みなさんこんにちは、リハノワのかわむーです!
本日は、東京都足立区にある「駄菓子屋かしづき」さんを紹介します。
かしづきは、理学療法士である佐々木隆紘さんが店主を勤める地域にひらけた駄菓子屋です。
実際にかしづきさんにお邪魔し、駄菓子を楽しんだりイベントを見学させていただいたりしたので、写真を交えながらその魅力についてお伝えしたいと思います。
駄菓子屋の概要
■ 運営
NPO法人 presents
■ 開店
開店:2021年3月28日(日)
■ 店長
佐々木隆紘(ささき たかひろ)さん
NPO法人 presents 代表理事/理学療法士
■ 営業時間
第2・4水曜日 14:00~17:30
毎月1回のイベントを日曜または祝日に開催(駄菓子屋は10:00~16:00で営業)
■ スタッフ
理学療法士:2名
(佐々木隆紘さん、妻・明日香さん)
■ 所在地
〒121-0055
東京都足立区加平1-12-3
共同スペース「y-ベース」内■ アクセス
東京メトロ千代田線 北綾瀬駅から徒歩約6分
店主・佐々木隆紘さん
■ プロフィール
佐々木隆紘(ささき たかひろ)さん
1987年1月30日生まれ/神奈川県横浜市出身
理学療法士免許を取得後、スポーツ現場や整形外科・ペインクリニックで働く中で健康増進に関する普及啓発や社会参加の環境整備をする必要性を痛感。クリニック勤務の傍ら、2017年にNPO法人presentsを設立し、代表理事に就任。駄菓子屋という場所でソーシャル・キャピタル(人間関係資本・社交資本)の醸成を行うべく2021年3月に東京都足立区に駄菓子屋かしづきをオープン。店主として毎月3回お店に立つ。
NPO法人Presentsの新規事業として始まった駄菓子屋かしづきですが、佐々木さんがそもそもNPO法人を立ち上げられた経緯を教えてください。
私は理学療法士として外来の整形外科・ペインクリニックで働く中で、どうしたら人々がもっと健康に過ごせるかをずっと考えてきました。
以前、慢性疼痛のある高齢患者さんを担当し「痛みがなくなってまた旅行に行く」という目標を一緒に立てリハビリを開始しました。しかし、痛みが改善してきたある日「旅行にいったら痛みが強くなるだろうから、行きたくない」と言うようになったのです。一方で、別の慢性疼痛の患者さんは、痛みを抱えたままでも「来月また海外に行く」という理由で、外来予約のキャンセルをしていました。
この時、治療が必ずしも行動変容に関係しない可能性があること、また、自分が治療を手段として関わることの限界を実感します。
本当に必要なのは痛みをとることや病気の予防ではなく、well-being(問題に直面した時に本人主導で管理し、より善く生きること)なのではないかと考えるようになります。もっと幅広い視野で人の健康に関わりたいと思い、クリニックで働く傍ら、NPO法人presentsを設立し活動することを決意しました。
「presents」には2つの意味があります。一つは「贈り物」という意味で、もう一つは「今の」という意味です。私たちが暮らす社会そして子ども達が生きる未来のために、今の私にできる取り組みが、明日を生きる人々への贈り物になりますように、と、そんな願いを込めています。
体の状態に関わらず、その付き合い方を知っている方は幸せそうにしていたのですね。
Presentsに込められた想い、とても素敵です。NPOを立ち上げてからの活動内容、そして、4年を経て佐々木さんの中で変化したことがあれば教えてください。
NPOを立ち上げてからWell-beingを実践するため、専門家としての予防講座やコミュニティ作りとしてのワークショップなどに力を入れて活動していました。
当初、私は予防に必要な情報を届けたり、また、コミュニティを構築することができれば人は健康に過ごせるのではないかと思い、講座やワークショップなどを開催していました。しかし、活動を始めて1年くらいして、色々と考えるようになります。
自分たちのしている予防医療の普及啓発活動は、本当に全ての人を健康にしているのだろうか? 結局、健康格差(各人の置かれた社会経済的状態によって健康状態に差があること)を広げているだけじゃないかと。
以降、自分が本当にしたいことは何なのか、ひたすら考え続けました。
駄菓子屋から考えるWell-being
佐々木さんが悩み、考え抜いた結果、駄菓子屋を始めることにした理由や目的を教えてください。
健康格差をなくすために必要なことを考え抜いた結果、運動習慣や食事を気をつけるといったことではなく幼少期からの環境にアプローチして自己肯定感を育むことではないかとたどり着きました。自己肯定感が育まれると、個人の置かれている状況に関わらず「健康である」という状態(≒well-being)に、もしかしたら近づくのではないかと考えました。
その上で、子どもが社会とどう関わるか? 子どもに関わる社会がどうあるか?ということがとても大切になります。健康は自己責任ではありません。特に子どもは、自分の育つ環境を自分で選ぶことができません。養育スタイルや経済状況などは各家庭によって大きく異なりますし、家庭環境によって子どもの発達にも影響があることが報告されています。
なので、子どもを育てるのは親だけが行うものではなく、社会で行うべきであると私は考えます。当然、社会と親の繋がりも大切になってくると考えます。
駄菓子屋かしづきは、地域にたたずむ普通の駄菓子屋でありながら、様々な子育ての悩みを聞ける場所であり、また子どもとの直接的な関わりから自己肯定感を育む場所として運営しています。医療従事者としての強みも存分に活かしつつ、地域連携の一つの拠点となるように取り組んでいます。
学校でも家庭でもない「駄菓子屋」という場所で、「駄菓子屋のおじちゃん」という距離感から関わっていけたらと考えています。
子どもの自己肯定感を育むこと、さらには保護者の心の余裕を作り出すことを目的に運営されているのですね。
生まれた環境によって健康状態に差が出てきてしまう健康格差。この壮大なテーマに真正面から向き合う佐々木さんの姿勢に胸を打たれました。
駄菓子屋かしづきの名前の由来は何なのでしょうか?
日本らしい文化でもある駄菓子屋の名前なので、美しい日本語を店名にしたいと考えて色々調べていました。その中で「かしづき」という言葉を知りました。
かしづきは、古い日本語で「大切に世話をする」「大事に育てる」という意味があります。この言葉を知った時に即決でした。「菓子好き」にもかけられますし(笑)
10円あれば買い物を理由にコミュニケーションが取れる誰もが安心できる場所。そんなハードルの低い場所であり続け、全ての関わる子どもたちに良い経験をしてもらえることを大切にしていきます。
駄菓子屋かしづきでは、子ども達を全肯定します。例えば、以前、靴紐を結べなかった子が結べるようになった時に「めっちゃうまいね!」と全力で褒めました。その子は照れ臭そうにしていましたが、とても誇らしそうな顔をしていました。
子どもの時に大事なのは親との関係性です。しかし、例え親との関係性がよくない子どもも、地域との関係性がしっかりしていれば予後はいいといわれています。地域で、ちょうどいい距離感で、いろんな子どもと関わっていきたいなと考えています。
心を育むことに力を注がれている佐々木さんですが、佐々木さんご自身はどんな幼少期を過ごされたのですか?
優秀な姉がいて、常に劣等感を感じていました。
当時は姉より背が低く、力も弱く、運動や絵を描くのも下手で全てにおいて劣っていると感じていました。いつの間にか自分に自信が持てなくなり、部活動のバスケも、怒られるのがいやで試合に出たくないと言ったほどでした。
そんな自分の性格が変わったのは、東日本大震災です。ボランティア活動で被災地に行き、人生観が変わりました。生きてるだけで幸せなんだと、「今」に感謝できるようになります。
それ以降、人と比べる人生から自分の人生を生きるようになったと思います。
実際の雰囲気
取材当日に開催されていた「正しい靴の選び方講座」を見学させていただきました!
親子参加の本講座の講師は、理学療法士の保井亮汰さん。それぞれの足を計測し特徴を把握した上で、靴の選び方のポイントや靴紐の締め方をわかりやすく伝えられていました。
駄菓子屋には絶えずいろんな方が来られ駄菓子を買っていきます。
駄菓子屋かしづき、大繁盛です!
駄菓子屋かしづきは開店して間もないですが、すでに地域の子どもから子育て世代、そして高齢者まで幅広い方々に愛されていることがとてもよく分かりました!
休みの日など本業の合間を縫って運営するのはなかなか大変なこともあるかと思いますが、店主・佐々木さんのモチベーションは一体なんなのでしょうか?
楽しいから、続けられていると思います。
子ども達の笑顔や、できなかったことができるようになった瞬間の表情の変化を見れた時などはたまらなく嬉しいです。最近では普通に生活していても声をかけてもらえるようになったりして。そうなると、自分もどんどん楽しくなってきますよね。暮らす街が、駄菓子屋を始めてからもっと好きになりました。
これからも医療従事者としての自分というのは全面には出しすぎないように、さりげない距離感で地域と関わり続けていきたいと思います。信頼関係を構築するのが先で、専門性はその後のおまけ程度で役立つことができればと考えています。
少しでも生まれた環境によって将来の健康に差が出てしまう健康格差問題を減らせるように、自分ができることに向き合い続けます。
佐々木さん、素敵なコメントありがとうございます!
学校でも家庭でもない駄菓子屋という場所で、あくまでも「駄菓子屋の店主」という距離感から地域の子ども達を中心とした住民に関わられる姿に非常に感銘を受け、改めて健康の定義について考えさせられました。
多種多様な人が地域で当たり前に健康に暮らすことに全力で向き合う佐々木さんの挑戦を、これからも心から応援しています!
本日は、ありがとうございました。
以上、東京都足立区にある「駄菓子屋かしづき」を紹介させていただきました。
一人でも多くの方に、店主・佐々木さんの素敵な想いと駄菓子屋かしづきの魅力がお届けできれば幸いです。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
今後ともリハノワをよろしくお願いいたします!
かわむーでした。
この取材は、本人の同意を得て行なっています。本投稿に使用されている写真の転載は固くお断りいたしますので、何卒宜しくお願い申し上げます
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