みなさんこんにちは、リハノワのかわむーです!
今回は、京都府京田辺市にある「三休(さんきゅう)」さんを取材しました。
三休は、農業を中心とした就労継続支援B型事業所です。日々の農作業はもちろん、併設されたカフェでの接客業務やチャリティーアパレルブランドJAMMINのアパレル業務、地域でのイベント開催など幅広くご活動しています。
今回は、実際に農園での農作業や出荷作業に同行しました。本記事では、三休での1日の流れや仕事内容、施設長・世古口さんの声を紹介します。
三休とは
京都府京田辺市にある「三休」は、就労継続支援B型事業所です。京田辺周辺に4つの畑を持ち、万願寺とうがらしやハーブ、ベビーリーフを中心に育てています。農作業は、種まきや苗づくり、生育管理、そして収穫や梱包、出荷など種類が多く、屋内と屋外(農園)に分かれて活動をしています。
事業所に併設されたオシャレなカフェでの接客やチャリティーアパレルブランドJAMMINのアパレル業務も行います。また、障害の有無に関わらずたくさんの人が交わる「地域にひらかれた場所」を目指し、マルシェや音楽イベントも開催しています。
名前に込められた想い
「慌てない 慌てない ひと休み ふた休み 三休み」をスローガンに運営している三休には、以下の3つの思いが込められています。
①「一休」のまち京田辺。アニメ一休さんの主人公・一休宗純の「ありのままに生きること」を大切に行動する
②「サンキュー」気軽にありがとうと言い合える文化を醸成する
③「一人ひとりのペースで働ける環境」を目指す。がむしゃらに働く人もいれば休み休み働く人も共存していく場所にしたい
スタッフ・メンバー
三休では、通所している方を「利用者」と呼ばずに「メンバー」と呼んでいます。「支援:被支援」ではなく「チーム三休」で一緒に働く日々のなかに就労支援を散りばめていきたい。働く現場では利用者とフラットな関係性にしたい、だから「メンバー」と呼ぶよう統一しています。
スタッフは総勢5名。メンバーは1日だいたい13名程度が通所しています。三休はどの障害特性の人でも受け入れており、知的障害や発達障害、精神疾患や下肢麻痺のある方々が働いています。(車椅子ユーザーで畑作業が難しい方も、出荷作業など活躍できる場があります)
メンバーは、半数が京田辺市内から、もう半数は近隣市(宇治市、枚方市、城陽市、大阪市など)から通所しています。男女比は5対5です。(2022年11月現在)
実際の仕事内容
実際に、9:00〜16:00まで三休の1日に密着しました。農園での農作業や出荷作業に同行したので、その様子をご紹介します。
1日の流れ
三休では、以下の流れで一日を過ごします。メンバーは、午前のみ・午後のみ等、半日勤務も可能です。
9:00 朝礼(出欠確認、本日の作業の確認)→ 送迎
10:00 -12:00 作業
12:00 -13:00 休憩
13:00 昼礼(午前の報告、午後の確認)
13:00 -15:45 作業
16:00 終礼(1日の報告・振り返りなど)
①農業(農園)
三休では、ビニールハウスを含めた4箇所、約4反≒4,000m²の広さの畑で農業をおこなっています。農園は、九十九園(つくもえん)・松井・新田辺の地域にそれぞれあり、万願寺とうがらしやベビーリーフ、約20種類のハーブ、ニンニクや玉ねぎなどを育てています。
午前中の取材では、事業所から車で10分程度の場所にある「九十九園の農園」にお邪魔しました。
本日の作業は、きゅうりの収穫、種まき、苗抜き、畝立て、不織布かけ、冠水チューブの整備、マルチシート張り、水まきなど盛りだくさんでした。
■ きゅうりの収穫
きゅうりの収穫は本日で最終日。メンバー・スタッフ2人と一緒に収穫しました。
■ 苗抜き
収穫後のきゅうりを根元から抜いていきます。今後、左のように更地の状態にします。
■ 畝立て
種をまくための畝をつくります。
■ 種まき
本日はベビーリーフの種まきを行いました。
■ 不織布かけ
種まき後は、土の乾燥を防ぎ発芽を促がすために不織布をかけます。
■ 水まき
こちらはハーブの水やり。しっかりとまいていきます。
2時間みっちりと農作業を行いました。この日の午前は4名だったので、少し忙しい日だったようです。
メンバーとスタッフが丁寧に意見交換しながら協力して作業しているのが印象的でした。対等な関係であたたかい雰囲気がある一方で、「いいものを作って消費者の方に届けよう!」という農業に対する本気度も肌で感じ、プロフェッショナルさを感じました。
②農業(室内)
室内では、ベビーリーフとルッコラの梱包、ローゼルの種取りの作業が行われていました。
③カフェ
作業スペースに併設された「三休カフェ」にお客さんが来店した際は、接客とキッチンでの作業も行います。
④出荷
13:20からは出荷に同行しました。出荷はだいたい週に3回するそうです。
本日は「旬の駅」と「よってって市場」の2箇所に伺いました。
普段、出荷はメンバーと一緒にまわります。今回、1日密着取材し、農業には本当に多くの作業があることを知りました。
三休には、メンバーが自分のやりたいことを実現し、なりたい姿に近づけることができる環境が整っています。
外で太陽の光を浴びたり土や緑に触れたりすることで、身体も心も自然と元気になるような、そんな不思議なパワーも感じました。
⑤その他
■ アパレル
■ イベント開催
■ ドライフラワー作り
■ 商品開発
施設長インタビュー
◆ 世古口敦嗣(せこぐち・あつし)さん
障害者が暮らしやすいまちにしていくことを目指すNPO法人「サポネ」や医療福祉エンターテイメント集団・NPO法人「Ubdobe」などを経て、農業を中心とした障害のある人が働く拠点「三休 -THANK YOU-」を2019年4月にオープン。「さようなら、わたしのバリア」をコンセプトとした音楽イベント「BYE MY BARRIER」や「福祉を気軽におしゃべりする文化」をつくる「Dialogue FUKUSHI」などのプロジェクトを企画、障害のあるなしに関わらず皆が全力であそべる場づくりを行っている。
2019年に三休をスタートした後、これまで大切にしてきたことや大変だったことなどがあれば教えて下さい。
2019年に三休をスタートした時、僕たちは就労支援も農業も「経験ゼロ」の状態だったため、初年度は特に苦労しました。
スタッフが少人数かつ農業の土台ができていないため農業に時間を取られ、福祉方面への営業活動などができず、半年時点でメンバーは片手で数えるほどでした。
「農業と福祉のバランス」は常に考えつつも、まずは「農業」という土台をしっかりとつくろう!と舵を切り、農業での収益をあげていけるよう力をいれていきました。
農業も福祉も、地道な一歩が少しずつ積み重なり、自分たちの強みになっていくものです。三休を開所して2年目の夏、少しずつではありますが、ようやく利用者が増えていきました。一人ひとりのメンバーに対して丁寧に関わり、しっかりと就労支援をすることを心掛けた結果だと思っています。
福祉は口コミの世界。メンバーに「三休は働きやすい」「しっかりと支援を受けられる」と思っていただけることこそが信頼につながります。
三休では、スタッフもメンバーも「フラットな関係性」であることを大切にしています。スタッフの「支援の専門家感」を薄めていくのを意識しています。
もうかれこれ2年くらい、メンバー主体の話し合いの場「三休会議」を毎月開催し、売上報告や今後の方針などをみんなで一緒に話し合っています。
最初の頃はメンバーからあまり意見は出ませんでしたが、開催し続けることで次第に発言も増え、議論し合う文化が醸成していきました。
いまは、メンバーが消費者と交わる機会をつくることを意識しています。消費者と関わることで、ダイレクトに「働くことの喜び」を感じていただきたいからです。
具体的に言うと、マルシェに出店したり事務所前で軒先野菜を販売したり、飲食店への納品を一緒にまわったりしています。
この経験が働く自信となり、「もっと働きたい!」という気持ちに繋がっていくと考えています。
スタッフとメンバーが「いつもは同僚みたいな関係」だけど、いざという時には、スタッフがすぐに手を差し伸べられるようにしっかりと配慮されているのが素晴らしいと思いました。
これまで活動してきたなかで、世古口さんがやりがいを感じたエピソードがあれば教えて下さい。
やはり、メンバーの成長を感じた瞬間にやりがいを感じます。
先日、これまで仕事に対して消極的だったメンバーが、主体的に自分から動くようになっていてとても感動しました。
また、三休で働くなかで僕たちの福祉・支援に触れ、「自分と同じように障害などで困っている人を助けたい」と福祉の道に進むことを決めたメンバーもいました。これも、とても嬉しかったですね。
目の前の方々の変化は、とてもやりがいを感じますよね。福祉の道に興味をもってくれたのも、とても嬉しいですね…!
三休は、農林水産省や厚生労働省などが手掛ける農業×福祉の祭典「ノウフクアワード2022」にて、フレッシュ賞を受賞することができました。
約250団体のうち23団体の1つに選ばれたこと、そして京都府では僕たちだけなのが光栄です。
この成果はメンバーたちと一緒に成し得たものです。 来年以降もっと成果を出し、いつかグランプリを受賞できるように頑張りたいと思います。
250団体のなかの23に選ばれるなんて本当にすごいですね!これからの益々のご活躍が楽しみです。
最後に、今後チャレンジしたいことをお聞かせ下さい。
支援力があれば、障害があってもクオリティの高い仕事ができることを証明していきたいです。
支援力があれば作業のクオリティが高まります。作業のクオリティが高まれば作業量が増え売上が上がります。売上が上がれば工賃が高くなり、それが働く自信につながり、一歩先への挑戦ができるかもしれません。
それこそ自己実現であり、自分のやりたいことやなりたい姿を実現することに繋がります。
そのためには、僕たちが適切な環境整備をおこない、正しい関わりや配慮をしていくことが大切です。働く環境や作業を効率的に行えるような仕組みをつくることで、メンバーはもっともっと成長できる可能性があります。
まずは、京田辺、いや、京都府で一番高い工賃を出せるようになること。そして、メンバーに対して適切な支援ができる事業者であること。「障害福祉のプロフェッショナルといえば三休」といってもらえるように頑張ります。
さらに、長期的にはこの地域を「福祉のまち」にしたいと考えています。
障害者への偏見がなくなり、地域全体にもっと心のバリアフリーが広まることで魅力的な町になると信じています。
「なんか居心地がいいよね」という環境を、その文化を、三休を拠点に10〜20年かけてゆっくりとつくっていきたいです。
三休さんは、関わる方々との対話や意思決定の過程を丁寧に紡いでいらっしゃいます。事業所をオープンする前も、地域住民とタウンミーティングをしながら丁寧に関係性を構築していったそうです。
そんな三休さんならば絶対に「福祉のまち」の土壌をつくっていけると思いました。決して平坦な道のりではないと思いますが、世古口さんはじめ三休の皆さんの挑戦を、リハノワも心から応援しております!
取材に協力いただいた世古口さん、スタッフ・メンバーのみなさま、本日はありがとうございました。
アクセス
<所在地>
京都府京田辺市大住池ノ谷45-1
TEL : 0774-66-2162
<アクセス>
・公共交通機関:JR大住駅より徒歩5分
・送迎:あり(京田辺市内のみ)
施設概要
■施設名
三休(さんきゅう)
■ 運営
三休合同会社
■ 開設
2019年4月1日
■ 事業内容
就労継続支援B型事業所
■ 開所時間
月〜土 9:00 〜16:00(午前のみ・午後のみ等、半日勤務も可能)
定休日:日曜、第2・4土曜
■ 交通手段
電車(JR大住駅)、自転車、徒歩、京田辺市内のみ送迎相談あり
■定員
20名
■関連情報
・三休HP
<関連記事>
・スタッフ・八木慎一さんの声
・メンバー・今村さんの声
ぜひ合わせてご覧ください。
以上、本日は京都府京田辺市にある「三休(さんきゅう)」さんを紹介させていただきました。
一人でも多くの方に、三休さんの素敵な想いと魅力がお届けできれば幸いです。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
今後ともリハノワをよろしくお願いいたします!
かわむーでした。
この取材は、施設から同意を得て行なっています。本投稿に使用されている写真の転載は固くお断りいたしますので、何卒宜しくお願い申し上げます。
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