【当事者の声】がん治療とリハビリの日々。大切な目標があるから、今日も僕は頑張れる|沼田さん

みなさんこんにちは、リハノワのかわむーです!

今回は、食道がんの治療とリハビリテーションに取り組まれている沼田さんを取材しました。

本記事では、沼田さんの実際のリハビリの様子やご本人の声を紹介します。

沼田さんとリハビリ

 沼田さん(70代)

「読み書き」に困難のある人のために、道具の紹介やデジタルツールを活用したサポートを行うボランティア団体「厚木デイジー」を立ち上げ、精力的に活動していた。2022年夏、急性膵炎をきっかけに食道がんが見つかり、同10月より化学放射線療法を開始。抗がん剤による副作用のため寝たきりの状態となり、体力向上および在宅復帰を目指してリハビリテーション開始。現在は、ボランティア活動の復帰を目標に治療とリハビリテーションに励んでいる。

(写真:ご本人より提供)

かわむー
かわむー

沼田さんが、リハビリを始めることになったきっかけについて、可能な範囲で教えていただいてもよろしいでしょうか。


沼田さん
沼田さん

私は現在、食道がんに対する治療とリハビリをおこなっています。

最初に身体の異常を感じたのは2022年7月のことでした。前日からお腹の苦痛があったため近所の医院に行ったところ、「すぐに大きい病院を紹介します」と言われ、現在お世話になっている病院を受診しました。

検査の結果、急性膵炎ということが判明し、即入院。1週間くらいでお粥が食べられるくらいまで改善しましたが、膵炎を起こした原因を調べるために内視鏡の検査をすることになりました。

そして、食道がんが見つかったのです。その時は率直に「まさか自分が…」と思いました。しかし、落ち込んでいる暇もなく、治療方針など今後に関する話がバタバタと進んでいきました。

結局、私は化学放射線療法という治療を選択しました。10月に入院し、28日間にわたる治療を実施。やっと退院できたと思ったら、帰宅後は副作用がひどく家で過ごすことが難しくなり、再び入院することになりました。

2回目の入院の時から、治療に加えてリハビリが開始となりました。


かわむー
かわむー

ご自宅で過ごすことが難しいほど副作用がひどかったのですね。身体的にも精神的にも、かなり辛い状況だったのではないかと思います。

2回目の入院時、症状が落ち着いてリハビリが開始できたのはいつ頃だったのでしょうか。


沼田さん
沼田さん

再入院後は、副作用がひどく3週間ほど寝たきりの状態が続きました。ようやく動けそうだと思えてきた頃、主治医の先生から「そろそろ身体を動かしていきましょう」と言われて、リハビリを始めることになりました。

初回の入院時、病室の隣の人がリハビリしているのをみて「大変そうだな〜」と思っていました。その時の私は、トイレまでは自分で歩いて行けていたので、まるで他人事です。

リハビリ開始当時、私は「歩けない」「動けない」という状態に陥っていました。床に落ちたものを拾う、などの簡単な動作でさえ難しくなっていたのです。実際にセラピストの方が病室にきて、現在の状態やリハビリに関する説明をして下さり、ようやく自分事となりました。

たった3〜4週間程でここまで動けなくなるなんて」と驚いたのとともに、改めてリハビリの重要性を感じたのでした。

リハビリは、まずは足踏みなどの簡単な運動からスタートしました。1週間程続けることにより、点滴棒に掴まりながらなんとか5〜10mくらい歩けるようになりました。

しかし、ようやく病棟を歩けるようになった頃、39.9度の発熱とともにイレウス(腸閉塞)を発症。再び寝込むこととなり、スタートラインに後戻りしました。

3週間の寝たきりにより想像以上に弱っていた身体を元に戻すのは、とても大変でした。


かわむー
かわむー

病気になる前までは元気に活動されていたので、たった3週間で「歩けない」「動けない」となった状況には本当に驚いたことと思います。

再度イレウスに対する治療やリハビリも行われたかと思いますが、退院に向けてはどのような準備をされましたか?


沼田さん
沼田さん

体調がよくなってきたところでリハビリを再開し、歩いたり階段を上り下りしたりする練習を行いました。私は心房細動もあるので、リハビリの先生には不整脈にも気をつけながら進めてもらいました。

また、リハビリと同時並行で、家に帰った後の生活のために介護保険の申請もおこないました。要介護認定をもらって、家にベッドを入れたり、訪問リハビリに来てもらう調整をしたりしました。

退院後は、週に2回40分のリハビリを行いました。歩いたり階段を上り下りしたりする基礎的な練習はもちろん、バランスの練習なども行います。

退院した直後は杖を使ってなんとか歩ける状態でしたが、次第に杖なしでもスムーズに歩けるようになりました。


退院後、自宅でリハビリに励んでいる様子(写真:ご本人より提供)

教科書を待つ子どもたちのために

かわむー
かわむー

徐々に体力が回復してきているようで良かったです。

退院後も日々リハビリに取り組まれている沼田さんですが、現在、目標としていることはありますか?


沼田さん
沼田さん

まずは元の生活に戻れるようにしっかりとリハビリをします。そして、いずれは生きがいでもあるボランティア活動を再開したいと考えています。

病気になって初めて、ボランティア活動は家の環境や家族のサポートがあって初めてできていたことだと実感しました。

ボランティア活動を再開するには体力が必要なので、まずは家の周りを2000歩/日くらい歩けるようになることを目指したいと思います。

スマートウォッチで歩数などを管理しながら、結果や目標を見える化しています。



かわむー
かわむー

スマートウォッチで管理しながら取り組まれているとは、素晴らしいですね!

沼田さんの生きがいでもあるボランティア活動の再開が、リハビリの原動力にもなっているのだと感じました。


沼田さん
沼田さん

そうですね。私にとってボランティア活動は、暮らしの一部といっても過言ではありません。

私は、10年程前に「厚木デイジー」というボランティア団体を立ち上げました。

厚木デイジーは、ディスレクシアという「読み書き」に困難のある人のために、読み書きを助ける道具の紹介やデジタルツールを活用したサポートを行っています。

私はそこで、リハビリテーションに関わる専門家や教育機関とともに、読み書きに困難を抱えている子どもたちのために教科書の補助教材(デジタル版)を作っています。

しかし、2022年の夏に病気が判明したため、依頼を受けていた3冊のうちの1冊がまだ完成していないんです。今はそれを早く完成させたい!という思いでいっぱいです。


入院前、BBQでパエリアを調理する沼田さん(写真:ご本人より提供)

一歩ずつ、前へ

かわむー
かわむー

リハビリを継続してきたなかで、「大変だな」とか「辛いな」と感じたことはありましたか。


沼田さん
沼田さん

出来ないことが見つかるたびに、やはり落ち込むことはありますね。

食べるものを用意しようと台所に立った時、中腰やしゃがむ動作が辛いことに気がつきました。それ以降、リハビリでも中腰の練習をしていますが、まだまだ難しさを感じます。

また、身体が一気に衰え、杖でなんとか歩ける状態からようやく2本足でしっかりと歩けるようになって、「歩くことってこんなに素晴らしいんだ」と初めて気付きました。

昔は考えもしなかった、後ろ向きで歩くとか、しゃがんで物を掴んで持ち上げるとか、そんな自然とやっていたことが、今は怖くてできていない状況です。

家に帰ってからは、ただ「日常生活を送る」ということがとても良いリハビリになっています。


自宅でリハビリに励む沼田さん(写真:ご本人より提供)


かわむー
かわむー

「嬉しかったこと」や「やりがいを感じる瞬間」などもあれば教えて下さい。


沼田さん
沼田さん

少しずつできることが増え、「一歩ずつ前に進んでいる」と実感できた時にとても喜びを感じます。

以前、「明日は杖なしで歩けそうだ」と思い、予想通りできた時はとても嬉しかったですね。最初はベタベタと歩いていたのですが、かかとからつま先までしっかりと足に力を込めて歩けるようになったのが実感できた時も嬉しかったです。

リハビリをやっているうちに、身体が少しずつ思い出してくれているかのように「徐々に良くなっていく」のが実感できます。

リハビリの先生から筋肉や身体の構造について教えてもらい、初めて自分の身体の色んな部位にも意識が向くようになりました。

まだまだずっこけそうに歩いているので、リハビリで早く治して、家の周りをスムーズに歩けるようになりたいですね。


リハビリに励む方へメッセージ

かわむー
かわむー

最後に、同じようにリハビリに励まれている方にメッセージがあればお願いします。


沼田さん
沼田さん

リハビリを続けるには「目標を定める」ことが大事になってくるかと思います。

しかし、改めてそれを問われた時に、答えるのに難しさを感じる人もいらっしゃるかもしれません。「そんな目標ある人生送っていませんでした」と。

だけど、それは気づかないだけで、自分にはいっぱい目標があったし、今もあるはずです。僕も、現状として課題はいっぱいありますが、「子どもたちに教科書の補助教材(デジタル版)を早く届けたい」と思いながら、今日もリハビリを頑張っています。

「またあそこのラーメン食べたいな」とか「お酒のみたいな」という目標も持っています。

そんな自分自身と向き合う時間を、まだとれていない方には是非とって頂きたいと思います。


かわむー
かわむー

沼田さんがおっしゃられるように、私も「目標を定める」ということはリハビリにおいてとても大切なことだと思います。

実際に辛い時期も経験された沼田さんだからこそ発信できる生のメッセージに、とても胸を打たれました。

きっと、沼田さんのお言葉に励まされた読者の方は多いのではないかと思います。心温まるメッセージをありがとうございました。

リハノワはこれからも、沼田さんがボランティア活動を再開し、活躍されることを心から応援しております。

本日は、貴重なお話をお聞かせいただきありがとうございました。




かわむー
かわむー

<関連記事>

厚木デイジーHP
・東名厚木病院
理学療法士・古谷直弘さん


ぜひ合わせて御覧ください。


以上、今回は食道がんの治療とリハビリテーションに取り組まれている沼田さんをご紹介させていただきました。

一人でも多くの方に、沼田さんの素敵な想いと魅力がお届けできれば幸いです。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

今後ともリハノワをよろしくお願いいたします!


かわむーでした。

撮影:ひろし


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