みなさんこんにちは、リハノワのかわむーです!
今回は、東京都世田谷区にある世田谷記念病院で、運動器のリハビリテーションに情熱を注ぐ理学療法士・塚本泰成さんにお話を伺いました。
この記事では、塚本さんの運動器リハビリテーションに対する思いや、日々の臨床で大切にしていること、これから挑戦していきたいことについてご紹介します。
※ 世田谷記念病院リハビリテーション科の紹介記事はこちら
理学療法士・塚本泰成さん

◆塚本泰成(つかもと・やすなり)さん
世田谷記念病院リハビリテーション科 主任
理学療法士 / 認定理学療法士(運動器)/ 認知症サポーター
1995年生まれ、東京都出身。2018年に文京学院大学を卒業後、世田谷記念病院へ就職。2022年6月からは東京都・利島村に出向し、離島ならではの医療・ケアに携わる。2023年6月に復帰後は、回復期リハ病棟で多職種と連携しながら、日々のリハビリに力を注いでいる。

塚本さんが理学療法士という道を選ばれたきっかけは何ですか? また、世田谷記念病院に入職を決められた理由についても、ぜひお聞かせください。

高校時代は野球に夢中で、チームを支えてくれていたトレーナーの方から身体の仕組みや機能を教わったことが、理学療法に興味をもつきっかけになりました。
「もっと身体のことを知りたい」と進んだ養成校では、運動器系の先生と関わる機会が多く、インソールやレッドコードなどの実践的な授業にも触れました。学びを重ねる中で、運動器リハビリの奥深さとおもしろさに強く惹かれていきました。
就職先として世田谷記念病院を選んだのは、「担当する患者さんと1日の中でできるだけ長く関わりたい」という思いがあったからです。
回復期という環境は、その方の日々の変化を一緒に感じながら寄り添える場だと感じ、入職を決めました。

学生の頃から運動器のリハビリテーションに興味をもち、学びを深めてこられたのですね。
入職してからは、どのようなキャリアを歩まれてきたのでしょうか?

入職後は、回復期リハビリテーション病棟からはじまり、その後、地域包括ケア病棟や特別養護老人ホーム、訪問、外来、法人内外のクリニックなど、さまざまな現場で経験を積んできました。
2022年には東京都・利島村(としまむら)でリハビリ職として勤務する機会もいただき、離島ならではの医療のかたちにも触れることができました。
2023年に世田谷記念病院へ復帰してからは、再び回復期リハビリテーション病棟に配属され、運動器リハを中心に日々の臨床に取り組んでいます。

運動器リハへの情熱

塚本さんが、いま特に力を入れて取り組まれていることについて、お聞かせいただけますか?

理学療法に向き合う上で、「目の前の方に本当に効果のあるリハビリを届けたい」という思いは、入職当初からずっと変わっていません。その中でも、「徒手でのアプローチ」と「インソールの活用」に力を入れながら、知識と経験を深めてきました。
徒手については、臨床に役立ちそうな研修会を見つけては積極的に参加し、基礎となる運動・解剖・生理に沿ったアプローチを中心に学んできました。特別なテクニックに頼るのではなく、「なぜその変化が起こるのか」というロジックを大切にするようにしています。当院は研修費の支援が手厚く、若手でも学びに挑戦しやすい環境が整っているので、本当にありがたいです。
インソールについては、半年ほど前に病院へ専用の加工機(グラインダー)が導入され、ようやく本格的に取り組むことができるようになりました。入職当時から「必要な方に届けたい」と考えてきたので、実現できたことがとてもうれしいです。
ただし、インソールは「何でも使えばいい」ものではなく、基本動作がしっかり獲得できた上での応用的な介入だと考えています。何度も歩いていただきながら調整を重ねていくため、その方の身体のクセや動き方を丁寧に見つめることがとても大切になります。


基本を大切にしながら、その方にとって本当に必要なリハビリテーションを実践してこられたのですね。
塚本さんが、「やりがい」を感じるのはどんな瞬間ですか? 日々の原動力になっていることもあれば、教えてください。

リハビリの現場でいちばんやりがいを感じるのは、患者さんがその場で変化を実感された瞬間です。
たとえば、入院されたばかりの方は、痛みや「また痛い思いをするのでは」という恐怖心から、身体を動かすことに大きな不安を抱えていることが少なくありません。そんな方が、「痛みが軽くなってきた」「怖さが薄れてきた」と心の面も含めて前向きになっていかれる姿を見たときは本当にうれしくて、この仕事をしていてよかったと感じます。
また、後輩が「これができるようになりました!」と自信をもって報告してくれたり、学びを深めて成長していく姿に触れられることも、やりがいにつながっています。

離島で過ごした1年間

2022年からの1年間、東京都の離島・利島村でお仕事をされていたと伺いました。そのときのご経験や、心に残っていることについても、よろしければお聞かせいただけますか。

利島村は人口約300人の、海に囲まれた小さな島です。世田谷記念病院で働き始めて5年ほど経った頃に出向のお話をいただき、家族と相談して島での暮らしと仕事をスタートさせました。
島では生活も仕事も人との距離がとても近く、「病院の人」ではなく「あそこの家の塚本」として受け入れていただきました。まるで家族にリハビリをしているような、温かい毎日だったと感じています。
これまで大切にしてきたリハビリやインソールの取り組みも、島で必要としてもらえたことで「続けてきてよかった」と思える瞬間がたくさんありました。
セラピストがいない環境で、自分の関わりが純粋に喜ばれる経験は、大きな自信につながりました。

お一人おひとりの暮らしに寄り添いながら過ごした島での時間が、塚本さんにとってとても大切な経験になったことが伝わってきました。
島での1年間を経て、ご自身の中で変化したことはありますか?

患者さんへの向き合い方が大きく変わりました。
島でのリハビリでは、こちらの「良いと思うこと」を一方的に押しつけるのではなく、住民の方の望む生活に合わせて関わる姿勢がとても大切でした。
専門職としての理想と、その方が求めるものは必ずしも同じではない。その気づきは、島での経験が教えてくれた大きな学びでした。
以前は「安全に」「転ばないように」と、理想を強く意識しすぎていたところがあったと思います。いまは、その方の暮らしを想像しながら、転んでも大丈夫な環境づくりや、転んだあとに自分で起き上がれる力をつけていただくことなど、より生活に寄り添ったリハビリを心がけるようになりました。

“現場ファースト”で築く未来

塚本さんが、日々リハビリテーションを実践するうえで大切にしていること、そしてこれから挑戦していきたいことについて、教えていただけますか。

リハビリを実践するうえで大切にしているのは、まず「Hope(どうなりたいか)」と「Need(必要な支援)」を丁寧に捉えることです。その方の思いをしっかり受けとめたうえで、私たちがどんな関わりをすれば前に進めるのか、一緒に考えていきたいと思っています。
そして、どれだけ技術や知識を磨いても、理学療法士一人でできることには限りがあります。だからこそ、医師や看護師、ケアスタッフなど多職種と力を合わせながら、その方にとって最適なリハビリテーションを実施することを大切にしています。
僕はこれからも、ずっと「現場ファースト」でいたいと思っています。最近はマネジメントに関わる機会も増えましたが、根っこにあるのは「患者さんのために」「スタッフが臨床をもっと楽しめるように」という思いです。
また、患者さんご自身が主体的にリハビリを進められるよう、私たちが学んできたことをどう伝え、どう日常につなげるか。インソールの活用も含め、リハビリの時間以外にも良い変化が生まれる仕組みをつくっていきたいと考えています。
依存ではなく、自立へ向かうリハビリを。そのために、できることを少しずつ広げながら、これからも挑戦を続けていきたいと思っています。

リハビリに励む方へのメッセージ

最後に、リハビリに励んでいる方へ向けて、メッセージがあればお願いします。

入院中だけでなく、退院してからもリハビリを一生懸命続けていらっしゃるみなさんの力は、本当に素晴らしいと感じています。
できることが少しずつ増えていく姿を見るたびに、私たちも大きな力をいただいています。
リハビリを続けていくうえでは、気持ちを保つことがとても大切です。入院中も、これからの生活でも、その意欲を支えられるように私たちも全力で寄り添いたいと思っています。
どうか一緒に、できることを見つけながら、少しずつ前へ歩んでいきましょう。

塚本さん、あたたかいメッセージをありがとうございました。
運動器のリハビリテーションに対する探究心や、利島村での経験で深まった生活者としての視点、そして後輩やチームを思うやさしさが、とても印象的でした。
塚本さんの挑戦が、これからも多くの方の希望につながっていくことを心から願っています。リハノワは、塚本さんのご活躍を心から応援しています。
本日は、貴重なお話を聞かせていただき、ありがとうございました。


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以上、今回は東京都世田谷区にある世田谷記念病院で、運動器のリハビリテーションに携わる理学療法士・塚本泰成さんを紹介しました。
ひとりでも多くの方に、塚本さんの素敵な想いと魅力がお届けできれば幸いです。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
今後ともリハノワをよろしくお願いいたします!
かわむーでした。

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