みなさんこんにちは、リハノワのかわむーです!
今回は、京都府京田辺市にある農業を手段とした就労継続支援B型事業所「三休」で働く、スタッフの八木慎一さんにお話を伺いました。
本記事では、八木さんが三休で働くきっかけやオープン当初からの歩み、福祉や農業にかける思いについてご紹介します。
スタッフ・八木慎一さん
◆ 八木慎一(やぎ・しんいち)さん
1984年神奈川出身・大阪育ち。大学院で人文科学を研究した後、保育士免許取得。保育園や子ども専門のリハビリ施設、障害福祉の作業所で勤務した後、2018年就労継続支援B型事業所「三休」に参画。オープニングスタッフとして農業や福祉支援業務に従事する。
僕は、大学院で人文科学を専攻し「障害を持つ子どもの親」の研究をした後、昔から子どもが好きだったことから保育士の資格を取得して保育園に就職しました。
集団保育に携わるなかで、「一人ひとりの個性に丁寧に向き合いたい」「障害をもつ子どもの遊びに関わりたい」と思うようになり、子ども専門のリハビリ施設(医療機関)に転職しました。
子ども専門のリハビリ施設では、個別対応ができることに喜びは感じつつも、入所中の子どもたちに「ごめんね」と言ってばかりで、まったくニーズに応えられないことに悶々としました。子どもたちは外で遊びたくてしょうがないのに、そんな簡単な希望すら叶えてあげられなかったのです。
そのため、その後は地域の障害福祉の作業所(生活介護)で働くことにしました。そこでは、重度の障害をもつ方々の支援を1対1で丁寧に行うことができ、また地域にもコミットしながら活動できたのでとてもやりがいを感じました。
アメリカのシカゴとカルフォルニア、スウェーデン、スイスに3ヶ月間福祉留学もし、海外と日本の福祉の違いも学びました。
福祉をまちづくりの視点で
障害福祉の作業所でやりがいを感じながら様々な経験を積んだ八木さんですが、三休で働くことになったきっかけは何だったのでしょうか。
2018年に京田辺市に移住したことがきっかけです。
「チャリティーアパレルブランドJAMMIN」の創設者の西田さんとお会いした時に、たまたま2019年から福祉施設を始めることを聞いたのです。
「まちづくり」という視点をもって福祉事業を展開しようとしていたことに共感し、「一緒に働きたい」とお伝えしました。そして、事業所のオープニングスタッフとして、オープンの半年前頃から一緒に活動をはじめました。
障害者が暮らす地域ごとアプローチしていこうという三休の思いや活動は本当に素晴らしいですよね。オープン前は、どのような活動をされていたのですか?
福祉のまちづくりが広がっていくように、地域住民を巻き込んだ野菜が入場料の音楽イベント「THANK YOU TABLE」をオープン1ヶ月前の2019年3月に開催しました。
イベントでは、参加者がそれぞれ持ってきた野菜を使って、シェフが料理を作ります。カウンターに並べられた美味しい料理を食べながら、音楽も一緒に楽しむというイベントでした。
いろんな思想をもった人たちが集まったのですが、そのごちゃまぜ感がとても心地良かったです。福祉事業所で地域づくりもすることができるなんて「なんて魅力的な職場なんだろう」と改めて誇りに思った1日でした。
ゼロからのSTART
実際に事業所がオープンしてからはどうでしたか? 農業はゼロからのスタートだったそうですが、現在に至るまでどのように歩んでこられたのか教えて下さい。
1年目は、ハーブと万願寺とうがらしを育成する農家さんの力を借りながら進めていきました。
毎日午前中は、農家さんのハーブ農園のハウスにお邪魔しました。彼と一緒に仕事をするなかで農業を教えてもらうのです。午後は自分たちの畑に行って、野菜づくりを行いました。
しかし、右も左も分からない状態。鍬(くわ)、種、水だけで農業を進めようとしていたので、雑草も生えるし虫もくる。当然、野菜はほとんど収穫できませんでした。
やっとできた野菜も規格にのらないものが多く、売上には繋がりませんでした。
土壌ができるまで時間もかかりそうですし、1年目は相当苦労されたことと思います。2年目以降は、いかがでしたか?
2年目からはハウスを借りて、万願寺とうがらしの栽培をはじめました。それが、売上全体の3〜4割をしめるようになります。「万願寺とうがらしでやっていける…!」という道筋が見えてきました。
また、1年目から育てていたローゼルやミント、ホーリーバジルなども、いつ植えていつ収穫できるかなどのスケジュールが見えるようになりました。
2年目が終わる頃には、夏は万願寺とうがらし、秋はローゼル、冬はベビ―リーフという流れが確立し、通年の作業のリズムが整いました。
初年度の売上は十数万。そこから次第にあがっていきました。
農業と福祉のバランス
八木さんが日々お仕事をするなかで、大変なことやつらかったことなどがあれば教えてください。
福祉も農業もゼロからのスタートだったので、初年度はとにかく大変でした。
農業が軌道にのらないことには売上がたたない。売上がそのまま工賃にも影響するので、「プロを目指すのが当たり前」と気持ちを切り替え、安定した野菜づくりができるよう農業に本気で取り組みました。
オープン当時は、メインは福祉だから「農業はおまけ」というイメージが自分の中にあったと思います。しかし、そんな気持ちでは福祉事業所としても成り立たないし、農家さんにとっても失礼だと感じ、舵を切ったのでした。
そういった葛藤も経て、野菜が安定して収穫できるようになったのですね。仕事をするなかで、楽しいことや嬉しかったこと、やりがいを感じる瞬間などがあれば教えて下さい。
農業の観点でいうと、ベビーリーフは育てるのがけっこう難しいのですが、自然環境に左右されることなく綺麗に発芽できる畑ができた時はとても嬉しかったです。
40〜50種類の野菜やハーブのなかから組み合わせるのですが、その組み合わせによっては味も変わってくるので、まるで畑で料理をしているような感覚でとても楽しいです。
福祉の観点でいうと、メンバー(利用者)の成長を感じた時はとても嬉しいです。
時には、作業中にメンバー同士ですれ違いが生じ、作業が全く進まなくなることもあります。一人ひとりの個性に丁寧に向き合いながら、必要に応じて手を差し伸べることに難しさを感じたこともあります。しかし、今ではそういったことも含めて楽しめる余裕がでてきました。
自分の仕事に責任をもち、仕事をきちっと遂行できるようになったメンバーの成長には、胸をうたれます。
「仕事」と向き合う
実際に農園で取材をさせてもらいながら、八木さんの福祉や農業に対する熱量の高さやきめ細やかな配慮が素晴らしいと感じました。
三休を運営するなかで大切にしていることは何ですか?
僕は、メンバーがやりがいや責任をもって仕事ができているか、そのサポートは常に意識しながら行っています。
畑での農作業も、室内での農作業も、どちらも責任をもってやることに変わりはありません。
また、日々の作業量や翌日・翌週の見通しをしっかりと立てたうえで仕事を振り分けることも意識しています。
最初の頃は仕事がないこともありましたが、今は作業量が増えてきて、いろんな仕事を生み出せるようになりました。
取材当日も、八木さんは朝、畑の様子を見てから事業所に出勤され、1日の作業内容を設計しておられました。メンバーが活動しやすいように見えない所でたくさん動かれているのがよく分かります。八木さんの原動力は何なのでしょうか?
オープン当時、現場スタッフは施設長の世古口さんと僕の2人だったので、とにかく自分たちでやるしかない!と必死でした。
何をしても責任がともないます。しかし、それが毎日にとても刺激を与え、面白くしてくれました。
その時の気持ちは、今も変わらず持っています。
今後挑戦したいこと
最後に、八木さんが今後挑戦したいことを教えてください。
今後は、農業の年間スケジュールをさらにしっかりと固めていきたいです。
また、育てたハーブでハーブティーも作っているのですが、この事業に力を入れていきたいです。
味を表現するのってすごく難しいのですが、僕の性格上、難しいほどにやる気が出てくるんです。今後はブレンドティーを作っていきたいと考えています。
メディカルハーブ検定も合格したので、次回はハーバルセラピストを取得しようと思っています。
やりたいことがたくさんあって素敵ですね!
実際に三休の自家製ハーブティーも飲ませていただきましたが、とっても美味しかったです。
オープニングスタッフとして、農業と福祉のバランスのとり方に悩みながらも、日々、事業の繁栄のために尽力されている八木さんをはじめ、三休のみなさんのことをこれからも応援しています。
取材に丁寧に応じていただいた八木さん、施設長・世古口さん、メンバーの皆さま、本日はありがとうございました。
<関連記事>
・「三休」の事業所紹介と施設長・世古口さんの声
・メンバー・今村さんの声
ぜひ合わせてご覧ください。
以上、京都府京田辺市にある農業を手段とした就労継続支援B型事業所「三休」で働く、スタッフの八木慎一さんを紹介しました。
一人でも多くの方に、八木さんの魅力と素敵な想いがお届けできれば幸いです。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
今後ともリハノワをよろしくお願いいたします!
かわむーでした。
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