みなさんこんにちは、リハノワ.comのかわむーです!
本日は、広島県広島市にある「高陽整形外科クリニック」で働く理学療法士の増田 拓さんを取材してきたので、皆さんにご紹介したいと思います!
普段理学療法士として働く中で感じることや、スポーツ現場でトレーナーとして活動する中で大切にされている熱い思いなど、その魅力にとことん迫っていきたいと思います!
理学療法士・増田拓さん
◆増田 拓(ますだ・ひろし)さん
1984年8月2日 大阪府大阪市出身
趣味 : ホームジムでトレーニング、読書、ランニング
<資格>
・理学療法士
・日本スポーツ協会公認アスレティックトレーナー
・日本障がい者スポーツ協会公認スポーツトレーナー
<経歴>
2008年3月
藍野大学医療保健学部 卒業
2008年4月
理学療法士免許取得
飛翔会寛田クリニック 勤務
2013年5月
高陽整形外科クリニック 勤務
<トレーナー活動>
2008年 活動開始
2013年
日本車いすテニス協会 ナショナルトレーナー 就任
増田さんは、理学療法士になった最初の年からスポーツリハビリやトレーナー活動に力を入れてこられたのですね。
“スポーツ分野の理学療法士になりたい” と思われたのはいつ頃からだったのですか?
僕はもともとサッカーをやっており、高校生の頃からスポーツトレーナに興味を持っていました。
高校ではスポーツ科学科のスポーツトレーナー養成コースを専攻し、授業でバイオメカニクスやテーピングの巻き方などを学んでいました。
ある日、日本人で初めてメジャーリーグで活躍された理学療法士の先生が、講師として来てくれたんです。「こんな仕事あるんだ」「なんかカッコいいな」と思い、その時の出会いがきっかけで理学療法士を目指すようになりました。
大阪の大学を卒業後は広島のスポーツクリニックに就職されたそうですが、地元を離れ県外のクリニックを選ばれたのは、何か理由があったのですか?
広島に来ることになったのは、大学4年生の時の就職説明会がきっかけでした。
後にナショナルトレーナーの上司となる方がお話しに来てくれていたんです。その方は、「スポーツ関係の病院は厳しいかもしれないけど、必ず身になるから、やる気がある方は是非来てください」というメッセージを発信されていました。
実は、その時僕は大阪の急性期病院に就職しようと考えていたんです。ですが、職場が各スポーツチームに派遣してくれるのが魅力的で、そこにすごく興味を持ちました。その3日後に見学に行き、1週間後には試験、2週間後には合格をもらいました。
お話に来てくれていた上司と働きたいという思いと、トレーナーとしても成長できそうだったいというのが理由で、広島を選んだ感じですね。
就職して6年目の頃、同法人内で異動があったようですが、環境が変わって何か変化はありましたか?
6年目で移動になった時は、慣れていた環境が変わったり担当患者さんともお別れしないといけなかったりで色々と不安でしたが、逆に一旦初心にかえれた感じで気が楽にもなりました。
異動先のスポーツクリニックでは、ちょうど社内ブランディングに力を入れていた時期で、そこにも携わらせてもらいました。地域がら高齢者も多く来られるため、高齢者もスポーツ選手のように健康で生き生きとした人生を送っていただきたいという思いから「ライフアスリート」というスローガンを掲げました。
アスリートだけでなく老若男女問わず皆さんが、目標を持った生きがいのある生活を送ってもらいたいですね。
ナショナルトレーナーとしての道
現在は、車いすテニスのナショナルトレーナーとして大活躍中の増田さんですが、トレーナーになるまではどのような道を歩まれてきたのですか?
就職した2008年から、まずはサッカーやテニス、ソフトテニス、陸上競技などのトレーナー活動を行いました。サッカーやテニスは高校や大学、ソフトテニスは国体の広島県代表チーム、陸上はパラ陸上を担当することになります。
パラ陸上に関しては、障がいの程度によるクラス分けや評価方法を学ぶことができ、良い機会となりました。
現在メインで関わっている車いすテニスでいうと、「ピースカップ」という大会が年に1回広島で開催されるのですが、そのお手伝いを2008年から毎年やっていました。
就職した最初の年から、非常に多くの活動をされていて驚きです!
車いすテニスは、最初は年に一度かかわる程度だったのですね。どんなきっかけでナショナルチームで活動することになったのですか?
2012年のロンドンオリンピックが終わったタイミングでトレーナー部門が立ち上がったんです。一気にトレーナーを増やすことになりました。そこに、手をあげたんです。
その後、2013年の夏に初めて日本代表の合宿に参加することになりますが、最初はめちゃくちゃ緊張しました(笑)
これまでも大会のトレーナーブースは経験したことがあったため、専門的なことに関する不安はあまりありませんでした。ですが、周りにいる選手や監督やコーチが全国から集まってくる有名が方々ばかりだったので、行く前は相当ドキドキしましたね。
ナショナルチームのトレーナーとしてプロの選手に関わるということは、試合数も多くかなり大変そうです。年間で大体どのくらい帯同されているのですか?
そうですね、年間を通して大体100日(2〜3ヶ月)くらいは合宿、遠征帯同のためクリニックの外で過ごしています。
多い時は月の半分は遠征という感じで、最長3週間ぶっ通しで出ることもありました。海外にも帯同し、これまでテニス4大大会(グランドスラム)やアジア大会にも行きました。
“潤滑油” のような存在
お話を伺いながら、車いすテニスのナショナルトレーナーという活動は非常に華やかでかっこいいなと感じました。一方で、体のどこかしらに障害を持たれた方のサポートというのは、細やかな配慮が必要となる場面も多々あるのではないかと思います。
増田さんがプロ選手の方々と関わられる中で、大事にしていることはなんでしょうか?
そうですね。やはり、普段見ている健常の選手たちと同じ見方をすると通用しないです。例えばリスク管理の面とか。選手の中には脊髄損傷の方もいるので、自律神経過反射やそれぞれの損傷部位による体の変化や特徴、こういった事をしっかりと勉強しておかなければなりません。
オーストラリアの四季は日本とは真逆です。すると、病気で障がいを持った方の中には体温調節が難しい方もいるんです。体調を崩しやすくなったり、思うように体が動かせなかったり、逆にブレーキがかけられなかったりすることがあります。そういった時は本人としっかり話をしながら、自分で日常生活とか障がいに関する管理ができるようにサポートをしていきます。
ナショナルトレーナーに就任した後、「障がい者スポーツ協会公認スポーツトレーナー」という資格も取得しました。
「選手にストレスがかからず、いかにベストコンディションで試合に挑んでもらえるか」というところを主眼においたサポートをされているのですね。
“人” としての温かさも感じます。
ありがとうござます。
僕は、技術的な面で専門職を出していくってことよりも、車いすで移動する時に上れない段差があったり荷物が持てなかったりとかした時に、さっと手伝える “潤滑油” になることの方がよっぽど大事だと思っています。
それは、パラスポーツに関わるようになり学んだことです。
僕のやりがい
トレーナー活動や、普段クリニックでお仕事をされる中で “嬉しいな” とか “やりがい” を感じる瞬間はどういった時ですか?
トレーナー活動でいうと、一緒にトレーニングをしてきた選手から感謝の言葉をもらった時はすごく嬉しいですね。
以前、車いすテニスの全豪大会で優勝した時に、普通だったら選手はファンとかコーチとかに「ありがとう」と伝えることが多いんですが、その時はトレーナーも一緒に呼んでくれたんです。あの時は本当に嬉しかったですね。
その光景を思い浮かべただけで、グッときました。
クリニックで働かれる中ではどうですか?
以前、「人生が変わりました」って言ってもらった時は嬉しかったですね。
外来のリハビリは、モチベーションの作り方が本当に難しいです。まずは、「あなたがやりたいことはなんですか?」と問い、そこからめちゃくちゃ話をします。目標を一緒に設定するんですよね。僕はここに丁寧に時間をかけます。
リハビリをする中では、できないところばかりを見るのではなく、できているところをフィードバックしながらプラスに変換してあげることも大切です。いかにその人が “自立” できるか、という事を意識しながら足らなところをケアしていきます。
そんなアプローチをしながら、自ら自分の人生を切り開いていかれる方を見た時はすごく嬉しいです。
増田さんがサポートしたことで、新たに歩みだせた方がいらっしゃったのですね。
リハビリのゴールは依存ではなく “自立する” こと。あまり時間がかけられない外来のクリニックで、そこまでの効果を出せるとは、増田さんのプロフェッショナルを感じました。
諦めるという選択肢をなくす
セラピストとして “大事にしている事” や “モットー” はありますか?
僕は、病気や怪我や障がいにより諦めていたことを、一つでもなくしてあげたい、と常に思っています。
病気や怪我をなかったことには出来ないし障がいも根本的に治すことは出来ないけど、その人のやりたいことをサポートできる関わり方をしていきたいと思っています。伴走といった形ですかね。
主役はあくまで本人で、その人が本気出すのをお手伝いしたいんです。
素敵です。
サポートした方が「生きがいある人生、送れています!」なんて言ってくれたら、ものすごく嬉しいでしょうね。
あと、僕は患者とセラピストは絶対に対等じゃないといけないと思っています。
というのも、外来で仕事をしていると、どうしても “先生” になっちゃうんですよね。先生って呼ばれると「何とか良くしなくちゃ!」「与えなくちゃ!」て思いがちなんですが、それじゃダメなんです。
僕は患者さんに、「あなたに身体のことは教えられる。そして人生を豊かにするお手伝いもするんだけど、あなたも僕に何か教えてくださいね(笑)」なんてことを話しながら、“あなたと僕は対等ですよ” ということをやんわりとお伝えしています。
お互いが先生でお互いに生徒みたいな関係づくりをしていくのが、僕の中でのポイントです。
トレーナーを目指す方へ
最後に、“将来スポーツ分野で働きたい” と考えている学生さんやセラピストの方に向けて、一言メッセージをお願いします。
理学療法士としてスポーツ分野で働くのは、「ハードルが高そう」とか「資格を取るのも大変そう」とか思われる方も少なくないと思います。
しかし、現場に行くのは資格がなくてもできます。実際に僕も、就職してから初めてスポーツの現場に関わるようになりました。お手伝いからにはなりますが、現場で学ベることはたくさんあります。現場に通っているうちに、いつの間にかハードルは下がります。
資格がないとできないと思っている人は多くいると思いますが、まず先にやるのは現場経験だと僕は思います。とにかく現場に行って実績を積んでもらいたいです。僕自身も、テニスのトレーナーコースなどで初心者の方が教えてくれって来てくれると、とっても嬉しいです。
現場であなたのことを待っている方はたくさんいます。
PTだからとかトレーナーだからとか言って、頭でっかちで現場に関わりに行くとあまり良いことはありません。一番大切なのは、人と人との関わりだということを忘れないことです。
一緒にスポーツ分野のリハビリテーションを盛り上げていきましょう!
最後は、増田さんから温かくもパワーのある言葉をいただきました。
今後のさらなるご活躍を、心より楽しみにしています!
増田さん、本日はありがとうございました。
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以上、本日は広島県広島市にある「高陽整形外科クリニック」で働く理学療法士の増田 拓さんを紹介させていただきました。
一人でも多くの方に、増田さんの素敵な想いがお届けできれば幸いです。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
今後ともリハノワ.comをよろしくお願いいたします!
かわむーでした。
※この取材は、本人の同意を得て行なっています。本投稿に使用されている写真の転載は固くお断りいたしますので、何卒宜しくお願い申し上げます。
コメント
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