みなさんこんにちは、リハノワのかわむーです。
リハノワではこれまで、全国各地、そして海外のリハビリ現場や当事者、ご家族、専門職のみなさまを取材し、多くの記事を届けてきました。
そのなかで、私が実感したのは、「やりたいこと」がある人ほど、自分らしく前を向いて歩んでいるということです。旅やおでかけには、人を動かす「やりたい」があふれています。そして、その一歩が新しい出会いや目標につながり、その人の人生をさらに彩り豊かなものにしていく光景を、私は何度も目にしてきました。
今回は、私が実際に出会ったストーリーを通して、旅やおでかけが人の背中をそっと押し、新しい一歩につながっていく様子をお伝えしたいと思います。
人生を彩る旅とリハビリの可能性
リハビリの輪をつなげるメディア「リハノワ」を立ち上げたのは、2019年11月のことでした。
それから全国各地、そして海外にも足を運び、多くのリハビリ現場や当事者、ご家族、専門職のみなさまを取材してきました。これまで配信してきた記事は、まもなく300本になります。
リハノワを立ち上げたきっかけは、「リハビリテーションを続けることの難しさ」と向き合いたかったからです。
退院後に目標を見失ってしまう人や、思うようにモチベーションを保てない人。必要な情報や選択肢を知らず、本来得られるはずだった機会を逃してしまう人。そんな方々に、リハビリ当事者のリアルな声や経験、専門職の知恵などを届け、「自分もやってみよう」「もう少し頑張ってみよう」と思えるきっかけをつくりたいと思い、これまでリハノワを運営してきました。

取材を重ねるなかで、私が実感したのは、「やりたいこと」がある人ほど、自分らしく前を向いて歩んでいるということです。
自分らしく人生を楽しんでいる方々は、「次にやりたいこと」を見つけるのがとても上手でした。そして、その日を迎えるために、リハビリや体調管理を前向きに続け、自分なりの準備を重ねていました。
「友人に会いに行きたい」
「家族と旅行に行きたい」
「大好きなお店へ、もう一度行きたい」
そんな「やりたいこと」の多くは、おでかけや旅行など、外へ出ることにつながっていました。
その日のために足を鍛える。体調を整える。お気に入りの服を選び、おしゃれを楽しむ。
「行きたい」「やってみたい」という気持ちはが、その人の毎日を前向きに動かしていたのです。

もちろん、おでかけや旅行だけが答えではありません。
それでも、自分の世界を広げ、新しい景色や人との出会いに触れることは、その人らしさを育み、新たな一歩を踏み出すきっかけになっています。
ここからは、旅やおでかけが人の人生を前へ動かした、私が実際に出会った2つのストーリーをご紹介します。
人生が動き出す瞬間
淡路島でのストーリー
2025年、株式会社パソナウェルネスツーリズムが企画した淡路島ツアーに、あるご夫婦が参加されました。奥さまにとっては、脊髄梗塞を発症し、車いす生活になってから初めての宿泊旅行でした。


この旅には、世界一周を2度経験した車いすトラベラー・三代達也さんも参加されていました。
三代さんから大浴場での入浴方法を教わり、車いすになってから初めて温泉へ。さらに、農業体験や観光、階段を上っての禅体験など、それまで「自分には難しい」と思っていたことにも、一つひとつ挑戦されました。



旅の終わり、奥さまは笑顔でこう話してくださいました。
「新たな一歩が踏み出せました」
後日お会いすると、「今度は夫と伊勢へ行くんです。もう、ホテルも予約しました」と、新しい旅行の予定をうれしそうに話してくださったんです。
さらに、「いつか飛行機に乗ってハワイにも行ってみたい。まずはその前に北海道か沖縄かな」と、新たな夢も聞かせてくださいました。
旅をきっかけに新しい目標が生まれ、その目標がまた次の一歩につながっていく。その姿を目の前で見て、旅には人生を前へ動かす力があるのだと、あらためて実感しました。

さらに、この旅は、別の参加者にも新たな一歩をもたらしました。
ツアーに参加していた片麻痺のイタリアンシェフ・玉澤良樹さんは、三代さんが世界を旅し、多くの人を勇気づけながら挑戦を続ける姿に大きな刺激を受けました。

「自分にも、もっとできることがあるかもしれない」
そんな思いからはじめたのが、「片麻痺のシェフのインクルーシブキッチン」です。障害の有無や年齢に関係なく、一緒に料理をつくり、食べ、語り合う、イタリア料理講習会です。



そこへ参加した、事故をきっかけに料理をあきらめていた電動車いすの女性は、帰宅後、久しぶりに包丁を握り、息子さんからリクエストされた筑前煮を作ったそうです。
その報告を受けた玉澤さんは、「涙が出るほどうれしかった」と話してくださいました。
一人の挑戦が、誰かの挑戦につながり、その挑戦が、また次の誰かの背中を押していく。
淡路島で私が目にしたのは、旅が人の背中を押すだけではなく、その一歩が人から人へと受け継がれ、希望の輪になって広がっていく姿でした。

写真提供=株式会社パソナウェルネスツーリズム、Shotaro Koyanagi
鞆の浦でのストーリー
2025年夏、広島県福山市・鞆の浦を舞台に、視覚に障害のある方を対象とした1泊2日のツアーを開催しました。
地元の福山観光旅行さんと、ユニバーサルツーリズムアドバイザーの渕山知弘さんにご協力いただき、約3ヵ月という短い準備期間で実現したツアーです。募集開始からわずか2日足らずで満席となり、全国各地から5名の方が参加してくださいました。そのとき私は、「旅に出たい」と願っている方が、こんなにも多くいることをあらためて知りました。
旅では、しまなみの穏やかな海を巡るカヤック体験や、福山城、福山自動車時計博物館などを訪れました。




なかでも印象に残っているのは、初めてカヤックに挑戦した参加者の笑顔です。「楽しかった!」という言葉が自然とあふれ、たくさんの笑顔が広がっていました。
さらに、参加者同士もすぐに打ち解け、「今度は一緒に○○へ行きましょう」「次はこんなことにも挑戦したいですね」と、新しい約束や目標が次々と生まれていました。
「楽しい」や「ワクワク」は、障害や年齢など関係なく、人を前へ動かす力になる。
旅やおでかけは、新しい目標を生み、人と人をつなぎ、その人らしい世界を少しずつ広げていく。この旅を通して、その力をあらためて教えていただきました。

社会参加まで見据えたアプローチ
リハノワは、リハビリテーションとは、身体機能を回復することだけではなく、一人ひとりが自分らしく豊かに生きるための営みだと考えています。
私はかつて、超急性期の医療現場で理学療法士として働いていました。当時は機能回復に全力を注ぐ一方で、その先にある暮らしや人生まで、十分に描けていなかったように思います。
しかし、病院を飛び出し、多くの当事者のみなさまと出会い、取材を重ねるなかで、その景色は少しずつ変わっていきました。
「やりたいこと」があるからこそ、人は前を向き、リハビリテーションを続ける力が生まれる。
だから私は、おでかけや旅を単なるレジャーではなく、その人らしい人生や社会参加につながる大切な一歩だと考えています。
もちろん、一歩を踏み出すことは簡単ではありません。それでも、「行ってみたい」「会いに行きたい」「やってみたい」という気持ちは、きっと次の一歩につながります。
リハノワはこれから、そんな前向きな気持ちを少しでも後押しできるよう、これまでのリハビリ施設や当事者の紹介記事に加えて、全国各地のおでかけ情報や旅のヒントを、丁寧にお届けしていきたいと思います。記事が、誰かの「ちょっと出かけてみようかな」というきっかけになれば、これほどうれしいことはありません。
「行きたい」が、「行けた!」に変わる瞬間を、一つでも多く。
その一歩を、リハノワはこれからも、みなさまと一緒に応援していきます。



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