みなさんこんにちは、リハノワのかわむーです!
本日は、大阪府八尾市にある「訪問看護ステーション彩(いろどり)」の代表で、理学療法士の駒野倫久さんをご紹介したいと思います。
駒野さんの起業に至るまでのストーリーや八尾の町への熱い想い、また、今後描いている未来についてなど、その魅力にとことん迫っていきたいと思います。
駒野倫久さん
◆ 駒野 倫久(こまの ともひさ)さん
1984年5月14日 大阪府八尾市出身
<資格>
・理学療法士
・地域ケア会議推進リーダー
・介護予防推進リーダー
・フレイル対策推進リーダー
・協会指定管理者(上級)
・福祉住環境コーディネーター2級
・作業管理士
<経歴>
2007年
畿央大学 卒業
理学療法士免許取得
急性期病院 勤務
2010年
訪問看護ステーション 勤務
2014年12月
株式会社colors of life 設立
2015年4月
訪問看護ステーション彩 開設
2021年4月
ケアプランセンター彩 開設
僕とばあちゃん
現在、経営者としてご活躍されている駒野さんですが、駒野さんがそもそも理学療法士になろうと思われたきっかけはなんだったのですか?
僕はもともと高校時代は医療系に進もうとはしていなくて、建築、法学、理工学部など全く違う学部を受験していました。特にやりたいことが決まっていたわけでもないので、浪人の道を選び、1年間は予備校に通うことにしました。通い始めて2ヶ月くらいしたある日、ふと「自分、何してんだろう」と思ったんですよね。
自分の将来やりたい本当の事はなんだろうかと真剣に考え、過去の記憶を辿っていきました。すると、“ばあちゃん” に行き着いたんです。
僕の両親は昔からレストランを自営していたので、一緒に住んでいたばあちゃんが、僕のお世話をしてくれていました。
おばあさまに恩返しをしたい、という想いが心の奥にあったのですね。
そうなんです。ばあちゃんは昔から膝が悪く、僕が小学校の頃には両膝とも手術をしていました。
神社に行った時は「ばあちゃんの膝が良くなりますように」とお願いしたり、駄菓子のラムネを薬に見立てて、「膝の痛みが取れる薬だよ」と言ってばあちゃんにあげたりしていたのを思い出しました。
僕はずっと、大好きなばあちゃんの膝を治してあげたいと思っていました。それは僕の揺るぎない願いであり、それを叶えるためには、やはり医療系に進まないといけないのかなと思い、色々と調べました。すると、リハビリをする専門職である「理学療法士」という仕事を見つけたんです。
理学療法士ならばあちゃんの膝が治せるのではないかと思い、その年に養成校を受験、運よく特待生で合格し進学することが決まりました。
特待生とは素晴らしいですね、、!
おばあさまも、さぞお喜びになられたことでしょうね。
喜んでくれていたと思います。
その後お世話になった施設などでも「私の孫はリハビリの先生やねん」って嬉しそうに話していてくれたそうです。
僕も、専門職としてばあちゃんのことを考えてあげられるようになってとても嬉しかったです。
起業ストーリー
免許取得後は急性期病院で働かれたそうですが、訪問分野に行こうと思ったきっかけは何かあったのですか?
卒業してから3年間働いた急性期病院を辞めようと思った理由は、実家の “家”を買ったことにあります。
ばあちゃんの足がどんどん悪くなっていっていることもあり、バリアフリーで外出しやすい家を買おうということになりました。費用を僕が工面することになったのですが、社会人3年目だった僕には、漠然とした不安が大きくのしかかることになりました。
お金のことも含めて、この時はじめて真剣に将来について考えたようにも思います。食べていけるのか、成長できるのか、楽しく過ごせるのか・・・など、不安はとても大きかったです。
そして、「起業するしかない」と思ったんです。
当時、スキルアップとして他県に修行にいくことも考えていましたが、家を買うということがあったので、地元に戻り起業しようと考えるようになりました。
起業を選ばれた駒野さんですが、当時3年目ということもあり相当悩まれたのではないでしょうか。恐怖心のようなものはありませんでしたか?
また、起業を考えた際、なぜ「訪問看護ステーション」だったのでしょうか?
起業という道を選択するまでは、相当悩みました。ですが、もともと生徒会長とかやるタイプだったので、決意してからは恐怖心のようなものは無かったです。
訪問看護を選んだのは、デイサービスなどでハコを持つよりは起業するハードルが低かったことが理由です。場所を持つとコストもかかってきますからね。
そんなことを踏まえて、急性期病院からの転職は、八尾市の訪問看護ステーションを選びました。将来、八尾で訪問看護ステーションで起業するということを前提に、雇ってもらったんです。
転職先の訪問看護ステーションでは、現場や管理業務をしながら4年間勤めました。そして、2014年12月に株式会社を設立、2015年の4月に訪問看護ステーション彩を開設しました。最初は9人からのスタートでした。
経営者としての覚悟
病院と在宅での関わり方は本当に違うと思うのですが、駒野さんが訪問分野へ移られて最初に感じたことや大変だったことはなんですか?
そうですね、訪問分野にいってまず驚いたのは、これまで正しいと思ってきたことが否定されたことですかね。
僕は、病院での経験も踏まえて、敬語を使ったり靴を揃えたり、5分前行動をしたりすることは良いことだと思っていました。しかし、在宅の現場では「固すぎる」「真面目すぎる」と言われたり、「5分前に来られたら困る」とか「かっちりしたらダメ」とか言われたんですよね。
ある程度、向こうの常識に合わさないと受け入れられないというのが衝撃的でした。でもこれは、在宅ではすごく大事なことなんですよね。
病院では「相手がこちら側に来ている」状態ですが、訪問では「相手側にお邪魔させてもらう」という状態ですものね。それぞれの価値観や背景がある中で、その人の常識に都度合わせていくというのはとても高等なスキルが求められるように感じます。
経営者になってからはどうでしたか?
お金と気持ちの両立が大変でしたね。
経営者として数値を考えた時、言ってしまえば、利用者さんがリハビリをして良くなって卒業していくとお金が入らなくなります。逆に、ずっと利用してもらった方が安定した収入となります。それに、利用者さんもずっと来てもらいたい、という人は多いんです。
しかし、それは訪問看護として求められている役割からは遠いサービスとなります。 ご利用者さま個々に課題や目標があり、その解決のために訪問看護を使っていただくので、課題や目標が達成されれば訪問頻度を減らす・卒業する・他サービスに移行するといった基本的なことをしていこうと内外に発信しました。
一切特別なことではありませんが、揺らいではいけない部分だと思っています。
働くスタッフからも時折、目標は達成して自立できる一方で、利用者さんはまだ来て欲しがっているから積極的に卒業をさせて良いものか悩むという声が聞かれます。 これは現場のリアルな声だと思うのですが、こんな時は「僕らの仕事は “利用者を自立(自律)” させることだよ」と自信を持って伝えるようにしています。
そもそも、介護保険の目的は自立の支援ということもありますからね。利用者さんが自立することを揺るぎない信念として、ワンチームとなってケアやリハビリを進めています。
とても素敵ですね。
彩のスタッフさんは利用者さんの事を一生懸命に考えられるため、様々な提案をされる方も多いのではないかと思います。
もし、スタッフの方から「介護保険ではできないけど、まだまだこんな支援や介入をしたい」という相談があった時は、どう対応しているのですか?
利用者さんの希望もちゃんと聴取した上で「必要性を何より重んじていいよ」と言うようにしています。
僕も以前、難病のため気管切開をしている利用者さんが「昔、自分が山に植樹した桜を見に行きたい」と言われたので、多くの方を巻き込んで調整をし、なんとかその方の希望を叶えたことがありました。
そのため、スタッフの想いは非常によく分かります。一方で、このような活動は想いだけでは継続できないことも事実です。僕は、良いと思うことこそ継続性と発展性を持つべきと考え、支援者も利用者もどちらもがプラスになるような「想い出づくりサポート事業」という低価格の自費サービスを作りました。
正直なところ、本当に低価格で設計しているので経営面としては少し厳しいところもありますが、経営者として職員のやりがいを支援したいと思っています。
もちろん、この事業をスタッフが提案するには、それ相応の評価や責任、必要性を説明してもらってはいます。
喜びの瞬間
スタッフのため、利用者のため、経営者として全力でサポート体制をとられている駒野さんですが、働く中で、どのような時にやりがいを感じますか?
自分じゃない人(スタッフ)が利用者さんやケアマネさんから褒められた時はものすごく嬉しいですね。
スタッフが休んだ時の訪問は僕が代わりに行くこともあるのですが、そういった時に、普段のスタッフに関するお褒めの言葉をもらったり、信頼関係が垣間見えたりすると嬉しいです。
あとは、スタッフから「こんなことやりたい」っていう前向きな姿勢や熱量を感じられた時は嬉しいですね。自分からどんどん発信してもらう主体性のある取り組みについては、こちらがそれに対してサポートできるよう体制を整えます。
また、主体性とまではいかなくても選択肢の中から自主性を持って取り組んでいけるような体制はこちらで整備しています。そこに反応してもらえた時も、嬉しいですね。
今後のチャレンジ
最後に、駒野さんが今後チャレンジしたいことや描かれている未来について教えてください。
今後は、八尾の町を政策から考えるため行政に入っていきたいと考えています。
今やっていることのデータを見れる立場になり、分析することで様々な施策を考えていきたいです。
2021年6月からは、八尾市・柏原市理学療法士会の会長を務めることになりました。理学療法士がどのようにして地域から活躍していくか、また、真面目に働いている人が評価されるような仕組みづくりも考えていきたいなと思っています。
自分の思想ややっていることは正しいのか、皆さんからフィードバックをもらいながら、八尾の地域そして日本が元気になる方法を模索していきたいです。
とても頼もしいお言葉ですね。優しい笑顔の奥に込められた強い眼差しから信念が感じられ、必ずや実行に移されるということを確信しました。
これからも、八尾の地域を拠点に、駒野さんの素敵な想いや考えが仕組みとなり全国に広がっていくことを心より応援しております!
駒野さん、本日はありがとうございました。
(訪問看護ステーション彩に関する記事はこちら)
以上、本日は大阪府八尾市にある「訪問看護ステーション彩(いろどり)」の代表で、理学療法士の駒野倫久さんを紹介させていただきました。
一人でも多くの方に、駒野さんの魅力と素敵な想いがお届けできれば幸いです。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
今後ともリハノワをよろしくお願いいたします!
かわむーでした。
※この取材は、本人の同意を得て行なっています。本投稿に使用されている写真の転載は固くお断りいたしますので、何卒宜しくお願い申し上げます。
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