【当事者の声】大腿義足とリハビリテーション|未来は明るいと信じて歩む 大塚一輝さん

みなさんこんにちは、リハノワのかわむーです!

今回は、岐阜県にお住まいの大腿義足ユーザーであり、「義足の未来を変える会」代表の大塚一輝さんを訪ねました。

日々どのように身体と向き合い、どんなリハビリを積み重ねているのか。実際の現場に同行しながら、その思いや工夫を伺いました。

この記事では、大塚さんが実践されているリハビリの具体的な内容や、身体のケア、日々の生活の工夫についてご紹介します。

※大塚さんの「これまでの歩み」や「切断に至る経緯」については、こちらの記事で詳しく紹介しています

大塚一輝さんの歩み

大塚 一輝(おおつか・かずき)さん
1989年6月30日生まれ。岐阜県岐阜市出身。二児の父。
高校2年生のとき、右膝に骨肉腫を発症。約8ヵ月にわたる抗がん剤治療と右膝の人工関節置換術、リハビリを経て18歳で復学。19歳で仕事を始め、26歳で結婚。人工関節の感染と長く向き合うなか、33歳の夏、高熱をきっかけに入院。同年10月、右大腿切断の手術を受け、その後は大腿義足を装着しながら生活を送る。35歳のときに「義足の未来を変える会」を立ち上げ、現在は当事者目線での情報発信や制度改善の働きかけに力を注いでいる。


大腿義足とリハビリテーション

かわむー
かわむー

約2年前に大腿義足での生活が始まった大塚さん。現在はどのようなリハビリに取り組まれているのでしょうか。

今回は特別にリハビリの現場に同行させていただき、実際の様子を見学しました。


大塚さん
大塚さん

私は34歳のときに大腿切断の手術を受け、術後2ヵ月ほど経ってから大腿義足を作りました。いまは義足で日常生活を送っています。

現在取り組んでいるリハビリの目的は、大きくふたつあります。ひとつは、体力・筋力を維持すること。もうひとつは、股関節の柔軟性を保つことです。

義足はおよそ5キロの重さがあります。毎日おもりをつけて歩いているようなものなので、筋力を保つことは欠かせません。また、股関節が硬くなると歩きづらくなってしまうため、丁寧なストレッチも大切です。

切断後、しばらくはクリニックに通い、理学療法士の方に歩き方や身体の使い方を教えてもらいましたが、「自主トレーニングで十分ですよ」と言っていただき、いまはジムや自宅で自分のペースでリハビリを続けています。

ジムは、「岐阜県福祉友愛プール」にあるトレーニングルームに週2〜3回通わせてもらっており、1回およそ1時間、筋力トレーニングやストレッチを行っています。時間に余裕があるときは、併設のプールで有酸素運動にも取り組みます。


今回の取材でお伺いした、岐阜県岐阜市にある「岐阜県福祉友愛プール」


プログラム内容

かわむー
かわむー

岐阜県が設置している「岐阜県福祉友愛プール」さんは、2016年に開館した、温水プールとトレーニングジムを備える運動施設です。障害のある方や高齢の方も安心して利用できるよう、動線や設備の随所にバリアフリーの工夫が施されていました。

ここからは、実際に大塚さんが日々取り組まれている、筋力トレーニングや有酸素運動、マットでのエクササイズなど、具体的なリハビリ方法をご紹介します。



◆ 筋力トレーニング
ジムに完備されているマシンを使用し、上肢・下肢・背部など、部位ごとに分けてバランスよく鍛えていきます。

チェストプレス:主に胸の筋肉を鍛えるトレーニング(15回×3セット)
ショルダープレス:主に肩の筋肉を鍛えるトレーニング(15回×3セット)
ラットプルダウン:主に背中の筋肉を鍛えるトレーニング(15回×3セット)
レッグプレス:主に太ももの前面やお尻の筋肉を鍛えるトレーニング(15回×3セット)


◆ 有酸素運動
背もたれ付きのバイク「ニューステップ」を使用。連動するアームとペダルで全身を動かしながら、約20分間行います。


◆ 歩行練習/歩容チェック
大腿義足での歩行練習を始めた当初は、鏡に映る姿を確認しながら、歩き方を整えていたそうです。トレーニングシューズは、衝撃を和らげるクッション性のあるものを選ばれています。


◆ マット運動
マット上では、体幹や股関節まわりを中心に、次のようなトレーニングとストレッチを行います。

・上体起こし(腹筋の強化)
・仰向けでのお尻上げ(大殿筋の強化) 
・横向きでの股関節外転運動(中殿筋の強化)
・プランク(体幹の強化) 
・バードドッグ(体幹の強化) 
・股関節まわりのストレッチ

上体起こし。この日は30回を3セット行いました。
横向きで行う股関節の外転運動。お尻の筋肉(とくに中殿筋)を意識して行います。
バードドッグは、左右それぞれ10秒キープを繰り返します。


◆ プール
プールでは、ウォーキングとスイミングを組み合わせながら、およそ30分間の運動を行います。水中での運動は関節への負担が少なく、全身をバランスよく動かすことができるため、無理なく有酸素運動を取り入れることができます。

プールは目的に応じてレーンが分けられており、真ん中の青レーンは泳ぐ方向け、右側の赤レーンは自由コース。そして左側の赤レーンは、プール用車いすのままアクセスできるユニバーサルレーンです。奥には水深70cmの子ども用プールやジャグジーもあります。


◆ 体重管理
ジムには、車いすに乗ったまま計測できる体重計が設置されており、日々の体重変化やむくみの状態を確認することができます。体組成計も備えられていますが、義足ユーザーの場合は正確な測定ができないため、こちらは使用していないとのことでした。


 

かわむー
かわむー

岐阜県福祉友愛プールさんは、年間およそ51,000人が利用する地域に根ざした運動施設で、多い日には1日300人ほどが訪れるそうです。

館内はとても清潔感があり、動線もゆったり。トレーニング室のマシンは車いすのまま使用できるものも多く、至るところにある細やかな配慮から、誰もが安心して運動できる環境づくりへの思いが伝わってきました。

障害のある方やその介助者が無料で利用できる点も大きな特徴です。

さらに、岐阜県内の障害者団体に対して借上げバス利用の助成制度も整えられており、多くの方が利用できる工夫が随所に感じられました。


■ 岐阜県福祉友愛プール
指定管理者:一般社団法人 岐阜県障害者スポーツ協会

■ 開設
2016年

■ 施設内容
メインプール(25m×6コース、日本水泳連盟公認)、サブプール、ジャグジーバス、採暖室、更衣室(男子、女子、家族更衣用)、会議室、トレーニング室

■ 開館時間
・午前10時から午後9時(10月から4月)
・午前9時から午後9時(5月から99月)

休館日:火曜日(祝日の場合は開館)、祝日の翌日(日曜日又は祝日の場合は開館)、年末年始。臨時休業する場合もあり。

利用対象者
障害のある方とその介助者、60歳以上の方、障害者団体(R8.4.1から60歳未満の方も時期、時間等を限定して利用可)

■ 利用料金
<個人利用>
・障害のある者とその介助者:無料
・60歳以上の方:410円(R8.4.1から18歳以上の方460円、18歳未満の方230円)
※その他詳細は公式サイトをご確認ください

■ アクセス
〒502-0854 岐阜市鷺山向井2563-18
電話:058-295-1100 
FAX:058-295-1020


断端のケア

かわむー
かわむー

ここからは、日々の身体のケアや義足のメンテナンスについてお話を伺っていきます。

まずは「断端のケア」として、日ごろから意識されていることや習慣があれば教えてください。


大塚さん
大塚さん

お風呂上がりには、必ず保湿を行っています。断端は乾燥しやすく、かさかさになってしまうため、プロペトなどの保湿剤で丁寧にケアをしています。

また、義足を長時間装着して歩いていると、断端がしびれてくることがあるため、長い距離を歩くときは無理をせず、杖を使うようにしています。

そのほか、義足の中は密閉され熱がこもりやすいため、とくに夏場は、歩くだけでも汗がたまり、蒸れてしまいます。なるべく暑い場所に長時間いないようにするなど、気を配りながら過ごしています。

ソケットの内部

食事の管理

かわむー
かわむー

続いて、体調管理や食事の面で意識していることはありますか?


大塚さん
大塚さん

お酒はむくみの原因になるため、できるだけ控えるようにしています。外ではほとんど飲まず、飲むとしても週末の夜、自宅で義足を外した状態で少しだけにしています。むくみが出て義足が合わなくなることがあるので、量やタイミングには気をつける必要があります。

あわせて、暴飲暴食をしないこと、体重をコントロールすることも常に意識しています。

日々の体調管理が、そのまま義足での生活のしやすさにつながっていると感じています。


義足のメンテナンス

かわむー
かわむー

義足のメンテナンスについては、どのようなことをされていますか?


大塚さん
大塚さん

義足は、定期的なメンテナンスが必要になります。

断端を包む「ソケット」と「シリコンライナー」は、どちらも保険を利用して1年に1回、交換することができます。身体のむくみや体型の変化によって適合が変わるため、このメンテナンスはとても大切です。


また、「膝継手」と呼ばれるパーツは、3年に1回、保険を利用して交換することができます。

費用自体は100万円以上かかりますが、自己負担はおよそ3万円ほどです。一度立て替えてから精算する形になるため、その点には注意が必要です。

シリコンライナー
膝継手

義足とともにある暮らし

日常生活での工夫

かわむー
かわむー

ご自宅での日常生活の中で、工夫されていることはありますか?


大塚さん
大塚さん

日常生活の工夫でいえば、自宅を建てる際は、玄関まわりの設計にとてもこだわりました。スペースをゆったり確保し、靴の着脱がしやすいようベンチを用意。あわせて、T字杖や松葉杖を掛けられる杖かけや、手すりも設置しました。

平日は家の中では義足を外して過ごすことが多いため、室内ではキャスター付きのイスを使って移動しています。


ゆったりとしたスペースが確保された玄関
松葉杖やT字杖など、さまざまな杖に対応した杖か
安全に靴の着脱ができるよう設置されたベンチ
廊下にも手すりが設置されている。現在は使わないためお子様方の荷物かけに活用。
屋内の移動はキャスター付きのイスが便利


仕事と日々の張り合い

かわむー
かわむー

現在の仕事や働き方についても、お聞かせいただけますか?


大塚さん
大塚さん

もともとは市役所で公務員として働いていましたが、26歳の春、子どもの頃から憧れていた航空機に関わる仕事がしたいという思いから、航空機メーカーへ転職しました。現在は総合職として事務の仕事を担当しています。

勤務は週5日。フレックスタイム制を活用しながら、基本的には朝早くから夕方まで勤務をしています。

通勤は自動車です。アクセルを左足で操作できるように改造したものに乗っています。


左足でアクセル操作ができるよう工夫された、大塚さんの改造車


かわむー
かわむー

日々の暮らしの中で、「これがあるから頑張れる」と感じている、趣味や励みなどはありますか?


大塚さん
大塚さん

趣味はサッカー観戦で、FC岐阜の年間パスを購入しています。家族みんなでJリーグの試合を応援しに遠征する時間が、いまの大きな楽しみです。

好きなことを思いきり楽しみたいという気持ちが、仕事や育児、そして自分のリハビリや身体づくりにも、メリハリを与えてくれていると感じています。

また、私が代表を務める「義足の未来を変える会」の活動を通して届くメッセージも、大きな励みのひとつです。

誰かの力になれている実感が、次の一歩を踏み出す力になっています。


リハビリに励む方へ

かわむー
かわむー

最後に、リハビリに励まれている方や、切断や義足について悩みを抱える方へ向けて、メッセージがあればお願いいたします。


大塚さん
大塚さん

いま、切断という選択で悩みを抱えている方は、とても苦しい時間を過ごしていることと思います。だからこそ私は、自分自身がひとつのモデルケースになれたらという思いで、ブログやSNSで発信活動を続けています。

「こんなふうに生活している人がいるんだ」と知っていただくだけでも、これからリハビリに向かう気持ちが、少し軽くなるのではないかと思います。

私自身もたくさん悩んでいた時、パラアスリートの方にメッセージを送り、話を聞いてもらったことがありました。

やはり、当事者の生の声はとても力になります。もし不安なことや聞いてみたいことがあれば、どうか気軽に頼ってください。私にお伝えできることがあれば、できる限りお力になりたいと思っています。悩みすぎず、まずは一歩を踏み出してもらえたらうれしいです。

一歩踏み出すと、その先には新しい景色が広がります。

リハビリは大変なこともありますが、ご自身のペースで、一歩ずつ進んでいってほしいと思います。


かわむー
かわむー

大塚さん、あたたかなメッセージをありがとうございました。

悩みながらも、一歩ずつ確実に踏み出し続けてきたからこそ届けられる言葉に、背中を押される方がたくさんいらっしゃるのではないかと思います。

ご自身のご経験を、こうして丁寧に伝え続けておられる姿から、大塚さんのやさしさと芯の強さの両方を感じました。

リハノワはこれからも、大塚さんのご活躍を心から応援しております。

本日は、貴重なお話をお聞かせいただきありがとうございました。



かわむー
かわむー

<関連記事 / SNS>

・【リハノワ】骨肉腫と大腿切断を経て|義足パパ・大塚一輝さん
・【リハノワ】松本義肢製作所・義肢装具士 橋場さん取材記事

・ブログ「義足パパの歩み
Instagram「義足パパ かず」
YouTube「義足パパ かず」

岐阜県福祉友愛プール

ぜひ合わせてご覧ください。



以上、今回は岐阜県にお住まいの大腿義足ユーザーであり、「義足の未来を変える会」代表の大塚一輝さんをご紹介しました。

ひとりでも多くの方に、大塚さんの素敵な想いと魅力がお届けできれば幸いです。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

今後ともリハノワをよろしくお願いいたします!


かわむーでした。

大塚さんの「これまでの歩み」や「切断に至る経緯」に関する取材記事はこちら
大塚さんの義足を担当する義肢装具士・橋場さんの記事はこちら


この取材は、ご本人様から同意を得て行なっています。本投稿に使用されている写真の転載は固くお断りいたしますので、何卒宜しくお願い申し上げます。

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※取材先や取材内容はリハノワ独自の基準で選定しています。リンク先の企業様と記事に直接の関わりはありません。

撮影=上垣内 寛
取材・文=河村由実子(かわむー)

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