すごく良かったですね。


かわむー
かわむー

ちょうどご入学の時期と重なって、日々お忙しかったかと思いますが、オンラインだったからこそ、無理なく続けられた面もあったのではないでしょうか。日本ではオンラインSTの環境はまだ発展途上といわれていますが、実際に体験されてみて、オンラインだからこその良さや難しさを感じた場面があれば、ぜひお聞かせいただけるとうれしいです。


はるくんのお母さま
はるくんのお母さま

たしかに、オンラインだけで舌の動きをしっかり確認したり、マイク越しに発音を正確に聞き取ったりするのは、難しさがあるのかもしれません。

でも私たちの場合は、レッスン前に一度、対面でお会いして直接みてもらう機会があったので、その点はとても安心できました。はじめに顔を合わせていたことが、その後のオンラインレッスンのスムーズさにつながったのだと思います。

また、環境面で困ることはまったくありませんでした。夫婦ともに普段からオンラインで仕事をしていたので、カメラやマイクなどの準備も自然と整っていて、負担に感じることはなかったですね。

知念さんとは、母を通じてもともとご縁があり、初めから信頼感をもって関わることができたのも大きかったと思います。息子も、あまり人見知りをしない性格なので、すぐに打ち解けてくれました。

レッスンが終わるときには、寂しさからか息子がぽろっと泣いてしまうこともありました。それだけ、知念さんのやさしさがきちんと伝わっていたのだと思いますし、安心して取り組めていた証なのかなと感じています。


成功体験の積み重ねが財産に

かわむー
かわむー

最後に、ことばの発達について気になっている保護者の方へ、何かメッセージがあればぜひお願いいたします。


はるくんのお母さま
はるくんのお母さま

最初は「ちょっと発音の練習になればいいかな」くらいの軽い気持ちで、STのレッスンを始めました。でも後になって、小学校から「発音に悩んでいるお子さんへ」というプリントが配られたことがあり、実際に困っている子どもやご家族がたくさんいるのだと知りました。

リハビリという言葉には、「マイナスをゼロに戻す」ようなイメージをもっていましたが、実際はそれだけではありませんでした。発音の練習が、うがいのような日常の動作にもつながっていくという発見があり、「むしろプラスになることがある」と感じました。

3ヵ月という限られた時間のなかで、毎回、小さなミッションをひとつずつクリアして、「できることが増えていく」という成功体験を重ねられたことは、息子にとっても、私にとっても大きな財産となりました。いま振り返ると、生涯学習という視点でもとても良い経験だったように思います。

目標も明確ですし、3ヵ月という期間で得られたものは、本当にたくさんありました。「習いごとのひとつ」と思って、まずは気軽にトライしてみるのもいいかもしれません。


かわむー
かわむー

あたたかい素敵なメッセージをありがとうございます。「ハンデを克服する」というよりも、ちょっとした「習いごと」のように楽しみながら取り組まれていた姿がとても印象的でした。「できることを増やしていく」「前向きな経験を積み重ねていく」ことの大切さを、あらためて教えていただいたように思います。

少し専門的な表現になりますが、本来「ハビリテーション」という言葉には、子どもたちが本来もっている力を引き出し、発達を促していくという意味があります。けれども一般的には、「リハビリテーション」という言葉が使われることが多く、「治す」「戻す」といった印象が先行してしまいます。こうしたお子さんへの支援がもっと広く伝わっていくためには、言葉の選び方ひとつにも気を配っていきたいと、あらためて感じました。

これからも、はるくんが自分らしくのびのびと過ごせますように。そして、お母さまにとっても、日々がより豊かで、笑顔あふれる時間となりますよう心から応援しています。

本日は、貴重なお話をお聞かせいただき、ありがとうございました。



かわむー
かわむー

<はるくん関連記事・情報>

言語聴覚士・知念洋美さん取材記事
Coco-onホームページ


ぜひ合わせてご覧ください。


以上、今回はオンラインSTに取り組む一般社団法人Coco-onさんにご協力をいただき、実際にオンラインで言葉のリハビリに取り組まれた、はるくんをご紹介しました。

ひとりでも多くの方に、はるくんとお母さまの素敵な想いと魅力がお届けできれば幸いです。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

今後ともリハノワをよろしくお願いいたします!


かわむーでした。

この取材は、ご本人から同意を得て行なっています。本投稿に使用されている写真の転載は固くお断りいたしますので、何卒宜しくお願い申し上げます。

リハノワは、株式会社Canvasパートナー企業個人サポーター、読者の皆さまの応援のもと活動しています。皆さまからのご支援・ご声援お待ちしております。

※取材先や取材内容はリハノワ独自の基準で選定しています。リンク先の企業と記事に直接の関わりはありません。

コメント

タイトルとURLをコピーしました