みなさんこんにちは、リハノワのかわむーです!
本日は、山口県を拠点に活動されている言語聴覚士×オンラインのパイオニアである「長岡菜都子さん」をご紹介します。
長岡さんは、言語聴覚士として病院や訪問看護ステーションで働かれた後、2019年より独立。現在は、オンラインでの指導を通して誤嚥の予防に関する知識を広げる活動に力を入れられています。
実際にご自宅にお邪魔し、オンライン指導をされている様子を見学させていただいたり、今後の展望についてお聞かせいただいたりしたので、写真も交えながらその魅力をとことんお伝えしていきたいと思います!
言語聴覚士・長岡菜都子さん
◆ 長岡菜都子(ながおか・なつこ)さん
びぃどろ代表/一般社団法人オンライン臨床代表理事
1982年11月19日生まれ / 埼玉県坂戸市出身
<経歴>
2005年3月
言語聴覚士免許取得
2005年4月
山口県内の総合病院に勤務
2007年4月
山口県内の訪問看護ステーションに勤務
2019年1月
びぃどろ設立
2020年10月
一般社団法人オンラインケア設立 代表理事就任
2021年3月
一般社団法人オンライン臨床設立 代表理事就任
訪問STの先駆けとして
長岡さんが、言語聴覚士(ST)を目指されたきっかけを教えて下さい。
私は小さい頃から漫画家や絵かきに憧れており、美大を目指し絵の勉強をしていました。しかし、高校3年生で進路に悩んだ時、やはり絵で食べていくのは厳しいだろうと感じ進路を変更。
それでも「何か手に職をつけたい!」と思い、資格を取ろうと調べていたところ、言語聴覚士という職業が目に止まりました。たまたま中学生の頃から手話をしていたこともあり、聴覚障害や聾学校の先生に興味を持っていたんです。
言語聴覚士の資格をとれば、似たような面白そうな仕事ができそうだなと感じ、国際医療福祉大学言語聴覚学科へ進学しました。
資格取得後のキャリアとしては、病院と在宅の現場を経験されたのですね。
当時、訪問分野のSTさんといったら今よりもさらに希少な存在だったのではないでしょうか。
病院で働きはじめて2年目の時に、制度改定がありSTも訪問ができるようになりました。担当患者さんの中には、家に行ったらもっと良くなるんじゃないかと思う方もたくさんいたので、訪問領域にとても可能性を感じるようになります。
また、家庭教師みたいでなんだか楽しそうだなとも感じ、次第に転職を考えるようになりました。
しかし、当時STの訪問をやっている現場はまだ少なく、就職先がない状況でした。色々と探していたところ、たまたま通える範囲の施設でスタッフの募集がでました。すぐさま応募し面接に伺いましたが、よくよく話を聞いてみると、リハビリ職は増やせないという状況でした。
それでも何とかして訪問分野で働きたかった私は、面接後に「必ず役に立ちます!」といった主旨の手紙を送りました。すると、その熱意をかってくれてか、働かせてもらえることになったんです。我ながら、行動力あるなと感じますよね(笑)
いやぁ、まさに! 素晴らしい熱意と行動力ですね。
実際に訪問分野で働かれてからは、いかがでしたか?
訪問で働くようになってからは、高齢者のみならず小児領域にも関わるようになりました。最初は10〜20代と比較的大きなお子さんに関わっていましたが、次第に、年齢の若いうちから介入することの必要性を感じるようになります。
さらに、友だちの子どもがダウン症と診断され、生後1ヶ月半から関わっていたのがきっかけで、介入は早ければ早い方が良いということが確信にかわりました。
独立してからの個別のオンラインリハビリでは、小さい子どもをメインに関わらせてもらっています。
育児を経て問う“専門職の存在意義”
訪問領域でバリバリと働かれていた長岡さんが、独立することとなったきっかけは何だったのでしょうか。
訪問領域で勤務中に、子どもの出産と子育てを数回経験しました。子育てをしながら働くには良い環境だったのですが、1年後、産休あけに同じ患者さんのところに行った時に、1年前とほとんど変わっていない現状がそこにはありました。
その時、「リハビリの存在意義ってなんだろう」と強く感じます。これは、私が行って機能訓練しなくても良いのではないだろうか。それよりも、周囲の環境調整を行う方がよっぽど大事であるのではないか、と考えるようになります。
社会保障費の無駄遣いをしている今の現状を変えなければいけない、と、使命感に溢れてきました。
私は、保険で出来ないことをしていきたい。それも、保険内の延長である自費ではなく、保険ではそもそもできないこと。
そして、言語聴覚士の資格を活かした「施設指導+オンライン指導」というのを考えつきました。
以降、私は「びぃどろ」と名前をつけ、活動を始めます。
オンラインで、リハビリを革命する
独立されてからの活動について教えて下さい。
「びぃどろ」として活動を始めた私は、法人向けと個人向けのサービスを展開しました。
法人向けには、訪問看護ステーションや児童発達施設、介護施設や在宅診療施設などを対象に、リアルタイムでZOOMを繋ぎ、嚥下に関する職員研修や指導を行っています。また、実際にオンラインで繋いだまま利用者様のところに同行訪問し、指導することもあります。
個人向けでは、主に重症児を対象とし食事に関する指導を行っています。保護者の方とのLINEでのやりとりやZOOMによるオンライン指導です。医療的ケアを抱えるお子さんや、染色体異常などの先天性疾患をお持ちのお子さん、脳性麻痺などの重度障害をお持ちのお子さんや、未熟児等で生まれて発達に不安のあるお子さんの相談にのっています。
その後、仕事をする中で「広める」という視点が重要だと感じた私は、2021年「一般社団法人オンライン臨床」を設立。オンラインによるリハビリを広める活動を展開することとなります。
一般社団法人オンライン臨床での活動としては、一体どんなことをされているのですか?
一般の方向けの誤嚥ケア検定、支援者向けの誤嚥ケアインスタラクター、専門職向けのびぃどろ養成講座、全ての方向けのオンライン臨床研究大会(通称:OCHC)を展開しています。
誤嚥ケア検定とは、一般の人や家族が知っておくことで誤嚥と誤嚥性肺炎を防ぐことができる知識をまとめた検定です。
誤嚥性肺炎になる前にできること、それも誰にでもできる簡単なことを広めることで誤嚥性肺炎そのものに苦しむ人を減らしたい。ひいてはそれが、専門家が必要のない社会になることを目指し活動しています。
受講者は100名を超え、2021年12月にはクラウドファンディングを511%で達成し、現在はテキスト制作を進めています。
また、びぃどろ養成講座は、オンラインを活用してびぃどろのような働き方ができるセラピストを育成する事業です。2021年12月に募集をかけ、現在1期生として言語聴覚士、歯科医師、歯科衛生士、管理栄養士の計4職種から申し込みがありました。
今後は、このような仕組みづくりを通して、オンラインのリハビリを広げていくことに力を入れていきたいと考えています。
フリーランス 〜1日の流れ〜
母親でもある長岡さんですが、独立されてからの1日の流れを教えて下さい。
私の1日の流れは、以下のとおりです。
5:00 起床、朝活(SNS、読書)
5:30 弁当づくり
7:00 家族が出発
7:30 家事
8:00 ジムで運動、買い物
9:30 仕事開始
16:00 子どもとの時間
18:00 夕食
21:00 会議、夜の勉強会など
23:00 就寝
大体このようなルーチンで日々を過ごしています。
朝が早いのですね!(同じフリーランスとして見習わなければ…)
長岡さんが、独立し活動されてきた中で、大変だったことや苦労したこと、また、良かったことややりがいを感じ瞬間はどんな時にありましたか?
大変だったのは、前例がないオンラインサービスのため、何が必要とされているのか、またその存在をどうやったら日本中の困っている方に知っていただけるのかが分からなかったことです。
特に最初の1年間は、試行錯誤を繰り返して、必要とされるサービスを作るための土壌づくりの期間でした。 サービスを作る、拡げる、反応を見る、そして修正してまた拡げる。これを繰り返すために、SNSを最大限に活用することにしました。
オンラインでの個別相談が少しずつ増え、それをさらにSNSで発信することを繰り返し1年経った頃、初めてオンラインでの大きな契約が成立。それから少しずつ依頼が増えていきました。ちょうど、新型コロナウイルスが流行し、オンラインのニーズが高まったのも重なって、事業を拡大させることができました。
最初に走り続けられたのは、当初から応援してくれた方々のおかげです。今もその御恩に感謝しながら日々活動しています。
一方で、独立して良かったこととしては、やはり時間が自由にコントロールできるようになったことだと思います。また、周囲の環境や人のせいにしないで仕事できるのが、自分にはあっているなと感じます。
自分が納得できないことを、決め事だからといってやらなければならない状況に苦痛を感じていたので、今は自分の正しいと思う道を選べるのでその面でのストレスは少ないです。
フリーターとフリーランスは違います。自分が信じる武器をもち、突き進んでいかなければいけません。
よく、フリーランスになるのにどのように勉強しましたか?と質問を受けますが、実際に動かないと学べないことが非常に多いので、事前に勉強しても自分の役には立たないなと思っています。だから、とにかく動くのが先ですね。動きながら、考えています。
今後の展望
長岡さんが、言語聴覚士として大切にしていること・モットーを教えて下さい。
私は言語聴覚士として、家族や大切な人との「団欒(だんらん)の時間がとれること」がものすごく大切だと思っています。
それは、突き詰めるところ「食べる」「話す」という個別の機能にこだわるのではなく、誰と一生に楽しい時間を過ごすかが全てだと思っています。機能だけではなく、環境も一緒にアプローチすることはとても重要です。
それをサポートするのが私の仕事であり、それらのサポートをすることを、私は「だんらんコーディネーター」と呼んでいます。
だんらんコーディネーター、とっても素敵な呼び名ですね!
最後に、長岡さんの今後の展望について教えて下さい。
今後は、オンラインを活用してびぃどろのような働き方ができるセラピストを育成する「びぃどろ養成講座」や、保護者や一般の方向けの「誤嚥ケア検定」を通して、育成事業に力を入れていきたいと思っています。
そして最終的には、びぃどろがいなくても、専門職がいなくても予防できる環境、社会にを創りたいです。
私はこれからも、育児と仕事の両立をしながら、言語聴覚士という資格を活かして、社会のためになる活動を続けていきます。
「専門職が必要のない社会の仕組みづくり」、ものすごくパワーのある言葉だと感じました。
長岡さんの描くその先には、一体どんな社会がまっているのかワクワクしますね。現在の働き方やすべきことを改めて考えさせられる、そんな素敵な時間でした。
長岡さん、本日はありがとうございました。
これからも、長岡さんのご活動を心より応援しています!
以上、山口県を拠点に活動されている言語聴覚士×オンラインのパイオニアである「長岡菜都子さん」をご紹介させていただきました。
一人でも多くの方に、長岡さんの魅力と素敵な想いがお届けできれば幸いです。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
今後ともリハノワをよろしくお願いいたします!
かわむーでした。
この取材は、本人の同意を得て行なっています。本投稿に使用されている写真の転載は固くお断りいたしますので、何卒宜しくお願い申し上げます。
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