パラアスリートのメディカルチェック専門外来「岡山大学病院パラアスリートヘルスケア外来」

みなさんこんにちは、リハノワのかわむーです!

今回は、岡山県岡山市にある岡山大学病院の「パラアスリートヘルスケア外来」を取材しました。

パラアスリートヘルスケア外来は、総合内科・総合診療科内に設置されたパラアスリートのメディカルチェックなどを行う専門外来です。

本記事では、パラアスリートヘルスケア外来の特徴や受診方法、実際に通院されている方の声を紹介します。

岡山大学病院

岡山県岡山市にある岡山大学病院は、「特定機能病院」として、高度医療の提供、高度医療技術の開発、高度医療に関する研修を実施する能力等を備えています。150年以上の歴史があり、日本有数の大学病院として地域の医療を支えています。病床数は853床(一般817床、精神34床、感染2床)で、診療科目は総合内科・総合診療科、血液・腫瘍内科、循環器内科、脳神経内科、整形外科、消化管外科、脳神経外科、産科婦人科、救命救急科など多岐にわたります。

パラアスリートヘルスケア外来

パラアスリートヘルスケア外来とは

2023年9月に開設した「パラアスリートヘルスケア外来」は、パラアスリートのメディカルチェックなどを行う専門外来です。

岡山大学病院の総合内科・総合診療科内に設置されており、内科疾患全般への対応や他の専門診療科との連携がスムーズに行える体制が整っています。また、総合リハビリテーション部・リハビリテーション科の医師や療法士、薬剤部のスポーツファーマシストとの連携も強化されています。

脊髄損傷者の車椅子の調整など特別な処置が必要な場合には、吉備高原医療リハビリテーションセンターなどの県内専門施設とも連携して診療を行っています。

実際のパラアスリートヘルスケア外来の様子

診察について

パラアスリートヘルスケア外来は、週1回(毎週火曜日午後)に完全予約制で行っています。担当は、日本パラスポーツ協会公認パラスポーツ医でリハビリテーション科専門医の大野洋平先生です。

身体障害または知的障害のあるパラアスリートをはじめとした「パラスポーツに取り組む全ての方」を対象に、メディカルチェック(健康診断)や日本パラスポーツ協会指定の医師診断書作成、医療的支援、生活習慣病の予防や治療、ドーピング対策、クラス分けの診断書(Medical Diagnostic Form:MDF)の作成を行っています。

受診までの流れ

パラアスリートヘルスケア外来受診の流れは、以下の通りです。

1)予約
事前問診票(Word)をダウンロードして必要事項を記入し、岡山大学病院総合内科・総合診療科外来にFAXまたは郵送
・担当医が事前問診票を確認後、本人と受診日程を調整し決定
※申込みから折り返しの連絡までは1週間程度

2)受診
以下を持参し、受診する。
診察申込書
・記載した事前問診票
・健康保険証
・岡山大学病院の診察券(お持ちの方のみ)
・お薬手帳 

<日本パラスポーツ協会所定メディカルチェックを希望する方>
・医師診断書(日本パラスポーツ協会所定の書式)

<国際クラス分け診断書(MDF)の作成を希望する方>
・MDF(国際競技団体のサイトなどからダウンロードしたもの)
・身体障害者手帳
・パスポート(名前の英語表記確認のため)

通院者の声

実際に通院されている方にお話を伺いました。

岡 紀彦(おか・としひこ)さん
1964年3月26日生まれ。岡山県岡山市出身。先天性骨形成不全症による骨折を30回以上経験し、症状が落ち着いた中学2年の頃から卓球を始める。2002年2月より日本初の障がい者プロ卓球選手として活動を開始。日本肢体不自由者卓球選手権大会(現:全日本オープンパラ卓球選手権大会)の車いすの部では、1988年から2012年まで25連覇という大記録を達成した。パラリンピックは、シドニー、アテネ、北京大会に出場し、アテネ大会ではクラス別個人戦(クラス5)でベスト16に入る。2023年より岡山大学病院パラアスリートヘルスケア外来に通っている。


かわむー
かわむー

パラ卓球のプロ選手として活躍されている岡さんですが、パラアスリートヘルスケア外来に通われるようになったきかっけを教えて下さい。

また、実際に通われてみていかがですか?


岡さん
岡さん

以前、スポンサー企業の支援のもとフィジカルチェックを行うことになり、横浜にある昭和大学にかかりました。動作解析を通して、変形している骨の影響で怪我のリスクのあるフォームになってないかなどをチェックしました。

その後、定期的なフィジカルチェックが必要とのことで、地元の岡山で骨形成不全症に詳しいドクターを探してもらい、岡山大学病院の小児科にかかるようになりました。

2023年からは、パラアスリートヘルスケア外来が新設されたということで、こちらにも通っています。岡山県内にパラアスリートに特化した外来ができるなんて、最初はとても信じられませんでしたが、同時にすごく心強く感じました。



岡さん
岡さん

担当の大野先生は、もともと卓球選手であり、細かい技術的な話もできるので、身体のさまざまな悩みを相談させてもらっています。

リハビリテーションや総合内科が専門と伺っていますが、他の診療科の先生方ともしっかりと連携をしながら、どんな患者さんにも分け隔てなく接してくださるお人柄なので、心から信頼しています。

種目やレベルを問わず、パラスポーツに取り組んでいる方にはぜひ知ってもらいたい外来です。


担当医よりメッセージ

◆大野 洋平(おおの・ようへい)さん
1988年生まれ、岡山県玉野市出身。2014年に福岡大学医学部卒業後、岡山大学病院での初期研修を経て、練馬光が丘病院総合診療科で後期研修。2017年に一般社団法人日本肢体不自由者卓球協会チームドクターに就任。2018年から東京大学医学部附属病院リハビリテーション科の研修プログラムを開始し、国立病院機構東京病院や国立障害者リハビリテーションセンター病院などで勤務した。2020年に日本パラスポーツ協会公認パラスポーツ医、2021年にリハビリテーション科専門医を取得。2023年4月に岡山大学学術研究院医歯薬学域(医)瀬戸内(まるがめ)総合診療医学講座の助教に着任。2024年5月より岡山大学学術研究院医歯薬学域(医)岡山県南東部(玉野)総合診療医学講座助教。


かわむー
かわむー

大野先生が、岡山大学病院にパラアスリートのメディカルチェックを行う専門外来「パラアスリートヘルスケア外来」を開設したきっかけを教えて下さい。


大野さん
大野さん

東京の病院でパラアスリートを対象とした「メディカルチェック外来」を担当していたことや、基礎的なリハビリテーションを終えた次のステップとして「パラスポーツを始めたい!」という多くの患者さんと出会ってきた中で、パラスポーツに取り組む方々を継続的にサポートする場の必要性を強く感じるようになりました。

総合国際大会に出場するパラアスリート(強化指定選手)は、年に1回、メディカルチェック(健康診断)を受けて、日本パラスポーツ協会が指定する診断書を作成することが義務付けられていますが、そのメディカルチェックに対応している医療機関が中四国地域は鳥取県内に2カ所のみという状況でした。

地元である岡山に帰ったのを機に、これまでパラスポーツやリハビリテーションに関わってきた経験を活かしながら、岡山でもさまざまな選手のメディカルチェックやドーピング対策、健康管理などに関わってみたいと思うようになりました。

「パラアスリートヘルスケア外来を作りたい」と、総合内科・総合診療科の大塚文男科⻑に提案したところ、背中を押していただき、2023年9月より週に1回の専門外来がスタートしました。


かわむー
かわむー

大野先生はパラ卓球のチームドクターを軸にパラスポーツ医としても活躍されていますが、診療するうえで大切にしていることは何ですか。

また、パラスポーツに取り組んでいる方に向けてメッセージがあればお願いします。


大野さん
大野さん

私も中学時代から卓球を続けているため、診療するうえでは、スポーツをする側と医師の両方の立場から患者さんの気持ちに寄り添えるよう意識しています。

パラアスリートは、若い選手でも骨が弱くなっていたり、麻痺や切断によって感覚が鈍くなっていたりするので骨折などのけがにつながりやすい場合があります。また、中高年の選手を中心に生活習慣病も増えてきており、障害や症状によってはより多面的な評価や介入が必要となることもあります。

診察の際には、その方の障害の特性をしっかりと理解したうえで、信頼関係を築くことを大切にしています。年に一度の受診だけでなく、定期的な健康チェックができるようにサポートさせてもらっています。


パラ卓球選手とは実際にボールを打ち合うこともあるのだとか。お互いの距離が近くなり、コミュニケーションが取りやすくなるそうです。

アクセス

自動車で来院する場合
身体障害者用の駐車場があります。駐車料金は以下のとおりです。

【患者さん/付き添いの方】駐車割引サービスあり
・入構から30分以内:無料
・12時間以内:300円
・12時間超え1時間毎に:100円加算(1日上限2,000円)

※通院の際は「外来診療棟1階ご案内カウンター(7:30~15:30)」または「医科③番窓口(15:30~18:00)」で領収書と駐車券を提示する

岡山大学病院玄関近くにある身体障害者用駐車場


公共交通機関で来院する場合

【バス】
・岡山駅後楽園口(東口)バスターミナル4番のりばから、大学病院[構内]で下車(岡電バス)
・岡山駅9番のりばor岡山駅前から、大学病院入口で下車(循環バス)

【路面電車】
岡山駅前から [清輝橋] 行きに乗り、清輝橋で下車し、西へ徒歩5〜10分

【タクシー】
岡山駅タクシーのりばから約5〜10分

施設概要

 病院名 
岡山大学病院
病院長 前田嘉信さん

■ 設立
明治3年6月

 パラアスリートヘルスケア外来
開設:2023年9月

外来日:毎週火曜日午後

対象:身体障害または知的障害のあるパラアスリートをはじめとした「パラスポーツに取り組む全ての方」

診療内容:
・メディカルチェック(健康診断)
・日本パラスポーツ協会指定の医師診断書作成
・医療的支援
・生活習慣病の予防や治療
・ドーピング対策
・クラス分けの診断書(Medical Diagnostic Form:MDF)の作成

所在地
〒700-8558 
岡山市北区鹿田町2-5-1

■ 問い合わせ

TEL: 086-223-7151
(代表番号 総合内科・総合診療科外来へつないでいただくようお伝えください)

■ 関連情報
HP(パラアスリートヘルスケア外来)


かわむー
かわむー

<関連記事>

リハビリ科医・大野洋平さん
パラ卓球のプロ選手・岡紀彦さん

ぜひ合わせてご覧ください。


撮影:山本夏希


以上、今回は岡山大学病院のパラアスリートヘルスケア外来をご紹介しました。

ひとりでも多くの方に、岡山大学病院パラアスリートヘルスケア外来の魅力がお届けできれば幸いです。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

今後ともリハノワをよろしくお願いいたします!


かわむーでした。

この取材は、施設から同意を得て行なっています。本投稿に使用されている写真の転載は固くお断りいたしますので、何卒宜しくお願い申し上げます。

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