みなさんこんにちは、リハノワのかわむーです!
今回は、東京都世田谷区にある世田谷記念病院で、脳血管疾患のリハビリテーションに携わる理学療法士・齋藤旬基さんにお話を伺いました。
この記事では、齋藤さんが日々取り組まれているリハビリテーションの実践や、患者さん一人ひとりのニーズに寄り添うために大切にしている視点をご紹介します。
※ 世田谷記念病院リハビリテーション科の紹介記事はこちら
理学療法士・齋藤旬基さん

◆齋藤 旬基(さいとう・じゅんき)さん
世田谷記念病院リハビリテーション科 主任 / 理学療法士
1995年、栃木県さくら市生まれ。2018年につくば国際大学を卒業後、世田谷記念病院へ入職。回復期リハビリテーション病棟を中心に、外来・訪問・小児リハなど幅広い分野で経験を重ね、さまざまな症状や年代の方の支援に携わる。2024年からは主任としてチームをまとめながら、とくに脳血管疾患の方のリハビリに力を注ぎ、退院後の生活まで見据えたサポートに取り組んでいる。

齋藤さんが理学療法士という道を選ばれたきっかけは何ですか? また、世田谷記念病院に入職を決められた理由についても、よろしければお聞かせください。

小・中・高とずっと野球部に所属していたのですが、怪我が多く、そのたびにお世話になっていたのが理学療法士の先生方でした。
痛みを抱えて不安なときに、寄り添いながら支えてくれる姿を見て、「こんなふうに人の力になれる仕事って素敵だな」と感じたことが、この道を目指す大きなきっかけになりました。
就職先として世田谷記念病院を選んだ理由は、学生の頃に感じていた「もっと学びたい」という気持ちが原点にあります。
地元よりも東京の方が勉強会や研修会に参加しやすく、視野が広がるのではないかと思い、都内の病院を探していました。その中で、病院見学に訪れた世田谷記念病院では、認定資格をもつ先輩療法士が多く在籍していて、成長できる環境があると思ったんです。

学びたい気持ちを大切に、東京での環境を選ばれたのですね。入職されてからは、どのようなキャリアを歩んでこられたのですか?

入職後は、まず回復期リハビリテーション病棟を中心に経験を積みました。4年目にはグループ内の訪問看護ステーションに出向し、在宅でのリハビリにも携わる機会をいただきました。
その後は世田谷記念病院の在宅診療部に所属し、訪問と外来の両方を担当しました。病院とは異なる「生活の場」でのリハビリに触れたことで、視野が大きく広がったように感じています。
そして6年目に再び回復期病棟へ戻り、これまでの経験を活かしながら、入院患者さんのリハビリに日々向き合っています。

脳血管リハの道へ

齋藤さんが、いま特に力を入れて取り組まれていることについて、お聞かせいただけますか?

いまは、脳血管疾患のリハビリテーションに力を入れて取り組んでいます。外部研修への参加や学会発表など、学びを深める時間を大切にしながら、日々の臨床に活かせるよう取り組んでいます。
院内には、有志の療法士が集まる「脳血管専門チーム」があり、私はそのリーダーを担当しています。講義の内容を考えたり、講師の方をお招きしたりしながら、勉強会を通じて病院全体の知識と技術を高めていくことを目標にしています。
とはいえ、私自身もまだまだ学ぶことが多く、チーム運営と自己研鑽の両立は簡単なことではありません。上司や先輩方に支えていただきながら、少しずつ前に進んでいるところです。

脳血管疾患のリハビリテーションに興味をもつようになったきっかけは何だったのでしょうか。その興味をどのように深めてこられたのかについても、ぜひ教えてください。

脳血管疾患のリハビリテーションに興味をもつようになったのは、入職してまもない頃の経験が大きなきっかけでした。
1年目の夏に担当したのは、現役で仕事をされている50代の経営者の方。とても意欲的で、「歩けるようになる」だけでなく、歩き方や姿勢などの細かい部分にも強いこだわりをもっておられました。
最初は順調に改善が見られたものの、途中でどうしても伸び悩む時期があり、私自身も「力不足なのでは」と悩む日が続きました。そんなとき、患者さんの方から励ましの言葉をいただき、その優しさに触れたときの申し訳なさと悔しさは、いまでも忘れられません。
そのとき、「もっと力になれるように、脳血管疾患のリハビリをしっかり学びたい」と心から思いました。その決意こそが、いまの私の原点になっています。
そこからは、脳血管疾患のリハビリ研修会に積極的に参加するようになり、できることが少しずつ増えていくのを実感していきました。脳画像や神経学を学ぶコースにも参加し、座学だけではつかみにくかった部分を補うために、実技研修にも足を運びました。
知識と経験が少しずつ結びつき、「この方にはこういうアプローチが合いそうだ」と個別性を意識した介入が少しずつできるようになっていきました。

小さな一歩を、ともに

齋藤さんが、リハビリテーションに向き合う中で「やりがい」を感じるのは、どんな瞬間でしょうか。その中でも印象に残っている出来事があれば、ぜひ教えてください。

学んだことが実際の臨床でのアプローチにつながり、患者さんの変化として返ってくる瞬間は、本当にうれしいですし、やりがいを感じます。
なかでも印象に残っているのは、昨年担当した重度の麻痺を抱えていた方のことです。脳卒中を発症して間もない頃は、強いプッシャー(麻痺していない側の手足を使って、自身の身体を麻痺した側へ無理に押し込んでいく姿勢異常)があり、病棟では2〜3名の介助が必要なほど大変な状況でした。
ちょうどその直前に、脳卒中など神経系に障害がある方向けのアプローチの1つである「ボバース」の研修を受けていたこともあり、そこで得た理論や技術が、実践の場でとても役に立ちました。新しい知識が加わったことで、「いまこの方の身体に何が起きているのか」をより立体的に捉えられるようになり、介入の幅が広がった感覚がありました。
そうした積み重ねもあり、プッシャーは少しずつ軽減し、最終的には自立歩行でご自宅に戻られるまで回復されました。ご本人が前向きに取り組まれたことも大きく、その姿に私自身も何度も励まされましたし、この仕事の意義をあらためて感じさせてもらった出来事でした。

脳血管疾患のリハビリに取り組まれている当事者の方は、これまでの生活から大きく変化し、身体だけでなく気持ちの面でもさまざまな思いを抱えておられるのではないかと感じています。
そうした方々と向き合うなかで、齋藤さんが日々、大切にされていることがあれば教えていただけますか。

リハビリを進めるうえで私がとくに大切にしているのは、「どうなりたいのか」を丁寧にお聞きすることです。
そして、自分の考えを押し付けないこと。たとえ「こうしたほうが良い」という専門的な視点があっても、それが本当にその方にとってベストなのかは、一緒に考えていく必要があると思っています。
そのために、生活のことや趣味、好きなことなどを会話の中でゆっくり伺い、「どんなふうに過ごせたら楽しいのか」「どんな生活を取り戻したいのか」を一緒に探っていきます。
リハビリは、ときに先が見えず、不安と向き合いながら進んでいくものです。どんなに明るく前向きな方でも、気持ちが沈む日があります。
だからこそ、「一緒に頑張っていますよ」という思いが届くように、日々の小さな変化を一緒に喜んだり、「ここが良くなりましたね」とお伝えしたり。課題があるときには、率直に共有しながら、その方のペースに寄り添うことを心がけています。

素晴らしいですね。ニーズや目標を一緒に確かめながら、小さな成功体験を少しずつ積み重ねていくことで、「できた」という自信が育まれていく。
その積み重ねが、次の一歩を踏み出す力やモチベーションにつながっていくのだと、あらためて感じました。

笑顔を引き出す架け橋に

これから先、齋藤さんが取り組んでみたいことや、チャレンジしていきたいことはありますか?

私にとってリハビリテーションは、「患者さんの笑顔を引き出す架け橋」のようなものです。その人らしさを大切にしながら、「どうすれば楽しく生きていけるのか」を一緒に考え、そっと手を差しのべる仕事だと思っています。
これから取り組んでいきたいのは、まずは身近な仲間である病院スタッフのモチベーションを高めていくことです。私自身が得意とする分野や、臨床の面白さ・奥深さを伝えながら、「もっと学びたい」「もっと患者さんに向き合いたい」と思える、活気あるチームづくりに貢献していきたいです。
まだ8年目で、学ばなければいけないことは本当にたくさんあります。行きたい研修会も、ぜひ挑戦したい学びの場もまだまだありますので、引き続き自己研鑽を続けながら、臨床力をさらに磨いていきたいと思っています。
そして最終的には、リーダーを任されている脳血管専門チームを中心に、病院全体をリードできる存在になりたいです。自分が学び、挑戦し続けることで、後輩たちが前向きに変わっていく姿を見られたら、とてもうれしいですね。
専門性を深めながら、病院の雰囲気そのものをより良い方向へ動かしていくことが、いまの私の大きなチャレンジです。

リハビリに励む方へ

最後に、リハビリに励んでいる方へ向けて、メッセージがあればお願いします。

リハビリに取り組んでおられるみなさんには、まず「ひとりではありませんよ」とお伝えしたいです。
私たち療法士は、良くなってほしいという思いを胸に日々向き合い、ときには仕事が終わったあとも「明日はどう関わろうか」と考えています。
その思いが、みなさんのリハビリを続ける力に、そっとつながっていればうれしいです。
私たちは、いつもそばで寄り添っています。
自分らしい生活を取り戻すために、どうか一緒にゆっくり前へ進んでいきましょう。

齋藤さん、リハビリに励まれるみなさんへ向けた、あたたかなメッセージをありがとうございました。
患者さんお一人おひとりの「どうなりたいか」に丁寧に耳を傾け、日々の小さな変化を一緒に喜びながら歩まれる姿勢。そして、専門性を磨きながら、仲間とともに挑戦をつづける姿がとても印象的でした。
リハノワはこれからも、齋藤さんのやさしく力強い歩みを応援しています。
本日は、貴重なお話を聞かせていただき、ありがとうございました。


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以上、今回は、東京都世田谷区にある世田谷記念病院で、脳血管疾患のリハビリテーションに携わる理学療法士・齋藤旬基さんを紹介しました。
ひとりでも多くの方に、齋藤さんの素敵な想いと魅力がお届けできれば幸いです。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
今後ともリハノワをよろしくお願いいたします!
かわむーでした。

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